飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ 船内同好会 フネのあれこれ
これまでの世界一周ロングクルーズの最中、船内で顔見知りの人が増えると、デッキの上などで「あの船は何を運んでいるの?」とか「いまパイロットは乗っているのでしょうか」などの質問をしばしば受けてきた。一方で見知らぬ乗客同士で、船や海運に関する話をしているのを耳にする機会も多かった。だが「あ、これはこういうことですよ」と内心分かっていても、他人の会話にわざわざ割り込んで知識をひけらかすのは憚られる。クルーズは非日常の世界とあって乗客それぞれ疑問が湧くことも多いのならば、いっそ情報交換の場をつくり、船に関する基本的知識を興味ある人たちと共有できたらと、乗船前から写真を整理するなど資料を準備してみた。世界一周などのロングクルーズでは、船が主催する催しだけではなく、同好の士が自主的に運営するコミュニティが「同好会」として活動できるのである。
飛鳥Ⅱでは、発起人と他6人の賛同者あれば「同好会」として認められ、空いているパブリックルームや設備を使える。麻雀やアロマ愛好者、ヨガなど有志が集まって船内で活動するだけでなく、過去には専門の分野の講義をした学者の乗客もいた。ということで、船内で新たに友人となった人たちに「フネの話をしたい」と同好会立ち上げの趣旨を話すと、みな「大いに結構」と賛同者リストに名を連ねてくれる。題して「クルーズ船から見るフネのあれこれ」という同好会で、張り紙告知の上、第1回目は5月5日にウオルビスベイを出てテネリフェへ向かう区間で開催してみた。妻に助手としてパワーポイントの操作を依頼しながら 船内コンパスルームで、国際信号旗の意味、船舶のトン数、航海灯、船の種類などを解説し、質疑応答で締め切った。コンパスルームは会議室兼多目的ルームで、一体どれくらいの人が興味を持って聞いてくれるのか半信半疑で始めたところ、ほぼ部屋の定員一杯の約30名の参加者があり、嬉しい驚きとともに、多くの乗客がフネに多少なりとも興味があることが伝わってきた。
「同好会」は仕事でもないし、一回やれば良いかなと思っていたところ、参加者から「良かった」「もう一回やって」の声をいただき、意を決して2回目をティルバリー出港の翌々日に開催。自動車運搬船の内部を走るクルマから撮影した自前の動画や、タグボートのブリッジでの操船状況などの手持ちのビジュアル系資料のほか、なぜ”ダイヤモンドプリンセス”は日本一周クルーズでも釜山に寄港するのか、船舶は他国の沿岸を勝手に走ってよいのかなどの海事政策の話もおりまぜる。船から出た汚水やごみはどこに捨てるのか、など皆が興味を持ちそうな話題もとりあげ、活字にはし難い裏話などをしていると話があちこち脱線してしまい時間が足りなくなった。2回目も質問が多く予定の45分をオーバーして終了。「飛鳥Ⅱからは一銭もいただいていません」と笑いを取ると、「続きを希望」の声援が多く、3回目はお茶でも飲みながら、茶話会形式で知識を共有できたらと思案中である。次は進水式で支綱切断しても滑り降りなかった船の話などをしてみようか。
最近のコメント