飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第25日~26日 中進国の罠
ケープタウンの街から180キロ離れたアクイラ動物保護区への貸し切りバスは、首都のプレトリアやヨハネスブルグ方面へ向かう主要幹線道路 N 1を走った。バスは途中でワイナリーに立ち寄ったり、昼食会場のホテルに向かうために幹線道路をしばし外れたため、その都度、車窓からは南アフリカ共和国の沿道風景を楽しむことができた。通過する町々は欧米の高級住宅街と同じような瀟洒な邸宅が並ぶ閑静な地域と、粗末なバラック建てばかりで、平日の日中から所在なさげな人たちがたむろしている地域にはっきり分かれている。前者は人口の7%を占める欧米系白人、後者は人口の90%を占める黒人かカラード(混血)が住む町らしく、まだアパルトヘイト時代の残滓があることを気づかせる光景である。
貧しい地区の道路では裸足の黒人が多数歩いており、その傍らの道端には沢山のごみが捨てられている。やはりまだまだ発展途上で、個人がなかなか豊かになっていないことが良くわかる車窓風景だ。南アフリカ共和国の面積は、112万平方キロと日本の約3倍、人口は6000万人で、鉄鉱石や金、プラチナなどの鉱物資源に恵まれている。この国はG20の一角であり、BRICS国としても知られるキリスト教国なのだが、一人当たりの国民所得は約6000ドルと日本の500万円(@¥150で3万3000ドル)の約5分の1以下であり、失業者も多く、近年は個人消費が伸びずに経済成長が鈍化しているそうだ。
一方で幹線道路は少なくともケープタウン近辺は立派に整備されており、車窓から見る我が国と同じ1067ミリの軌間を持つ鉄道も、すべてが電化されていた。よく見れば鉄道の線路は枕木もPCコンクリート化されているし、路盤も強化されているようだ。バラックの立ち並ぶ地域にあったホームや駅舎は、周囲に似合わず小ぎれいで、そこを6両編成の青く塗られたモダンな電車が駆け抜けて行く様は、この国の矛盾を象徴しているかに思える。バスで戻ったケープタウンの市街地は、2011年に訪れた時より派手なイルミネーションで彩られた高層ビルが目立って増えていることが一目瞭然である。これらアンバランスな経済発展の状況を見ると、一人当たりの国民所得が1万ドル近くになると経済成長が難しくなるとする、いわゆる「中進国の罠」に南アが陥っていることがわかる気がした。
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