時代の証言者 こころで走る 瀬古利彦氏
読売新聞の「 時代の証言者」 では、マラソンの瀬古利彦氏が、『 心で走る 』との題で、彼の生い立ちや競技歴を連載で寄せている。私も最近は時間ができたので慶応競走部の後輩の試合にはよく顔を出すようになったが、競技場の観客席では瀬古氏の姿を見かけることも多い。彼は早稲田大学競走部のOB会会長をつとめているにも関わらず、息子さんが慶応卒とのことで、日ごろから 「僕は慶応が好きなんですよ」と広言しつつ、試合後のOBたちの飲み会にはいつの間にか慶応側の席にきて、その饒舌に場を和ませてくれる好漢である。私と同じく、60歳過ぎてから奥さんと共に社交ダンスを始めたとのことで、これも彼に親しみを感じるところだ。なので毎朝起きると彼のこのシリーズを楽しみに朝刊を開いているこの頃である。
ここ2日間は、早稲田大学に入学して中村清監督に運命的に出会ったことを中心に話が進んでいるが、かつて駅伝やトラックで遠くから見かけた監督に関するエピソードがとても面白い。昭和51年、瀬古氏の入学と時を同じくして早大に駅伝監督として返り咲いた中村氏は、「『今の早稲田が弱いのお前たちのせじゃない。面倒をみなかったOBのせいだ。俺が代表して謝る 』 と言い出すと、何十発も自分の顔を殴りつけるのです。皆が言葉を失っていると 『 これでも足らんだろう 』と口元に血をにじませ、今度は壁に頭をうちつけました 」。砂浜での朝練習では「『俺はこれを食ったら世界一になれると言われたら食う 』と言って、口の中に(足元の砂を)放り込んでしまいました 」 と、瀬古氏は中村監督の尋常では考えられぬ熱情を著している。
この逸話に関して、友人である早大の元駅伝選手(瀬古よりやや年上)からかつて聞いたのは、 中村監督は口元に血をにじませたではなく、「口から 血がドバっと噴き出た」であり、砂浜の砂を食べたのは、「俺はこんなに陸上競技を愛しているのだと、グランドの土をムシャクシャ食べた」であったが、いずれにしても、そのようなことが本当にあったのだと情景が目にうかぶようだ。その友人は「 練習が終わると、着替えもしない前に中村監督のとにかく長い話が始まるので、汗で濡れた練習着が冷たくなって、みな風邪ひいちゃうんですよ」という話もしていたが、熱血漢の監督と運命的な出会いをし、そのチャンスを逃さず、教えを忠実に実行したのが凡百と違う瀬古選手の偉大なところである。そういえばあの頃は、中村監督に限らず明治大学野球部の島岡監督など軍隊式の名物指導者が健在だった。今では選手に手でも上げようものなら即座にパワハラで訴えられる時代となったから、この連載はまさに「時代の証言」という感がする。
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