2021 東京六大学野球 春季リーグ戦 ABEMAテレビの広澤克実の解説
風薫る空の下、屋外の神宮球場を使い入場者数制限のために決して密になどならないのに、なぜ東京六大学野球はゴールデンウイークのリーグ戦を無観客としたのだろうか。まあ「対策やってます」感を出すために、感染防止ごっこのふりをして皆の自粛に右ならえということなのだろう。先の日曜日は神宮球場に母校の応援に行こうと思っていたが、仕方がないのでネットのABEMAテレビで中継を見ることにした。この日のカード、慶應 対 東大と早大 対 法大2回戦のテレビ中継解説者は明治大学出身でヤクルト・巨人・阪神などで活躍した広澤克実氏で、慶應出身でもないのに「わが慶應」などというとぼけた若いアナウンサーとの絶妙な掛け合いが面白く、画面の前から離れられなくなってしまった。
神宮球場の内野席で学生野球を見ていると、周囲でいい年のオヤジたちが数人ワイワイガヤガヤと気持ち良さげに会話を交わしていることがある。概してみな態度が大きく、年齢のせいか唾が飛んできそうな大声で野球談議に花を咲かせている。一人で戦況を見つめているこちらは「うるせーな、もう少し静かに観戦しろよ」と心のうちで舌打ちしつつ、よく見るとテレビでお馴染み、プロでも活躍した六大学出身の元大物選手たちだったりすることがよくある。そんな時は「これはおみそれしました」と一人呟き、以後彼らの会話に耳をそばだてるのだが、このような神宮球場あるあるを再現したかのような広澤氏とアナウンサーの放送である。
「これは学生ストライクだね」としばしば画面から聞こえる広澤氏の解説は、どうやら縦のカーブやスライダーのストライクゾーンがプロより広いことを言うらしい。「このカウントになれば内か外か決めて直球を狙っていくだけ、それでだめなら仕方ない」「東大ならここで1点やるのはやむなし、それより1つアウトをとること優先」「野球は一瞬の決断の連続競技」と戦術に対する彼の視点はきわめて明快だ。走者が塁上にいる場合の難しいファウルフライを捕る捕らぬの確認や、ランダウンプレーの隊形など、永年に亘り球界で活躍した広澤氏の言葉に教えられる事が多い。相手の野手がファウルフライを落球すると、その後バッターはヒットの確率が上がるとの解説も元打者ならではで、経験に裏打ちされた数多くのコメントにうなづくことしきりだった。
この日何より楽しませてもらったのは、かつての明治大学の名物監督だった島岡氏のエピソード。練習前の校歌斉唱、掛け声をかけての行進、ユニホームは神聖、バットは武士の誇り、グラウンドには神様がいるなどとする島岡精神野球を現す数々の逸話を面白おかしく話す。「社会人と練習試合をやって明治が負けそうになると、相手は手加減してくれるんだよね。明治が負けると(島岡監督から)バチバチ(に選手が殴られるということ)を知っているからね。東芝以外はね・・・!」。最近は絶叫するだけのアナウンサーや、きれいごとばかりの毒にも薬にもならない解説者が多い中、明快でわかりやすい解説をした上で内輪話もテンコ盛り、サービス精神が旺盛な広澤氏のような解説者はほとんどいない。昨日はネットテレビの画面を前に、納得したり腹を抱えて笑ったりと二試合分たっぷりと楽しませてもらった。彼が地上波テレビ放送の野球解説者になったらさぞうけることだろう。
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バルクキャリアーさま
廣澤克己氏の六大学野球解説とは実に楽しそうですね、私も今度視聴したいものだと思いました。
明大応援団長から証券マンという野球未経験の島岡監督が、鉄拳制裁も辞さない厳しい姿勢で全国から集う野球エリートを37年もの長きに渡って指導し今なおその教え子からも慕われるのは、一本筋の通ったブレない信念があったからに違いありません。
「前へ」の精神の北島忠治監督と並び明大大学が誇れる人物であります。明治大学で学んだ者として他人の顔色を伺う軟弱な精神でなく「己が信じる道」をブレることなく進もうと思いを強くした次第であります。
さて、クルーズ船「にっぽん丸」が感染者がいないにも関わらずクルーズを中止して横浜港に帰ったというニュースには驚きました。感染者が出た飛鳥Ⅱのクルーズ中断は致し方ないのかもしれませんが、感染者が発生していないにっぽん丸が一旦出航しながら何故に中断する必要があったのでしょうか、正々堂々とクルーズを完遂してクルーズの安全性をアピールする気概はなかったのかと残念でなりません。
当局からの圧力に屈するくらいなら最初からクルーズを決行すべきではなかったのではと商船三井客船のへっぴり腰に情けなく思います。今回「にっぽん丸」のクルーズに参加された方々はGWを楽しもうという気持ちに加え満身創痍のクルーズ会社を応援しようじゃないかという崇高な気持ちもあったと存じます。それを、さも後ろめたいことをしているように中断するとは顧客の信頼を裏切る行為ではないでしょうか。
そればかりかこれから日本のクルーズ船に乗船してみようかという潜在顧客までも失望させる出来事であったと思います。感染が収まれば従前のコアな高齢顧客層はそれなりに乗船すると思います。このGWに南の島に集った私の仲間はそれなりに資力もあり旅好きであり各々の揺るぎない信念を持っています。
日本を象徴する名を冠する「にっぽん丸」のクルーズ中断に際し、その面々から「日本のクルーズ船は高額な割にはヘタレで信用ならない(一旦出航して無感染者なのに中断したこと)」といった意見がありましたことお伝え申し上げます。
投稿: M・Y | 2021年5月 6日 (木) 18時40分
M・Yさま
晩年はいつもマスクをしていた豆タンクのような元祖「マスク王」、島岡監督の姿が懐かしいです。鉄拳制裁辞さずの指導方針の一方で、ユニフォームを着ることができない部員まで全員の就職に奔走したそうですね。島岡監督の指導を受けた明治の野球部出身者は、みな彼の思い出を面白おかしく親しみを込めて話してくれます。彼が今でも皆の思い出の中で生き続けているのをみるにつけ、何でもかんでもちょっとでも手を出したらパワハラだ、体罰だといういまの風潮には首をかしげてしまいます。それにしてもNHK的中継放送とはまったく違った広澤さんのしゃべりを、是非全国版の放送で聞いてみたいです。
感染者が出たわけでもない「にっぽん丸」の途中引き返しには私も本当に驚きました。感染防止をしている「フリ」、まさに感染防止ごっこの見本みたいです。横浜市からクルーズ中止の要請があったと「にっぽん丸」のホームぺージにありますが、もし何かあった時に叩かれたくないという事なかれ主義の塊ですね。
1980年代にジャパン・アズ・ナンバーワンと云われた日本経済がここまでへたれた原因の一つが、株主資本主義体制となり、下らないコンプライアンスやポリコレばかりにうつつを抜かし、冒険をせず安全策ばかりに走った日本の経営体質にあることは明らかです。出光佐三のように、政府が何と言おうと毅然として己の信じる道をいく大物は今の経済人にはいないのでしょうか。クルーズ船はいま、陸上より安全だと気概を示す良い機会なのに「にっぽん丸」のへっぴり腰を見ると、日本経済がダメになるのもこんな経営ばかりだからか、と茫然としてしまいます。
投稿: バルクキャリアー | 2021年5月 6日 (木) 23時33分