飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第25日~26日 アクイラ動物保護区サファリドライブ
インド洋の航海を終えて、飛鳥Ⅱはケープタウンの港に4月24日早暁に入港した。ここでは、今航海で初めての一泊オーバーナイトの停泊となる。以前来たときに停泊した場所は港のはずれの方だったが、飛鳥Ⅱは町の中心に近い場所に出来た新しいクルーズターミナルに着岸した。新ターミナルは一般貨物用の岸壁が並ぶ場所にあり、前後を貨物船に挟まれたごく狭いコーナーに位置している。入港日、そろりそろりと最大警戒の微速前進で市街地が目の前の岸壁に船が着くに連れて、明けゆく空は快晴で雲一つないのが明らかになってきた。昨年の世界一周クルーズでは、霧と雨のケープタウンだったそうだから、まずはこの南半球の秋晴れに感謝である。
前に来たときは、喜望峰や野生ペンギンの生息するボルダー海岸を見学したので、今回は港から180キロほど内陸に入った標高800米ほどの高原にある『アクイラ動物保護区サファリドライブ』へ一泊の本船ツアーに参加することとした。我々にとってはこのクルーズにおける唯一の船外宿泊の行事である。ペット以外の動物と云えば日本では動物園か、せいぜい富士サファリパークのような限られたエリアの施設で見るしかない。だがここでは山手線内側の6倍もの広大な大地に、バッファロー、ゾウ、ライオン、シマウマ、サイ、カバ、ヒョウ、ダチョウ、キリン、ヒヒ、スプリングボックなどが生息し、170種類にのぼる鳥類が見られるそうだから、あまり動物に興味がない私にも心惹かれるツアーであった。とは云っても、本来なら保護区内のライオンやヒョウは、シマウマなどの草食動物を襲ってしまうはずだ。この辺りはどう辻褄を合わせて管理しているのか出発を前に興味は尽きなかった。
到着したアクイラ動物保護区では、トラックの荷台に作られたサファリカーの座席に座り、映画「ジュラシックパーク」さながらのゲートを通ってエリア内へ入った。初日と次の日、それぞれ約2時間のサファリドライブである。あたりの灌木地帯にはところどころに池もあり、赤土の肌を見せる岩山が迫る光景は、舞台演出としておあつらえ向きで、まさに我々がイメージする「アフリカ」そのものだ。クルマに揺られお尻が痛くなるほどのゴトゴト道を行けば、近くでゾウの群れが砂浴びをしているかと思えば、池からカバが耳や目を出している。シマウマやバッファローなどがあちこちで草を食み、水をのんびり飲んでいる風景はまさにサバンナで、動物園で飼われている動物たちとは迫力がまるで違う。ただ、のんびり草を食む草食動物たちを見ていると、これらを餌にするライオンやヒョウなどの肉食獣とは「保護区」内でどう共生しているのかやはりひどく心配になった。
ガタゴト道を行くことしばし、ほどなく区内もう一つの電気柵つき金網を通ると、そこはライオン用の特別区域となっていた。サファリカーのドライバー兼ガイドによれば、なんとここではライオンに週に何回か餌をやっているそうで、道のそばでは与えられた大きな餌の肉片を傍らに、人間を恐れることもなくリラックスしたライオンが横たわっている。これを見れば、やはりここは弱肉教食の自然とは一味も二味も違う動物の疑似楽園であることを気づかせてくれる。猛獣エリア外の草食動物も、クルマが近づいても警戒するでないから、これから数代も経てば、保護区内で生きる彼らの肉食獣を恐れる本能的遺伝子も上書きされているかもしれない。総じてここは自然やら動物、環境保護などを看板にした『半』商業的な『半』ワイルドの世界であることが分かった。とは云うものの、日本では味わえない野生に近い環境の動物たちを間近で見れば、今後はわざわざ動物園に行く気も起こらないほど大満足のツアーであった。
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