« 飛鳥II 常夏のグアム・サイパンクルーズ乗船 (4) グアム戦跡めぐり | トップページ | 飛鳥II 常夏のグアム・サイパンクルーズ乗船 (6)番外編 »

2024年3月15日 (金)

飛鳥II 常夏のグアム・サイパンクルーズ乗船 (5)デッキディナー 植木等 編

20240315
ダンスの先生とジルバで盛り上がる植木等

今回のクルーズでは久しぶりにデッキディナーが開催された。南十字星の下、飛鳥Ⅱプールサイドのデッキで酒や食事が出て音楽を楽しむならば、やはり「植木等」だろう。私の「植木等」とは、カンカン帽にロイド眼鏡、口ひげをつけてクレープのダボシャツにステテコ、肌色の腹巻、足元は雪駄という出で立ちでデッキディナーに参加することである。この衣裳はクレージーキャッツの植木等が昭和36年の大ヒット「スーダラ節」を歌いながらよく身につけていたもので、後年ドリフターズの加藤茶も似たような恰好をして「8時だョ!全員集合」に出ていた。”豪華客船”たる飛鳥Ⅱでステテコ姿とはいかにも場違いな出で立ちなのだが、元々は2011年の世界一周クルーズに際して、『 寄港地にちなんだテーマナイトを設ける予定です。民族衣装や浴衣などお持ちでしたら、ぜひご用意下さい。…アジアンナイト 飛鳥祭り アフリカンナイト メキシカンナイト ハワイアンナイトなど…』との乗船前案内があり、それならまずアジアンナイトで昭和のオヤジで決めようと一式を持ち込んだのが最初である。この時はチャイナドレスやアラブの王侯貴族風着衣に混ざって、我がステテコ姿がかなり受けたものと自負している。


数年前に母親が亡くなった際に弔問に来てくれた小学校時代の恩師が「君で一番覚えているのは、良くスーダラ節を歌っていたことよ!」と話してくれ、改めて合点がいったのだが、当時からなぜか一貫して植木等やクレージーキャッツのおちゃらけが大好きな子供だった。顧みれば学級委員的な優等生に対して、斜に構えるのがちょっと恰好良いくらいの幼弱性の現れに違いないが、三つ子の魂百までで、今に至ってもちょっと人と違ったことをやりたい気持ちが湧いてくるのだからしょうがない。妻は「2018年の世界一周クルーズ以来の植木のチャンスだし、船上の知り合いは多分期待しているから是非ともやってよ」と強く勧めるものの、さすがに70歳代になってコスプレしたら「イタい爺イ」だと嘲笑されるのがオチかと心配になる。なのでこのグアム・サイパンクルーズに乗船してからは、顔見知りのクルー達に「あの恰好をデッキディナーでまたやっていい?」と恐る恐る尋ねてみたのだが、みな一様に「どうぞ、どうぞ」「あ、またあの髭でしょ、待ってます」と嬉しい答えが返ってくる。


とは云うものの第7日目の夕方に行われるデッキディナーの直前まで、人前に出る自分の姿を想像しつつ、やるかやらぬかを逡巡していたのである。これまでの例からすると「それ、いいね!」と声をかけてくる人、プッと笑う人、完全に見て見ぬふりの人、怖いもの見たさに横目でにらむ人、「エンタメクルーだと思った」と言う人など反応は様々だが、このクルーズは友人も多いし、高い金を払って乗船するのだからここは自ら大いに楽しまなけりゃソンと蛮勇を奮って決行することにした。ただし今回は、さすがに透けて下着が見えるステテコに代わり、ベージュのハーフパンツにしたのはやはり年齢の為せる慎みである。夕方6時、いよいよ意を決してカンカン帽、ダボシャツ、腹巻、雪駄姿でデッキに飛び出せば、「ここ、ここ!」と友人たちが目ざとく見つけてくれ混雑の中で座席もすばやく確保、ビールにステーキをほおばっていると通りがかるクルーが「あ、久しぶり」と注目してくれるし、「一緒に写真撮って」と知らないオバちゃんたちからは何組からも声が掛かって段々と気分が盛り上がってきた。


そうこうするうちに始まったバンドの音楽に合わせて、雪駄のままでジルバを踊り、さらに飛鳥Ⅱのイベント定番ミュージック「ダイアナ」や「ダンシングクイーン」などで弾けている自分がいた。これで妻を始め船の友人の期待に応えることができたかと思うと船上を流れる宵の風も心地よい。酔いに任せるまま、あちこちからお呼びのかかったテーブルを遊弋するうち、あっという間にデッキディナーの時間が過ぎ去り、そのまま夜のダンス会場へ乱入した一夜だった(雪駄だけはシューズに履き替えてダンスをしたが)。ダンスも終えてホッと一息、心に浮かぶのは「随所に主となれ」という禅の言葉である。どこでも周囲に惑わされず主体性を持ち、その場になりきって行動すれば、心は自在に働き、本来の自分が発揮できるという意味なのだが、クルーズ船では自ら工夫して主体的に楽しむという心構えで乗船すれば、高い料金も損はないという気持ちになるから不思議だ。本船からのお仕着せの楽しみもなかなか良いが、普段はできない恰好をするとか、これはと思う趣味を船上で試みるとか、日常を離れた空間で自らが楽しむ気持ちで乗船すればクルーズの喜びも倍加すること間違いなし。こんな旅は他ではありません。

 

女性達にモテモテでダンスに興じる植木等。クルーズは楽しまなければソンソン!
20240315_20240315214301

« 飛鳥II 常夏のグアム・サイパンクルーズ乗船 (4) グアム戦跡めぐり | トップページ | 飛鳥II 常夏のグアム・サイパンクルーズ乗船 (6)番外編 »

船・船旅」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 飛鳥II 常夏のグアム・サイパンクルーズ乗船 (4) グアム戦跡めぐり | トップページ | 飛鳥II 常夏のグアム・サイパンクルーズ乗船 (6)番外編 »

フォト
2025年7月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ