飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第86日 ナパ ケンゾーエステイトを訪ねて
雲一つないカリフォルニアの空の下、ケンゾーエステイトのブドウ畑が広がる
世界一周クルーズも残すところあと2週間強、飛鳥Ⅱはサンフランシスコ港のピア27に到着した。観光の目玉、フィッシャーマンズワーフにほど近い町の中心部のクルーズターミナルである。サンフランシスコには出張で随分と来たことがあるし、飛鳥Ⅱでも2011年に寄港しているので市内観光はせず、今回はベイエリアの北、約80キロにあるナパのワイナリー、「ケンゾーエステイトを訪ねて」への寄港地観光ツアーに参加することにした。ケープタウンからの「アクイラ動物保護区サファリドライブ」の旅、ルーアンでの「モネの家・ジベルニー観光」に次いで、今クルーズ3度目となる停泊地から距離が離れた場所へのエクスカーションである。特段ワインに蘊蓄はないし、昔ナパの隣にあるソノマのワイナリーでしこたま飲んだこともあるが、船から離れてアメリカ国内をバスで移動するのも気分転換で良いかと思っての遠出である。
霧にけぶるサンフランシスコからゴールデンゲートブリッジを渡り、対岸に行けば、風も心地良いカリフォルニアの青空が広がっていた。ナパは冬に雨季、夏に乾期があることに加え、朝夕の気温差があり、ワイン造りに適しているそうである。「ストリートファイター」などのゲームソフト開発で名を馳せた辻本憲三氏が、1990年にここに470万坪の広大な土地を購入、優れたワイン製造を目指して稼働させたのが「ケンゾーエステイト」である。2005年に最初のビンテージワインを出荷して以来、ここのワインは各地で名声を博しており、飛鳥Ⅱの船内だけで飲むことが出来る銘柄があるなど飛鳥クルーズとも関係が深いとのことである。最新の設備に手間・暇を惜しまぬ本格的なワイン製造過程を見学した後は、自慢の各種ワインを試飲しながらの昼食である。ナパの街にある直営の日本レストランから取り寄せた弁当は、船の食事とは一味違ったしっかりした味つけでうれしかった。普段は1000円くらいのワインしか買わない私も、記念に130ドル(プラス税金10ドル)もする「 紫鈴」というワインを買ってしまったが、これも旅の思い出である。
さてここまで来ると、船内の友達の輪が一挙に広がってくる。クルーズ前半には知人であるごく少数の乗船客同士が話をしたり挨拶を交わしていたものが、残りの日数が減るにつれ、警戒心も薄れるのか、お互いの間を仕切る壁が低くなるようだ。ふと気がつくと、ついこの間まで知らなかった人たちと挨拶を交わしたり、共通の話題を探して盛り上がるようになるから船旅とは不思議なものである。一方で最初のうちはやけに仲良いなと傍から見ていたグループがいつの間にか空中分解していることもある。ちょっとしたことで他人に文句をつける人、自慢話をタラタラと垂れ流す人、やたら話が長い人、挨拶をしない尊大そうな人物などの情報も共有されて、食事やお茶の時間に恰好の話題となるのも小さな共同社会空間ならではである。毎日午前と午後2回行ってきた社交ダンス教室は、発表会を開くことになり、それに向けて練習に精を出すカップルが見られる。日本に近づくにつれて、これからコーラス教室やフラダンスの発表会も開かれるとのことで、徐々にあわただしくなりそうな船内である。
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