飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第46日 ポルトのジョギング
クルーズ46日目の5月15日、飛鳥Ⅱはポルトガルのポルトに入港した。ポルトはポルトガルの国名の由来となった町で、ポートワインの発祥地としても知られており、今は160万人以上の人が住み、首都リスボンに次いでこの国第2の大都会となっている。洋の東西を問わず、内陸からの河川による舟便と海上交通の結節地点は物流拠点として発達する場所が多いのだが、ポルトもドウロ川の河口に発達した古くからの港町である。この日も暑すぎず寒すぎずの天候で、長袖シャツ1枚で過ごせる程度の快適な初夏の陽射しがドウロ川の水面に反射していた。この好天に誘われて、いかにも南欧という赤瓦の古い街並み散策や大聖堂の見学、それにポルトガル国鉄のターミナルであるサンベント駅で列車の発着風景を楽しんた。
クルーズターミナルからの無料連絡バスを往復利用して、午後3時半頃に飛鳥Ⅱに帰船したが、ポルトでの最終帰船時間は午後6時とまだ若干余裕があった。その上、初夏のヨーロッパとあって外はまだ真昼のような明るさで、このまま出港まで船に居ても勿体ない気もしてきた。考えてみれば今年の世界一周クルーズは天気もさることながら、シケと呼ばれるほど船が揺れた日がこれまでほとんどなかったため、デッキでのジョギングが毎日可能で、走るのを休んで休養する日がとても少なかった。この日もポルト旧市街の見学ですでに2万以上歩いているし、これまでの疲労が重なっているので、もう走るのは勘弁という気持ちもあったが、クルーズターミナルに間近いビーチ沿いの道や、近くの市立公園の緑が「たまには陸地で走りなさい」と私を呼んでいる気がした。
ということでキャビンに戻るやいなや速攻で着替え、妻と二人で港周辺のジョギングに飛び出した。勇んで港のゲートをくぐり抜け、石畳の道を走り始めると、最初は体が揺れる感じがしてならなかったが、慣れるに従い、一か月半ぶりに陸地を走る足応えを感じる。平日の午後5時前というのにまるで週末のように市民が憩う海岸べりを通り、美しく広大な市民公園の周歩道に入ると周囲はむせ返る初夏の緑で、刈り取りをしたばかりの芝生からは草の匂いが立ち上っている。大地の匂いを嗅げば、やはり人間は陸の動物なのだと改めて実感しながら公園の中で歩を進める。船上でのジョギングで足は疲労しているし、最初はごく軽く30分ほど走って帰ろうと考えていたが、揺れぬ大地と緑の心地良さに、疲れたと嫌がる妻をはるか後ろに置き去りにし、ついつい1時間ほど走ってしまった。飛鳥Ⅱに戻って風呂上りにポルトの遠景をサカナに飲むビールのなんと美味かったことか。
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