飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第12日 アジアンデッキディナー
クルーズ第14日目、マラッカ海峡を抜けて船はインド洋の大海原を南西に向かって航行している。乗船して数日は船体の動揺やきしみ音で夜間に目覚めることもあったが、人間の体は環境に慣れるもので、インド洋の大きなウネリの中でも、このところ朝までぐっすり寝ていられるようになった。マラッカ海峡の出口から喜望峰までの直線上には、紅海・スエズ運河の治安がまだ完全ではないためか、以前より数多くの船舶が走っており、渡邊船長もこのコースは予想以上の船舶数だと語っていた。ただ飛鳥Ⅱは途中で食事や船内イベントのために揺れの少ない方位に進路を変えたり、赤道上の緯度00度付近を横走りしてくれたために、現在は周囲には船影もなく、一隻だけで次の寄港地レ・ユニオン島に向かって突き進んでいる。
主要クルーの紹介や、最初のフォーマルデイ、県人会など世界一周クルーズ恒例の出だしのイベントも終わり、シンガポールも過ぎて、船内には落ち着いた空気が流れている。300名弱の乗船者とあって、リドグリルの朝食ビュッフェはピーク時でも好きな場所に座れるし、毎朝の日本の新聞縮刷版を待つための順番待ちもない。露天風呂もいつも数名で贅沢に湯に浸かる日々である。競争が少ないのは融和の源泉なのか、廊下や階段、エレベータなどで見知らぬ同士が声を掛け合う場面も以前より多いようだ。とは云え優雅なクルーズ船も、実際は長さ200米、幅20米の面積、上下は数フロアーの空間とあって、ここは乗客とクルーによって構成される運命共同体である。何よりこのクルーズでは、全100日余のうちで上陸できる日が20日強、それ以外はどこにも行けない洋上生活だ。云わば合宿とも表現できる空間の中、クルーが趣向を凝らして催す各種船内イベントや、今日しか味わえない洋上の体験を存分に味わうのがクルーズを楽しむ極意である。
ということで、シンガポールを出て3日目(第12日目)の夜のアジアンデッキディナーは、自ら大いに盛り上がろうと、今回もいつもの昭和のオヤジのコスチュームに身を包むことにした。アジアンデッキディナーには 「 各国の民族衣装などをお持ちでしたら、是非お召し下さい」と船内紙にあるので、持参した麦わら帽にロイド眼鏡、口にはちょび髭、クレープの肌着に腹巻、足は雪駄、腹巻にはうちわといういで立ちだ。植木等スタイルこそ、日本の民族衣装である。飛鳥Ⅱでは永年デッキイベントの際にこの姿で出ていくことにしているのだが、初回から10数年経ってもこれを追従する乗客はいないし、幸いなことに船から禁止命令も出ない。本音はそろそろこんな格好から卒業したいところだが、古い船友から「またあれやる?期待しているよ」と励まされ、クルーからは「デッキディナーを盛り上げて下さい」とおだてられ、見知らぬ乗客から「一緒に写真を撮って」などと云われれば、オッチョコチョイの江戸っ子としては逃げるわけには行かない。『 臨済録 』曰く 『 随処に主となれば、立処皆な真なり 』( それぞれの置かれた立場で、それぞれのなすべき務めを果たせば、必ずその真価を発揮できる)
« 飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ 第9日 シンガポール フェーバーパーク | トップページ | 飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第17日 あれから14年 »
「船・船旅」カテゴリの記事
- 飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第46日 ポルトのジョギング(2025.05.17)
- 飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第43日 サクラダファミリアとリーブヘル クレーン (2025.05.14)
- 飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第39日 テネリフェ・トラム(2025.05.10)
- 飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第33日 キリンがいるぞ(2025.05.05)
- 飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第32日 飛鳥Ⅲとの邂逅(2025.05.02)
« 飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ 第9日 シンガポール フェーバーパーク | トップページ | 飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第17日 あれから14年 »
コメント