飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第51日 モネの家
クルーズ第51日目、飛鳥Ⅱはフランスのセーヌ川を、河口から8時間ほど遡上してルーアンに到着した。ルーアンはノートルダム大聖堂やジャンヌダルクが幽閉された塔があることでも有名なノルマンディ地方の中心都市である。以前にも飛鳥Ⅱで来た事があるので、今回はここからさらに約50キロほどパリに近いジベル二ーという村の、画家モネが晩年住んだ家を訪れる本船のツアーに参加するにした。と云っても美術関係には、まったく疎い私である。特に西洋画となるとイエス・キリストなどを描いた宗教画が多いため、無宗教の私にはひどく縁遠いジャンルに思える。ただ、その中で唯一、モネやルノワールなど風景画を数多く描いた印象派の画家ならば、美術音痴の私にも近づき易い感じがして、 『 教養の一環』としてここを訪れることにしたものである。頭が筋肉だけで出来ていないことの証しにもなる。
ルーアンの街を離れた貸し切りバスは、小麦や大麦が栽培されている肥沃そうな大地を走った。ここフランスは農業大国にて食料自給率は100パーセント以上だそうだ。船から行く寄港地ツアーの良いところは、現地に詳しいガイドの解説を道中に聞くことができる点にある。この日は、パリに永年住む日本人女性の車内での説明であったが、近代フランス絵画史に関する彼女の博識と分かりやすい説明に感心することしきり。それによれば、フランス人のきわめて合理的な思考方法を背景に、従来の絵画はシンメトリーかつ正確な遠近法で写実的に描かれて来たが、19世紀になり日本の浮世絵が紹介され、流行したジャポニズムが、美術界に多大な影響をもたらしたとのこと。大胆な構図、型にはまらない筆致や遠近法、庶民の生き生きした姿などを描いた浮世絵は、モネら印象派の画家に強い衝撃を与えたと云う。
僅か1時間半ほどの道中で、学生時代に受講した美術史よりも意義深い話を聞いた気がしたが、なるほどノルマンディの牧歌的な景色と、天高く伸びやかな空や雲を見ていると、モネが『光』にこだわった背景も見えるような気がした。やって来たジベル二ーは田舎の村だったが、想像した以上に「モネの家」の周辺は観光名所となっており、世界中から多くの観光客が集まってどこも行列になっていた。なかにはル・アーブルに停泊中の「リーガルプリンセス」からの団体もあり、ここはクルーズ船ツアーの目的地の一つにもなっているのである。名画 『睡蓮』を描いた池の周りは、地元の子供たちの遠足とも重なって、カメのような速度でしか歩を進められない混雑ぶりだ。ただモネの家に入ると、中に展示されている彼の絵や印象派の仲間たちの絵の数を上回るほど、多数の浮世絵が陳列されているのに驚いた。モネは日本に強く惹かれていたとバスの中でも説明があったが、単なる日本人観光客向けリップサービスではなく、彼が本当に日本の美術に憧れを持っていたことが、夥しい浮世絵のコレクションが証明していた。
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