ゴールデンウイークの思い出

2018年4月、飛鳥Ⅱのワールドクルーズにて
アデン湾でわが海上自衛隊の護衛艦や哨戒機の護衛を受ける
(写真家:高橋敦氏の撮影)
昨日は昼から爽やかな晴天になった。居間から窓の外の青空を眺めていると、過去のゴールデンウイークのさまざまな場面が思い出すともなく浮かんでくる。そう云えば5月1日は、メーデーの中央集会に参加した者は出社扱いとするという会社の労使協定で、代々木公園に行った年もあった。集会や行進は昼で終わって渋谷のデパート屋上のビアガーデンに集まり、会社に残って仕事に精出す同僚には悪いが生ビールのジョッキを傾けたのも良き思い出だ。そのほか記憶に深く残るのは入社して数年目、やっと仕事に慣れてきた頃の事だ。
当時はバラ積み貨物船のオペレーションという業務を担当していた。荷主との契約書に基づいて、担当の貨物船に行き先や何の荷物を何万トン積むのか指示し、燃料を手配し寄港地の代理店に現場業務を依頼する仕事である。各船の船長とは日々航路の選定や航海速度・燃料消費量を協議するのだが、自社船のように我々営業サイドと船長の利害が一致している船ばかりではない。ギリシャからチャーターしてきた船などは、すべてにおいて本国の船主の利益を優先するので、借主である我々と船長のコミュニケーションが険悪になる事もあった。
例えば荒天域で必要以上に速度を落としたり遠回りしたチャーター船には、船主との契約書にある数値を守るように指示するが、船からは気象・海象が陸で想定する状態より遥かにひどいとエクスキューズの電報が入る。今と違い洋上の気象を観測する衛星などないから、付近を航行する他船の情報や天気図・波高図などを基にギリシャ人の船長と交信を交わすが、なにせ電報の世界でもどかしいことばかり。その上我々借主が負担する高価な燃料油を多めに見積もって要求したり、チャーター終了時に返してもらう燃料量を偽ったりなど苦労が絶えなかった。
そんな頭の痛いギリシャ船の一隻が、ある年のゴールデンウイーク中に日本の近くでエンジン爆発事故を起こして航行不能になりSOSを発信、けが人も出たとの電報が入った。本船の事故や乗組員の傷病は、本来ギリシャの船主側で対応すべき事項だが、本国を遠く離れた太平洋上での事故ではそうも言っていられない。SOSを受けて関係官庁に連絡するが、その時は海上保安庁ではなく航続距離の長い捜索機を持つ海上自衛隊が厚木基地から救難に向かうことになった。ところが自衛隊では船のファンネルの色や貨物船の船型や大きさを聞いても識別がつきかねるので、船会社から担当者が一名捜索機に同乗してほしいとの依頼がきた。
連休でのんびりしていた中での突如の事故、そして自衛隊機の搭乗と云う滅多にない経験ににわかにアドレナリンが出たが、結局、厚木基地に向かう朝、船は機関を応急修理して何とか自力航行できるようになり、けが人移送も保安庁で手配できるとの連絡があり飛行は中止となってしまった。けが人の早期収容は良かったものの、本物の自衛隊機に乗って太平洋を捜索するというチャンスが潰え、なんだか肩すかしを喰ったようなゴールデンウイークの思い出である。後日厚木基地に菓子折りを持って挨拶かたがたお礼に赴くと、基地の司令官から「我々は国民の為には何でもやりますから遠慮なく言ってください」と頼もしい返事を貰ったのだった。
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