リージェント・セブンシーズ・エクスプローラー号見学譚
落ち着いた雰囲気の図書コーナー(日本語の本は置いてなさそうである)
ラグジュアリー船の中でも最高峰に位置する「リージェント・セブンシーズ・クルーズ」の「セブンシーズ・エクスプローラー号」船内を見学する機会があり、お台場の東京国際クルーズターミナルに行ってきた。「セブンシーズ・エクスプローラー」は55,254総トン、2016年にフィンカンチエリ(イタリア)で造られた同社5万5千トン型基幹3隻シリーズの第1船で、サイズからするとちょうど飛鳥Ⅲと同じくらいである。ラグジュアリー船と云えば2万~3万トンの小型船がこれまで多かったが、最近の例にもれず、リージェントのフラッグシップも、この大きさに拡大されているのである。同船はこの秋に日本を中心としたクルーズを2航海実施しているそうで、今回は1航海目と2航海目の間の東京港寄港を利用しての見学会となった。ラグジュアリー船の中でもラグジュアリー、値段もさることながら、同社のクルーズでは乗船料金にショアエクスカーションの参加費用もすべて含まれていると云うこともあってか、多くの乗り継ぎ乗船客は東京や近郊の観光地に向かったようで、船内はガラガラであった。よってこの日は我々もゆったりと内部を見て回ることができた。
船内に踏み入れると、廊下やパブリックスペースは、重厚なマホガニー様の木目板を施したビクトリア調のしつらえで、照明もそれほど明るくないことに気付く。天井にはシャンデリアがそこかしこに目立ち、床をみれば大理石をあしらったスペースも多く豪華な雰囲気を醸しだしている。これまでにも何隻かのラグジュアリー船を見学したことはあり、先般乗船した「三井オーシャン・フジ」も元はラグジュアリークラスの船だったが、ここは他の同クラス船とは一味違うぞとばかりの主張を感じさせてくれる内装である。このオーセンティックな重厚感は、いかにもアメリカ人のアッパークラスに好まれそうな作りだと思えるし、乗客数は700名余と飛鳥Ⅲなどと同等とあって、船内各部の配置がゆったりしていて居心地は良さそうだ。この日まず案内された「リージェント・スイート」はキャビン面積が412平方米もあって、その広さと豪華さにまず圧倒されたが、こんな部屋にもし泊まることが出来たとしても、私なら一日中「スマホはどこに置いた、読みかけの本は?今度は老眼鏡が見当たらない」と大騒ぎして、妻の顰蹙を買いそうである。もっとも、どう間違ってもこんな部屋に宿泊する機会は生涯ないだろうが…。
続いて、ペントハウス・スイートやベランダ・スイートなどの(この船の)標準的かつ快適そうなキャビンを見て回ることが出来た。わずかながら船内に残った乗船客も、みないわゆる西欧系白人シニア層ばかりのようで、カリブ海域のクルーズ船のようなタトゥーまみれの乗船客などはまず見当たらない。こうしてみると「セブンシーズ・エクスプローラー号」船内の、「乗客の織り成す雰囲気」も相当レベルが高そうだ。ただ日本人乗船客にとって問題なのは、これらの客室のうちバスタブが付いているのは3割だけで、7割はシャワーのみとのことで、こうなると長いクルーズは躊躇する向きがあるかもしれない。また当然のことながら、最上級の「リージェント・スイート」をもってしてもウォシュレットが設置されていないというのは、大いに気にかかる点である。最近は、露天風呂から大海原を眺めるのがクルーズの醍醐味などと思っている私からすると、いくらバトラーが付こうと、大浴場やウォシュレットの快適さがない辛さは旅程が長くなればなるほど勘弁して欲しいところである。
この日は無料の見学・説明会だったにも関わらず船内フランス料理レストランの「シャルトリューズ」でゆったりと豪華昼食会が開かれ、南ア産の赤白ワインを楽しみながら、本格的なフランス料理を我々も堪能することができた。若い頃は、日本人は我々だけという海外のカジュアル船乗船にフライ&クルーズで幾度かチャレンジしたこともあったが、齢をとって来ると段々と日本船の気楽さに甘えるようになり、風呂とウォシュレットのない生活、醤油気のない横メシ(横文字をしゃべりながら食べるご飯)が堪えがたくなってくるものだ。とは云え、一方でこんな贅沢な空間に身を浸すのも短時間なら良いかも、とも思えてくる。となると長いクルーズなら日本船に乗るとしても、一週間くらいなら圧倒的な高級感に包まれたこのようなラグジュアリー船で、例えば地中海などをぐるっと回ってみるのも悪くないかと思いつつ舷門をあとにした。











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