商船三井クルーズ (MITSUI OCEN CRUISES) が ”SEABOURN SOJ0URN” 購入
2011年5月 リスボン港に於ける"SEABOURN SOJOURN"
”にっぽん丸”や ”MITSUI OCEAN FUJI ” でクルーズ事業を展開する商船三井クルーズは、この度 ”MITSUI OCEAN FUJI ”の同型姉妹船である ”SEABOURN SOJ0URN ”(3万2千トン・2010年竣工)を米国より購入し、日本船籍に改めて2026年に運航を開始すると発表した。 ”MITSUI OCEAN FUJI ”が昨年末から国内マーケット向けに営業を開始したばかり、加えて商船三井クルーズには2028年に予定する2隻の新造船計画もある中で、極めて積極的な船隊拡大方針である。国内のクルーズ船の状況を見れば、この夏から郵船クルーズには ” 飛鳥Ⅲ”が加わって同社は2隻体制となるし、2028年にはディズニー(オリエンタルランド)が14万トンの新造大型船で日本でクルーズ事業を始動すると発表している。その他アメリカのプリンセスクルーズやヨーロッパのMSC クルーズなども、日本を中心とした定点クルーズを実施中であり、今年も初夏に ”QUEEN ELIZABETH”がやって来るなど、内外の多くのクルーズ船会社が我が国の市場で営業を展開もしくは拡大中だ。我々のようなクルーズ愛好者にとっては選択肢が増えることは悦ばしいが、このような供給増で果たして業界の将来性が見通せるのかについては些か心配になる処だ。
注目したいのは、”MITSUI OCEAN FUJI ”の購入発表は2023年3月であり、今回の ” SEABOURN SOJ0URN ”の発表も3月だったことだ。商船三井クルーズのホームページによれば ” MITSUI OCEAN FUJI ” 投入に当たって、『 2023年3月に商船三井がシーボーン社からクルーズ船を1隻購入し……(商船三井クルーズ社が)運航を開始しています』 とあり、今回の ” SEABOURN SOJ0URN ”も 『株式会社商船三井がシーボーン社本社:米国から購入し、2025年3月4日(火)(日本時間)に引き渡しを受けた』 と明記されており、この2船は商船三井本体が購入したものであることが分かる。会計や帳簿のことは素人ながら、これよりすると商船三井は昨今の好決算に伴う節税対策として、会計年度末ギリギリに償却資産確保のために急遽買船を決めたのではないかと推測できる。船舶には事業用資産の買い替え特例や圧縮記帳制度が認められているため、好決算の下で商船三井は今期中に積み上げた自社船の船舶売船益を、年度末を迎えて客船購入に充てたとすると、この時期の突然の発表にも合点がいく。急拡大の側面には、親会社の好決算が反映しているとみることができる。
また商船三井のクルーズ事業は、米国クルーズ船業界のジャイアント、カーニバル社と業務提携しており、国際戦略の一環として今後INBOUND客を呼び込む目論見で、クルーズ事業の拡大を図っている。これまでほぼ日本人だけだった日本船の乗船客だが、今後は船客の何割かは外国人に乗って貰うことを想定しており、その方針転換も船隊拡大の大きな要因とみられる。一方で新造船となると建造ドックも限られ船価も高いので、既存船の購入に踏み切ったに違いないが、これまで外国仕様だった船体を引き受けるには、メンテやサービス継続に大変な苦労がいるものである。その点で、同型船を2隻揃えることは、習熟の面でも備品や船用品などの補給面でも相当なメリットがあるはずで、これらの理由が今回の急な買船発表に繋がったものだと考えられる。先日、早くも ” MITSUI OCEAN FUJI ”に乗船したフネ友に評判を聞くと、「フネのハードは大変素晴らしい、ただ日本人クルーも外国人クルーも不慣れで、クルー同士お互いが協調せず機能していないのがとても気になった」とのことである。習熟には一定の時間がかかるだろうが、今まで大事に培った「良き伝統」を失わないように、ここは事業の急拡大に伴う混乱を最少にして欲しいところである。さて新しくフリートに加わるクルーズ船は ” さくら丸 ”にするのか” ふじ丸 ”にするのか楽しみだ?
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