慶応野球部・優勝に王手
明治のエース、広島ドラフト一位 森下君の奮闘
明治神宮外苑に「夕闇迫る神宮球場、ねぐらへ急ぐカラスが一羽、二羽、三羽……」とかつてNHKの松内アナウンサーが放送した季節がやってきた。ラグビーのWC日本対南アフリカ戦を前に、日曜日は東京六大学野球の慶応義塾大学・明治大学の2回戦を観戦に神宮球場へ向かった。慶応はここまで7連勝で3季ぶりの優勝へまっしぐら。投手陣が安定しており、先日のドラフト会議で野球部史上最多の4名がプロ野球に指名された層の厚さでここという場面を制してきた。対する明治は法政と早稲田に勝ち点を落として優勝争いから脱落するも、広島ドラフト1位・エース森下君(大分商業)の最終シーズン登板が楽しみである。スタンドには観客も一万人以上入り、「天日の下にぞたたかわん」という日和である。
明治戦になると登場する慶応応援席の銅鑼の音をバックにプレイボールだが、ふと見まわすと球場周囲の景色も大きく変化した事に気がつく。レフト側にそびえる国立競技場はその外部工事がほぼ完成したようだし、秋のシーズンになると外野手の真正面になる夕陽も日本青年館ビルの高層化で影の伸び方が変わってきた。東京オリンピックを機に神宮第2球場などこの辺りも一変するそうで、懐かしい光景もいつまであるのかと懐旧の念がわきおこる。明治の紫紺のユニフォームに身を包み主将のあかし背番号10の森下君がマウンドに上がると、かつて同じ明治の主将・背番号10で打者と真っ向勝負をした星野仙一や井上明(松山商業・のち朝日新聞)、高橋三千丈(静岡商業・のち中日)ら名投手の雄姿が心に浮かんできた。などと昔の事を思いおこすうち、ベンチから短躯の島岡監督が真っ赤な顔をして薄暮のグランドに飛び出してくるかの幻想にしばし捕らわれてしまう。伝統の一戦とは良いものだ。
病み上がりの森下君は球が上ずり微妙なコントロールに苦しんだが、最速153キロの速球で連打を許さない投球はさすが大学球界ナンバー1の実力と云えよう。対する慶応の森田投手(2年・慶応)もこの秋大きく成長して、まったく危なげない投球である。1対1のまま9回になった試合は、まず慶応の大久保監督が仕掛けた。ここまで好投の森田を一死ランナー無しの場面で交代、明治の左打者に対し左腕の増居(1年・彦根東)がワンポイント・リリーフ、その後を石井(4年・慶応志木)がきっちり抑える。すると9回裏の攻撃で2死から小原(4年・盛岡三)の2塁打でサヨナラのチャンスが到来だ。次打者の申告敬遠のあと投手の打順で代打の橋本(2年・出雲)が粘った挙句、森下の投球を強振すると打球は前進守備のセンターの頭上を越えて行って慶応がサヨナラ勝ちした。スパっと投手を代えるとその裏に投手の打順がきて、そこで起用した代打が成功するとは監督の采配が冴えすぎだ。これで慶応は優勝に王手をかけたが、選手の力もある上に監督が選手をよく理解し信頼しているのがわかり、今年のチームならあと一勝して優勝できるのではと嬉しく帰路についた。家に帰ると旧友から優勝したら祝勝会をしようと早速お誘いのメールが届いた。
薄暮の神宮球場
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