
2011年 シンガポールを出た後 飛鳥Ⅱはスンダ海峡を抜け一路インド洋を西に
当初は乗船予定だったものの、昨年予約をキャンセルした飛鳥Ⅱによる4月5日横浜発の「2024年世界一周クルーズ」について、郵船クルーズ社は「中東イエメン沖ならびに紅海海域の情勢を鑑みて、お客様、乗組員の安全確保を最優先に、当初予定しておりました紅海・スエズ運河通航を避け、アフリカ大陸・喜望峰経由の航路に変更することを決定いたしました」と2月13日に発表した。紅海では昨秋、日本郵船が定期用船する自動車専用船が、イエメンの反政府武装勢力フーシに乗っ取られたことがわが国でも大きく報じられたが、その後もこの海域の情勢は不穏なままで、クルーズ船は無論のこと、コンテナ船など多くの船舶が紅海通行を避けて喜望峰周りに航路を変更している。この状況をみれば飛鳥Ⅱの世界一周クルーズの航路変更も止む無しだと思われる。
我々が初めて飛鳥Ⅱの世界一周クルーズに乗船した2011年も、紅海入口のアデン湾に於ける海賊被害の恐れのために、喜望峰周りに飛鳥Ⅱのスケジュールが変更になった。当時の記録を繰れば、この時の乗船予定者には、コースが変わっても乗船するかの内々の打診が2月中旬にあり、4月3日の出発を控えて2月21日に正式な発表がなされたのだが、今年も聞けば航路変更によって乗船をキャンセルするか否かの問い合わせが既にあった模様で、この13日に最終決定がアナウンスされたのである。2020年の飛鳥Ⅱ世界一周クルーズが武漢ウイルス禍で中止になったあと、中止 → 次年度に繰り越しを重ねようやく5年越しで実現した大航海だったが、またまた不可抗力とは云え当初予定されたインドや地中海に寄港しないことになったのは、乗船予定者にはとても残念なことであろう。
2024年の世界一周クルーズに参加しないことにした理由は、代金の高騰と寄港地の少なさであるのは「飛鳥Ⅱ 2024年世界一周クルーズ 乗船キャンセル」(2023 9月2日)に記した通りである。とは云うものの、振り返れば2011年当時の為替は1米ドルが約80円だったから、このところの世界的なインフレに加え、円安によってフィリピン人クルーなどの人件費、港費、燃料代などドル費用が膨らむ船側が、クルーズ料金を大幅にアップさせることは理解できぬわけではない。クルーズ料金や寄港地を決めるには、テロや戦争などの世界の情勢、天変地異にパンデミック、為替や経済環境など考慮することが多く、世界一周クルーズを企画・運営する方も大変である。料金の問題はさておき、飛鳥Ⅱでは2018年以来6年ぶりのワールドクルーズとあって乗船を心待ちにしていた予約客も多いようで、懇意にしている旅行社の話では今のところ航路変更による目立ったキャンセルの動きはないという。
発表された新スケジュールでは、飛鳥Ⅱはシンガポールを出た後はコーチン(インド)、サラーラ(オマーン)、スエズ運河、ピレウス(ギリシャ)、メッシーナ(イタリア)、チビタベッキア(イタリア)、マルセイユ(フランス)の7港には寄らず、アフリカ大陸を大回りする航路でモーリシャス、ケープタウン、テネリフェの3港のみに寄港、5月12日にリスボンでオリジナルの航程に復帰する。これにより当初より少なかった寄港地がますます減って、終日航海日が連日続くことになってしまった。もっとも我々も2011年には航路変更で憧れの地中海には行けなかったが、代替地のナミビアやセネガルなど西アフリカ諸港には一生行くこともないだろうと乗船をしたところ、それはそれで良い思い出になったのは事実。終日航海日が多いため船内で出来た友人も多く、未だに彼らとは定期的に飲み会を開いているし、毎日毎日開かれたダンス教室がきっかけとなって今では社交ダンスを少々嗜めるようになった。南半球に入る際の赤道通過祭りも忘れられない思い出とあって、航路変更もあながち悪いことばかりではない気がする。
赤道通過祭

連日続くインド洋の終日航海日

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