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2023年11月

2023年11月22日 (水)

日本郵船が運航するGALAXY LEADER号の拿捕

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日本郵船が海外から用船している(とみられる)自動車運搬船(2016年9月 広島沖)


日本郵船が『運航』する貨物船"GALAXY LEADER"(ギャラクシー・リーダー)が11月19日、紅海イエメン沖を航行中に、イスラエルと敵対するイエメンの反政府武装勢力 フーシに乗っとられたとするニュースが大きく報じられている。同船は最大で約5,000台ほどの車両を運ぶ貨物船(自動車運搬船)であり、巨大な立体駐車場にエンジンと操船設備を取り付けた様な外観で、ブリッジや乗組員の居住区は海面よりはるか上方に位置している。この海域では小型ボートを使って襲撃する海賊がしばしば出没するため、通航する船舶は海面上の警戒はするものの、自動車輸送船は船体の下部に海賊が取りつく手がかりがなく、乾舷が高いため通常は襲われにくいとされている。昨日は武装した犯行グループがヘリコプターから船体上部のデッキに降り立ちブリッジに侵入する動画がSNSで公開されたが、それを見るとクルーはまさか上空から襲撃されるとは予想もせず、シタデル(緊急退避指令所)に避難する隙もなかったようだ。


"GALAXY LEADER"はバハマ船籍でポーランドの造船所に於いて2002年に竣工した長さ189米、48710総トン(17127重量トン)のヨーロッパ仕様の大型船である。船主はGalaxy Maritime Ltd と登録されているが、実質はロンドンにビジネス拠点を置く Ray Shippingと云うイスラエル人の会社であり、その下で乗組員の手配や船舶の管理はギリシャのStamco Ship Management Co. Ltd社 が引き受けていると発表されている。通常、ギリシャの船舶管理会社は日本人船員を雇わないことから、本船に日本人クルーが配乗されていないのは不幸中の幸いだった。この船主は車両輸送船の世界ではイスラエル系の会社としてよく知られるかなりの大手であり、ヨーロッパのメジャーな船会社(運航会社=用船者)のほかに、日本郵船や商船三井、川崎汽船の邦船各社(運航会社=用船者)にも長期契約で船をチャーターアウト(定期用船契約)している。今回本船はトルコで揚げ荷をした後、空船でスエズ運河・紅海を通ってインドの積み地に向かっている途中に襲撃されたようだが、フーシはこの船を急襲して、イスラエルの船主に今後何を要求するのであろうか?


新聞やテレビでは「日本郵船の輸送船」とされる報道もあって、その用語の使い方に違和感を覚えるが、日本郵船は船主のGalaxy Maritime Ltd に対して単なる定期用船契約上の用船者であり、法的には今回の事件に当事者として関わる立場にはない。郵船のホームぺージには「当社が英国Galaxy Maritime Ltd から傭船する自動車専用船GALAXY LEADER(ギャラクシー・リーダー、以下「本船」)がインドに向かってイエメン、ホデイダ沖付近を航行中に拿捕されたと同社から連絡を受けました。当時、本船に貨物は積まれておりません。当社は…(中略)対策本部を立ち上げ、情報収集にあたり、本船の傭船者として乗組員25名の安全を第一に対応しています」とある。これは上場企業として情報開示には務めたうえで、人道上の配慮から「乗組員の安全」第一とはしているものの、あくまで『用船者』の立場であることを示して、本件について法的には無関係であることを示唆するアナウンスだとも読み取れる。


報道された本船の写真を見ると、外観は二引きの郵船ファンネルであり、NYK LINEと船体にもロゴが大きくペイントされているため、「日本郵船の輸送船」と呼ばれるのも無理はない。しかしながら既にこのブログで何度も書いてきたように、定期用船契約の上では、船舶が航海する上で生じる事故や事件の責任、ないしは船体の保全や乗り組員に対する安全責任は船主(またはその下にいる船舶管理者、または船長)にあり、定期用船の用船者(今回は日本郵船)にはないことが、永い海運の歴史の上でほぼ確立された世界的なルールになっている。定期用船契約では、船主は乗組員の手配を含め、船舶を必要な航海に堪えるように整え、積まれた荷物の保全に必要な注意を尽くすことが義務であり、用船者は航海に必要な燃料(バンカー)を手配、安全な海域を通って安全な積揚げ港に向かうことを船長に指示し、約定外の危険物を運びこまないことが根本的な契約義務となっている。


今回のケースに当てはめれば、現状では紅海が戦争などの危険水域になっていないため、郵船が用船者として「トルコから紅海を通ってインドへ行く」指示を出すこと自体に何ら問題はない。また船体が拿捕されたり乗り組み員が拘束されたりすることに対して、郵船が責任の一旦を負う必要はまったくなく、船主に対して「OFF HIRE」を宣言し、本船が解放されるまで一日当たり数万ドルの用船料の支払いを中断しておけばよいだけである。但し、もし積荷があった場合には、対荷主との間では道義的または商売上の関係で、用船者も事件に一定程度巻き込まることがあるが、幸い今回は空船だったので、郵船はただ事件の傍観者の立場となっているはずだ。もっとも次のインドで船積みを予定をしている荷主には、説明を尽くすとともに可能なら配下のフリートの配船繰りを変更して代船をだすこと程度は検討しているのかもしれない。一方の船主側は、乗り組員の安全についてはP&I保険、船体については(もし掛けていれば)不稼働損失保険や拿捕に対する保険、OFF HIRE保険などによる填補を求めると共に、本船解放へ向けて保険関係機関ないしは外交・法律専門家などによる支援を探ることになるだろう。この後、いかなる解放交渉がフーシと船主の間で行われるかが注目されるが、いずれにせよ本船が「日本の船」「日本郵船の船」としてセンセーショナルに扱われるのはどうなのだろうか?と思ってニュースを見ている。

追記:この船主は手広く日・欧の船会社(運航会社)に自動車運搬船を定期用船に出しているので、今後同社から定期用船した他社の船舶にも同じような事件が起きる可能性はあるかも。


紅海を進む飛鳥Ⅱ(2018年4月)デッキには海賊除けのフェンスが張り巡らされ、武装したガードマンが乗船、夜間灯火管制など厳重な警戒がなされた
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2023年11月21日 (火)

第54回明治神宮野球大会大学の部 慶應義塾大学が5回目の優勝

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優勝旗を受け取る廣瀬主将

昨日行われた第54回明治神宮野球大会 大学の部の決勝戦、慶應義塾大学と青山学院大学の試合を観に神宮球場に行ってきた。秋の大学野球日本一を決める明治神宮大会は、神宮球場を本拠地とする東京六大学野球連盟と東都大学野球連盟の秋季リーグ戦の各優勝校、それ以外の全国各地区からはそれぞれのリーグ戦やその後の予選を勝ち抜いて来た大学によって争われるトーナメント戦である。この大会は、1970(昭和45)年に明治神宮鎮座50年を記念して行われた奉納野球大会から始まりこれまで53回を重ねたが、その間、東京六大学代表が15回、東都大学代表が16回優勝と両連盟が優勝回数の多さを誇っている。今年も大方の予想通り、決勝まで勝ち上がってきたのは両リーグの代表チームであった。快晴の東京ではあったが木枯らしも吹き始めるこの時期は、一旦陽も傾いてくると観客席でじっと見ている身には寒さがこたえるものだ。この日は登山用の防寒下着を着こみ手袋やブランケットを持参しての野球観戦である。


午前中に行われた高校の部決勝の関係者も残り、いつもの東京六大学野球リーグ戦とは場内の雰囲気がやや異なる神宮球場のスタンドに座って、両校選手のノック練習風景などを見ていると、この大会における慶応野球部の過去の試合の模様が脳裏に蘇る。1985年、エース志村(桐蔭学園)の好投、相場(桐生)、仲沢(桐蔭学園)らの本塁打で愛知工大を下しての初優勝、1991年、若松(丸亀)の広島経済大学戦でのノーヒットノーラン達成の試合など、眼前で繰り広げれられたさまざまなシーンを思い出していると、働き盛りだった当時の我が仕事ぶりや生活の記憶が目前の情景とシンクロして不思議な気持ちが胸に去来する。そのうち神宮球場も取り壊されて新しく生まれ変わるそうだが、この古色蒼然たる場所は「我がフィールド・オブ・ドリームス」なのかも知れない、などと感慨に耽っているうちにプレー・ボールである。過去のブログ「第50回明治神宮野球大会(2019年11月18日)


入れ替え戦がなく対校戦の形式を採る東京六大学野球リーグに対して、2部、3部に降格もあり、熾烈な順位争いが繰り広げられる東都大学野球リーグは「人気の六大学」に対し「実力の東都」と呼ばれることもある。その中にあって青山学院大学は今年の春・秋のリーグ戦を連覇し、6月に行なわれた大学野球選手権大会の決勝戦では、六大学代表の明治大学を下して日本一になっている強豪。特に先のプロ野球ドラフト会議において、阪神に1位に指名された下村投手、広島1位指名の常廣投手と2人の強力な投手陣を青学は擁している。対する慶応は「昨年の主力がほぼ抜け『日本一になれるとは思ってなかった(廣瀬主将)』」(読売新聞11月21日)と云うチーム。慶応の2年生エース外丸(前橋育英)のクレバーな投球がどこまで相手打線に通じるかだが、青学投手陣から大量点をとるのは至難とあって、よほどのことが無ければ慶応は青学に負けてしまうのだろうと内心ひやひやしながら試合を見つめていた。


ところが試合は外丸君の投球術が光り、予想に反し序盤は慶応が押し気味に試合をすすめる。コースが決まり緩急を操って投げていた外丸君は、中盤からはライナー性の良い当たりをしばしば打たれるものの、守備陣のファインプレーもあり7回を終えて両校 0-0と決勝戦に相応しい緊迫した試合展開。しかし野球とは不思議なスポーツである。8回表の青学の守備は二つのエラーの後、好投の下村君が突如ストライクを取れなくなり、一死満塁から押し出しの四球。急遽代わった投手の常廣君から広瀬君(ソフトバンク3位)の大きな外野犠打で慶応が2点目を挙げ、そのまま慶応は終盤守り切ってゲームセットとなった。なぜ下村君はこんなに急に崩れたのだろうか。DH制を採る東都大学(六大学はDH制なし)で、直前の回に一塁まで全力疾走してリズムを崩したのか、東都のリーグ戦では経験したことのない相手側の大応援団に圧迫されたのか、それまでの素晴らしいピッチングとは別人になったような急変ぶりだった。一方の外丸君は打たせて取るピッチングから、9回裏はそれまで見せなかった最速145キロの速球も交えて3三振と、豪速球だけが投手の強さではないことを見せて青学打線を完封したのは見事だった。2023年は夏の慶応義塾高校の甲子園優勝に加え、秋の大学日本一と、慶応野球ファンには生涯忘れられない年になった。

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2023年11月16日 (木)

特別展「和食」於国立博物館

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特別展「和食」ガイドブック


上野の国立科学博物館で10月28日~来年2月25日まで開催されている特別展「和食」に行ってきた。「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されてから10年、改めて日本の食文化をさまざまな角度から紹介する企画特別展である。いま和食は世界的ブームとあって、海外のクルーズ船の船内にも「すしバー」だけでなく「和食レストラン」がオープンするほどである。かつて海外では怪しげな「日本食」レストランが多かったが、最近は本格的な高級日本料理店も随分と増えたようだ。とはいえ、海外からの観光客が来日して驚くのは、天ぷら屋、寿司屋、蕎麦屋、とんかつ屋など、一つのジャンルの料理だけを出して飲食店としての商売が成り立つ食文化である。出汁(だし)を使うことを始め、なぜ日本食が他の料理と異なる発展をしたのかは不思議なところだ。私はふだん食に関してはあまり興味があるとは言えないが、こだわりのある妻が内覧会の招待券を当てたので、この機会に和食のことをもっと知っても良いかと散歩がてら上野の杜を訪問してみた。


「和食」の展というと、料理法の発達や栄養面での分析、また出汁や米・麹、みそ、醤油、日本酒などの歴史解説が主かと想像して入館したが、地理や地学的アプローチを交え、文化人類学的なワイドな切り口による特別展は想像以上で、時間の経過を忘れて見入ることになった。展示はまず人類の祖先がアフリカ南部から移動を開始した時から、世界の各地で何を食べて生きてきたかという説明から始まる。活字よりも豊富なサンプルや模型、分かり易い図表などが理解を深めるのに役立つ。次に日本列島の自然と食材のコーナーになるが、ここでは日本の置かれた地理的特性により、我々が大変豊かな食材に囲まれてきたことがわかる。また日本の水はなぜ欧州と違い、マグネシムやカルシウム分が少ない軟水なのかの詳しい説明もなるほどと納得。かと思うと魚貝のどの部分がすしネタになるのかなど、ちょっとした知識、小ネタが得られて、博物館を出たら上野近辺の寿司屋に入りたくなった。また江戸時代にすし、てんぷら、そばの外食文化が普及したことを館内に再現された屋台が示し、その伝統と日本人の繊細な感性が、今の一つの料理に特化する飲食店に繋がったことが伺えてわが疑問も氷解した。


展示をぐるっと回って、どのような経緯を辿って日本人が食べてきた食物が「和食」としてかたち造られ確立してきたかが分かったが、それにしても日本列島とはなんと食材の豊富な場所に位置しているかと、我々が於かれた環境に感謝したくなった。同じ島国と云っても、日本近海では4,500種の魚類が生息するのに対して、イギリスは300種、ニュージーランドでも1,300種しかいないそうだし、植物は日本が7,500種、イギリスが1,600、ニュージーランドが2,000とわが国に於ける生物の多様性は諸外国と比べて突出している。キノコも日本列島には3,000種と世界では有数の種を誇っているそうで、食材の豊富なことが和食の発達に大いに繋がっていることが分かった。話は変わるが最近の考古学の研究では、稲作文化は朝鮮半島を経て渡来したものではないということや、日本の縄文時代は従来考えられていたものより東アジア地域の中でも早くから開明していたことが明らかになっているそうだ。一方で地震、津波、台風など壊滅的な天災にしばしば遭遇してきたのも日本列島である。こうした環境で世界最古の歴史を誇るわが国の文化が育まれてきたわけで、下手な西欧グローバリズムに呑まれずに和魂洋才を是とし、日本列島で育まれた伝統や習俗を大事にすることが大切だと改めて思いつつ国立科学博物館を後にした。

江戸時代すし屋台の展示
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2023年11月13日 (月)

MITSUI OCEAN FUJI号 JTBとのコラボで南米ワールドクルーズを催行

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"SEABOURN ODYSSEY"姉妹船の"SEABOURN SOJOURN":於リスボン 2011年5月

11月10日(金)、本邦旅行業界のトップのJTBと商船三井クルーズが連携業務提携協定を締結し、その第一弾として商船三井クルーズが運航するスモールラグジュアリー船「 MITSUI OCEAN FUJI 」号をJTBが全船チャーターして2025年1月9日より「 JTB南米ワールドクルーズ91日 間」を実施することを発表した。「 MITSUI OCEAN FUJI 」は米SEABOURN CRUISE LINE社の「 SEABOURN ODYSSEY 」号を商船三井クルーズが2023年3月に購入したクルーズ船で、2009年に就航、総トン数32,000トン、定員約450名、全室スイートルームの小型高級船である。「 SEABOURN ODYSSEY 」は現在もまだSEABOURN CRUISE社のフリートとして同社のクルーズに従事しているが、2024年末に改装の上、「 MITSUI OCEAN FUJI 」とフェリーも顔負けの船名に改名、それ以後は商船三井クルーズ社の催行するクルーズ各航海に投入されると先に発表されていた。今回は同船の移籍直後の2025年初頭に、JTBとのコラボでいきなり南米への長期クルーズ航海に出るというかなり大胆な計画の発表である。


南米と云えば、商船三井の前進である大阪商船が永年に亘り移民船の航路を運営していたゆかりの地である。発表された旅程は、2025年1月に横浜を出て、サイパン/マーシャル諸島/タヒチ/イ-スター島/ペルー/チリ/アルゼンチン/ブラジル/カリブ/コロンビア/パナマ運河/コスタリカ/メキシコ/ハワイなど23港(含むフィヨルド、運河、狭水道)を巡り、途中フォークランド島に寄港し、リオのカーニバルも観覧するというものだ。2015年末から2016年春にかけて乗船した「飛鳥Ⅱ 南極・南米ワールドクルーズ」の旅が、我々にとって生涯で最も印象的で忘れ難い体験であったように、言語はもとより文化、治安や衛生状態の異なる地球の裏側の各地を旅するのにはクルーズ船ほど便利な手段はない。今回発表された「MITSUI OCEAN FUJI」の代金は、ベランダ無しキャビンの早期全額支払い割引で5,580,000円(1日当たり61,300円)、同ベランダ付で5,985,000円(1日当たり65,800円)~8,550,000円と(94,000円)となっている。これを2024年春~夏に催行される飛鳥Ⅱ世界一周クルーズ(100日)と比較すると、飛鳥Ⅱではバルコニー無しのKステートが早期全額支払い割引で5,800,000円(1泊当たり58,000円)、Dバルコニーで同8,500,000円(1泊85,000円)であり、キャビンの広さを武器に「 MITSUI OCEAN FUJI 」のプライシングは総じて微妙なところを付いているようだ。2024年の飛鳥Ⅱ世界一周クルーズをキャンセルした我々にとって、「 JTB南米ワールドクルーズ91日 間」は、あのリオのカーニバルの熱気よ再び、という気を駆り立ててくれる行程である。


さて、いきなり知らない船での長期クルーズ乗船を検討するとなるとより具体的な詳細が必要で、まずこの船は日本籍船になるのか、日本人だけでなくインバウンドの乗客がどの程度乗船するかなど船内生活に関する重要な点がまだ発表されていないのが気にかかる(フォークランド諸島は領土紛争のため日本籍クルーズ船が寄港するのことが難しいと聞いたことがある)。また商船三井クルーズへの就航に備えた改装工事に於いて大浴場が施されるのか、トイレにはウォシュレットが付くのかも知りたい。「SEABOURN ODYSSEY」は全室バスタブ付きのようだが、日本人が多数乗船し一斉に入浴した際には、湯が出ない・流れないなどの苦情が外国船ではしばしば起こるため、大浴場がない場合にボイラの強化なども行われるのだろうか。その他、セルフランドリーの洗濯機・乾燥機は充分な数があるのか。また船長はじめ要職のクルーが日本人なのか、日本人の行動を良く知る「 にっぽん丸 」で経験の積んだフィリピン人サービスクルーなどが配乗されるのかという点も注視したい。改めて言うまでもなく長期クルーズで最も重要なポイントは「乗客の醸し出す船内の雰囲気」だと云える。「 にっぽん丸 」と同じ程度のクオリティによる船内の生活、適切な乗客同士の距離、乗客対クルーの距離が保たれるのか、「 JTB南米ワールドクルーズ91日間 」にはJTBの社員も多数乗船することだろうから、未知の領域をコントロールして新たなこの船の文化を創り出すのに尽力願いたいところである。まずは12月11日に横浜で開かれる、JTB主催のクルーズの説明会に参加してみることにした。

追記:JTBクルーズの説明会は12月11日の横浜開催ではなく、12月14日(木)東京開催の説明会に出席することに変更した。

優雅な小型クルーズ船 "SEABOURN SOJOURN" 
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2023年11月 9日 (木)

岩盤保守層に見限られた岸田政権の起死回生策

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秋晴れの日が続く。週に一度くらいはこのブログをアップしたいと思っているが、ここのところ平凡な日々で特に記すこともなくて困っている。困った時の政治の話ということで、なぜ岸田政権がこれほど人気がないのか、私が自民党を見限ってなぜ百田尚樹氏率いる「日本保守党」の党員になったのかを記してみたい。振り返れば2年前に岸田政権がスタートした時に、親シナの林芳正氏が外務大臣に起用されて「おや!?」と思ったことはあったが、安倍元首相の国葬儀を即決し反対の声もあった中でブレずにこれを実行、防衛予算の大幅増額も即断するのを見て、岸田氏は大方の予想に反してなかなか決断力がある首相だと一時は感心していた。しかしコロナ感染騒動ではオミクロン株への変異によって、世界では厳しい感染対策が緩和されたにも関わらず、(いわゆる)専門家という人達の意見を聞きすぎて5類に移行する決断が遅すぎたあたりから、どうもこの人の「聞く力」とは専門家の意見にことさら左右されて「政治決断」が下せない類いだと、私は彼の指導力に疑いの目を持ち始めたのだ。


財政再建にこだわる財務官僚の意見を岸田首相は聞きすぎだ、という声がかねてから挙がっていた。防衛予算や少子化対策には財源が必要だと彼は言葉の端ばしに増税をほのめかしていたが、特に不満に感じたのが今年6月に出された政府税調の中間答申で、その中では通勤手当の非課税や、退職金の控除額の見直しなどサラリーマン層への狙い撃ちが明らかだった。安倍さんが首相の時ならこのような税調案が出ても、それがメディアにことさら取り上げられないように官邸が配慮したとされるが、岸田氏自身がいくら否定しようとも財務省にひたすら阿(おもね)て増税路線を目指す政権であることが、誰の目にも明らかになってきたようだ。一方で海外向けには威勢よく補助金や支援金のバラマキを約束し、リベラル勢力がバックにいる「公金チュチュー団体」の整理にも彼は一切手をつけようとしない。「聞く力」が決定的に発揮されたのがエマニュエル米大使にそそのかされて、党議拘束までかけ首相自らが肝いりで推進したLGBT理解増進法の制定であった。文化・伝統的にわが国にまったく不要、かつ女性の人権を大きく損なう法案を何の説明もなく、強硬に採決させた岸田首相を見て、私はこんな人に率いられる自民党への支持はもうやめようと決め、日本保守党の党員になったのはすでにアップしたとおりである。


LGBT法の成立が自民党の岩盤支持層を離反させ、首相の支持率を落としたことを、これまで性的少数者の理解増進運動を推進してきたオールド・リベラルメディアはなかなか取り上げなかった。しかし最近の内閣・自民党支持率の低下でようやく「首相 保守層つなぎとめに躍起 LGBT法成立 支持離れに危機感」(10月27日読売新聞朝刊)などの論調が、岸田応援団とされる読売新聞にも掲載されるようになってきたのはよろこばしいことである。同記事は憲法改正や安定的な皇位継承問題などの議論を進めるに当たり、保守層の離反に自民党が狼狽していることについて「9月には作家の百田尚樹氏がLGBT法の反発を主な理由に、…『日本保守党』を設立した。自民幹部は『LGBT法で保守層が逃げた可能性が高い。』 」との分析を展開している。私とまったく同じように多くの自民党支持者が、この法案の成立で同党に愛想をつかしたことが分かるが、米国民主党の声を代弁するアメリカ大使と国内リベラル勢力の声ばかりを聞き、保守岩盤支持層を甘くみたしっぺ返しはまことに大きいと岸田首相は知るべしである。岸田首相には「聞く力」はあっても、安倍さんのような「国家観」がないばかりに、「聞いた」ままに、保守とリベラルの間を行き来し、財政再建派と積極財政派などの間で右往左往しているように見える。


月刊HANADA12月号の石橋文登というジャーナリスト(千葉工業大学特別教授)による「岸田総理はもっと『怒り』を」とする記事には、「支持率下落の要因は?」とする分析があり、これが岸田政権の不人気についてよく纏めていたので紹介したい。「 岸田文雄はもともと、ジェンダーフリーやLGBT問題にさほど関心はなかった。…駐米大使の甘言につられたのか、朝日新聞の『天声人語』に褒めてもらいたかったのか。いずれにせよ、左にウイングを広げようとしたばかりに、安倍晋三が誇った『右から三割』の岩盤支持層は右から崩れつつある。」「…リベラル勢力への警戒心は微塵も感じられない。ここが安倍晋三との決定的な違いだと言えよう。伝統・文化を歪め、日本を貶めようとする勢力への『怒り』がないので、『話せばわかる』『必ず妥協点を見い出せる』などと幻想を抱いてしまう。だから保守層は岸田に『危なさ』を感じているのだ。」「 安倍晋三が死去してわずか一年あまりで、自民党は保守政党としても矜持を失いつつある。」との石橋氏の意見であり、自民党支持を辞め日本保守党を応援することにした私も、この石橋氏の記事にけだし同意するところだ。さて岸田氏が失われた保守層の支持を回復する起死回生の手段はまだ残されている。安倍さんさえ成しえなかった憲法改正の議論を本格化し、早急に憲法改正発議をすすめることである。いまは右からの声に「聞く力」を持つことだが、まあこの体たらくでは余り期待できないか…。

2023年11月 1日 (水)

東京六大学野球2023年秋季リーグ戦 慶応義塾が優勝

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東京六大学野球2023年秋季リーグ戦は、最終週の早慶戦に勝って慶應義塾大学が制覇した。通算40回目の優勝となる。今秋も何試合か神宮球場に足を運び、リーグ戦の試合を観戦したが、ドラフト会議でプロから3人指名されたように個々の力では明治大学が一歩抜けていると思っていた。またエース篠木君やそれに続く力のある投手陣を持つ法政大学も侮れない存在だとみていたので、塾員として慶応の優勝は望外の喜びである。NHKテレビの早慶戦中継では前監督の大久保秀昭氏が「今年は優勝するような戦力ではない」という趣旨のコメントを発したそうだが、昨年のチームから投では増居君(トヨタ)や橋本君(横浜DeNA)、打では萩尾君(巨人)など主力がごっそり抜け、苦戦必至というのがリーグ戦前の大方の予想だった。オープン戦の成績を見ても、今一つパッとしないという印象をもっていたが、春季リーグ戦の3位に続き秋は4季ぶりの優勝、それも相手校すべてから勝ち点を挙げて勝ち点5の完全優勝はあっぱれというしかない。スポーツ推薦のない慶応義塾にあって、選手の発掘、育成・活用のノウハウは他の體育會各部の参考に大いになることだろう。


今秋の早慶戦は勝ち点4の慶応と勝ち点3の早稲田の対戦となり、両校ともここで勝ち点を挙げれば優勝決定とあって、神宮球場は3万人近い観客で溢れた。双方とも優勝のかかった早慶戦といえば、言い伝えられるのは1960年秋のかの早慶6連戦である。この時、慶応は2勝1敗でも早稲田に対して勝ち点を挙げれば優勝、対する早稲田は連勝すれば優勝、2勝1敗なら早慶の優勝決定戦再試合を行うという状況であった。1回戦は早稲田先勝、2回戦が慶応、3回戦は早稲田が勝って優勝決定戦に持ち込まれるなか、優勝決定戦の4戦目と5戦目は双方譲らず延長の末に引き分け。神宮球場は当時は夜間照明設備がなく日没で引き分け再試合を行うというのが取り決めであった。迎えた第6戦目には慶応が天敵ともいえる早稲田の安藤元博投手(のち東映フライヤーズ)の軍門に下ったが、六大学野球がプロ野球より人気のあった時代にあって、後にも先にもない早慶6連戦は世情を大いに賑わせたそうである。6試合のうち5試合を投げた安藤に、慶応の前田監督は「今日も安藤、明日も安藤、嫌いな物を5日間続けて食べさせられてごらんなさい、どんなものか」と嘆いたそうだ。


早慶戦となると異様な闘争心を見せるのが早稲田大学で、古くは水原リンゴ事件が有名だが、2020年秋も双方勝った方が優勝という早慶戦で、9回2アウトからの蛭間選手(現・西武)の逆転ホームランで慶応が苦杯をなめたのは記憶に新しい。先の週末も10月27日(土)1回戦の9回裏に早稲田が演じた執念ともいえる逆転劇を目のあたりにして、早慶戦恐るべし、早稲田恐るべしとテレビの前で思わず唸っていた。日曜日の2回戦は、1年生の竹内君(桐蔭学園)と怪我からようやく復帰して4年春から出てきた谷村君(桐光学園)など思わぬヒーローの出現で慶応が快勝、月曜日はエース外丸君(前橋育英)とドラフト3位でソフトバンクに進む広瀬主将(慶応)などの活躍で追いすがる早稲田をなんとか振り切り、勝ち点を挙げて勝利することができた。秋季リーグ戦で3冠王に輝いた栗林君(4年)は、桐蔭学園から一浪して入学した苦労人で、他校のスポーツ推薦入学組に対して、彼のような選手が活躍するのを見るのも嬉しいところだ。優勝して塾野球部が受けた天皇杯は、各スポーツ競技に一つしか下賜されないが、野球ではプロ野球でも社会人でも高校でもなく、東京六大学野球連盟だけがその栄誉にあずかれる。塾野球部は天皇杯の誇りをもって、来たる明治神宮野球大会では高校野球部に続き大学日本一になって欲しいと願っている。

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