西日本鉄道旅(2)国鉄色 特急やくも
旅の2日目は倉敷駅から出雲市駅に特急「やくも」で移動し、出雲大社に詣でる旅程である。ただし毎日何往復もある特急「やくも」でも、わずか1編成(一日2往復)しかない旧国鉄特急色で塗分けられた列車に乗車するのが、この旅がオタクによる”テツ旅”たる所以である。特急色の「やくも9号」倉敷駅発車は11時16分と遅いため、この日は朝のうちに阿知神社や倉敷市内をジョギングして体調を整え乗車を待つことにした。皆で集合し倉敷駅の伯備線ホームで待つことしばし、隣の山陽本線を頻繁に通過するEF210(桃太郎)牽引の貨物列車や、水島臨海鉄道に乗り入れる新鋭DD200型電気式ディーゼル機関車の雄姿が我々の目を楽しませてくれる。ダイヤ通り定刻になると車体をクリーム4号と赤2号の懐かしい旧国鉄特急カラーに塗分けられた381系「やくも9号」が、始発の岡山駅から倉敷駅に滑り込んで来た。
伯備線は山陽本線の倉敷から山陰本線の伯耆大山まで138キロの陰陽連絡線で、備中と伯耆を結ぶことからこの名前が付けられている。かつては一ローカル線に過ぎなかったが、新幹線岡山開業から米子・松江・出雲方面への最短ルートとして幹線扱いになり、現在は「やくも」や東京始発の寝台夜行特急「サンライズ出雲」が運転されている。もっとも伯備線は中国山地を横断するため線路の最小半径は200米、最大勾配は25‰ときつく、スピードアップが困難な路線であったため、「やくも」に投入されたのが381系振り子車体の特急電車であった。「振り子」とはカーブになると遠心力に応じて車体の下部が振り子のように外側に傾くことで通過速度を上げる方式なのだが、後年に開発された制御装置付きの振り子車両と異なり、381系は重力のままに最大3度まで車体が傾くため、振れ幅が大きく「酔い易い」電車だと云われている。
連休を利用してか、沿線には旧国鉄カラーの車体を撮影する鉄道ファンも多いのだが、乗車してみればボディが何色かは関係ない。それでも撮り鉄が注目する列車に乗っていると云うのは、僅かばかりの優越感を掻き立てられて嬉しい気持ちもする。2007年に出雲大社に行った際に一度381系「やくも」を利用したので、この電車がよく揺れる事は知っていたが、それにしても中国山脈の山中を、最高110~120キロの速度で右に左にのカーブの連続とあってトイレに行くにもよろけて難儀するほどである。ただ山陰線区間に入って運転停車中にふと窓外を見ればPC枕木の他にかなり年季の入った木の枕木が多く、それも所々で犬釘が外れたものもあって、揺れはこの車両特有のものに保線の不味さも影響しているのではと考えられる。などと山岳路線の揺れと眼前に広がってきた宍道湖の車窓風景を楽しむうちに「やくも9号」は定刻の1412分に出雲市駅に到着した。
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