三重県 鳥羽国崎沖 貨物船 「新生丸」と遊漁船 「功成丸」の衝突事故

499型貨物船 (2025年8月瀬戸内海にてMITSUI OCEN FUJI号より)
三重県の鳥羽国崎町沖で 20日昼、内航貨物船「新生丸」と遊漁船(釣り船)「功成丸」が衝突、「功成丸」は船体が真っ二つとなって2名の釣り客が亡くなり、多くの重軽傷者が出ると云う重大海難事故が発生した。事故が起きたのは午後一時頃で海上は穏やか、視界も良好と云われる中での大変残念な事故であった。この事故では鳥羽海上保安部に業務上過失致死の疑いで逮捕された貨物船「新生丸」の当直2等航海士が、まだ21歳の若さの女性だったことも話題になっている。
報道をベースに「新生丸」をトレースすると、同船は広島県呉市の海運会社が新造して所有するいわゆる「499型(ヨン・キュ・キュウ)貨物船」で、JFE物流に定期用船(あるいは航海用船だけかも)され、水島のJFEスチール水島製鉄所から愛知県衣浦にある同社知多製造所への鋼材輸送に従事し、事故時は空船となって水島に折り返す途中だったようだ。「499型貨物船」は、500総トン未満ならば船員資格や乗り組員要件が有利になるために内航海運では広く普及している船型で、長さは80米弱、幅約12米、重量トンでは1600トン余りのバラ積み荷物や鋼材を輸送する汎用型貨物船である。
衝突場所を地図で確認すると、現場は大王崎と潮岬を結ぶ直線上にあり、ちょうど中京工業地帯と西日本各地を結ぶ航路とあって、多くの船舶が輻輳する海域になっている。一方、遊漁船「功成丸」は2001年に就航し、レーダーや魚群探知機などを備え、この海で永年に亘り営業を続けてきた船であることがホームページからわかる。見通しや海象に問題のない昼下がり、現場海域を知り尽くした遊漁船と、荷物はなく船脚も軽い貨物船の間で何があったのだろうか。
報道を見て「21歳の女性が一人で当直とは?」などという声がネット上では喧しいが、周囲に船舶がいると言っても湾内から外洋に出てホット一息の時間とあって、船長は自室に戻るか、昼食の為に食堂にでも居たのであろう。499型船は通常甲板部、機関部併せ5人~6人で運航し、入出港や狭水道以外では航海当直は一人体制である。この型の船を操船するには、少なくとも6級海技免状を取得することが必要なのだが、この免状は数か月の座学、乗船実習に半年の乗船経験を経て受験資格を得られるそうだから、若い航海士が一人で操船していたことは何ら不思議ではない。(内航船でも2航士は原則12時~16時の当直に入るそうだ)
多くの釣り客を乗せ釣行中の遊漁船と、貨物船が衝突コースに入った時はどちらの船に優先権があるのだろうか。重いトロール網などを曳く漁船は目立つ場所に鼓型の黒い形象物を掲げ、周囲の船舶に警戒を促すことが定められている。ただ遊漁船(釣り船)については通常の動力船かつプレジャーボートと同様に扱われ、海上衝突予防法に基づき右側から近づいて来る方の船に優先権がある。報道によれば遊漁船「功成丸」の右舷に貨物船「新生丸」のバルバスバウ(球状船首)が衝突しているので、貨物船を右に見る遊漁船に過失度合いが大きいことになる。もっとも事故後、真っ二つになって浮かぶ遊漁船「功成丸」をヘリコプターから撮影した映像を見ると、遊漁船のマストには「本船は動力がなく錨泊中」を示す黒く丸い形象物(球形形象物)が掲げられていた。とすれば「功成丸」が現場で錨を降ろし錨泊をしているところに、貨物船「新生丸」が突っ込んだ可能性が高く、貨物船側の見張り不充分がこの事故の大きな原因になるようだ。但しこの場合でも遊漁船側も見張りの義務があり汽笛を発するなどの必要があったので、そのあたりの過失の割合は微妙になることだろう。
内航の貨物船のブリッジを考えると、出港後は当直をしている間にも、様々なペーパーワークや雑務をこなさねばならないことがある。見張りはおろそかにできないが、どうしても手元の書類やログブックなどに気を配る必要もあるだろう。時には会社から電話があったりで、一人当直の内航船では、何もかも自分でやらねばならない場面があるそうだ。船内では三度の食事も自炊することが多いと聞く。トン・キロベースでは国内物流の4割は内航海運が占めているにも関わらず、この業種は慢性的な人手不足と3Kの象徴の様な労働環境に甘んじているのが現状である。重大な事故を起こさないために、内航貨物船にこそ絶対的な衝突予防装置の装備が求められると思う。また報道に応じた「功成丸」の乗船者は、衝突時に救命胴衣を着用していなかったかのように語っているが、ライフジャケットの着用義務も今一度徹底することが必要ではなかろうか。









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