モルジブと中国
現役時代は海外といってもなぜか原油に関連するビジネスには縁がなかったから中東に出張に来た事はなかった。よって飛鳥Ⅱがインド洋を西に進むにつれ未知のゾーンに初めて踏み入れるようなワクワクとした気持ちになる。もっとも飛鳥Ⅱの船上は正に「日本」そのものであり、港に着いて上陸しても乗客の行動は船が施した万全の対策の下で行われるからこちらは気楽なものだ。その万全の対策の一つとしてモルジブの首都マーレ沖に錨泊した昨日は、マーレ市内での自由行動は禁止となり、ドーニーと呼ばれる通船に揺られて乗客が運ばれたのは、パラダイスアイランドリゾートという小さなリゾート島であった。
1190の小さなサンゴの島から成り立つモルジブは、人口40万人のスンニ派モスリムの国で観光や漁業が主な産業である。海外からの観光客は首都マーレを素通りして、島全体がリゾートとして開発された各離島へボートや水上飛行機で渡って過ごすと云う。そこでは飲酒が許されているので、イスラム国という感じはあまりしないらしい。首都マーレは政変のため非常事態宣言が出されていたところ、この3月に解除されたのだがそこは「万全」の飛鳥Ⅱのことである。制限解除直後の首都には乗客を行かせず、治安の安心なリゾート島へ通船を出すのが飛鳥の飛鳥たる所以であろう。リゾート島での滞在時間はわすか40分と極めて短かかったものの、人口密度が世界一だというマーレでなく、リゾートを垣間見る事ができたのは、典型的モルジブの体験とも云えよう。
マーレ沖に錨を降ろした飛鳥Ⅱの船内から目の前に見えるのは、小さな島の上で盛んに進められている土木工事であった。マーレの海抜は1米、国全体でも平均海抜が2米のこの国は、いま地球温暖化による海面上昇に悩まされている。港内に停泊中のバラ積み貨物船から粉塵とともにはしけに揚げられている荷物は砂利のようで、これを使って護岸工事や埋め立て工事が行われるのだろう。ここでも一路一帯の構想実現を目論む中国が港湾整備に手を貸していると報道されており、目の前の島の土木工事も中国資本で為されているのだろうか。いまマーレには多くの直行便があることが中国との関連を物語っているようだ。2016年の南極・南米ワールドクルーズの際には、南米各地の港湾整備に中国が関わっているのに驚いたが、ここでも覇権を目論む中国のプレゼンスが大きいのが些か気にかかる。
砂利を艀に荷揚げするばら積み船
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