第九と紅白歌合戦
毎年恒例の第九の演奏をNHKテレビで聴く。今年は何だかやたら速くてメリハリが利いている第九だと思ったら、指揮者はフランソワ・グザビィエ・ロトというフランス人だとキャプションが出る。ドイツ風の重厚な音色に対してフランス風のタッチというのだろうが、いつも聞きなれたベートーベンと違って軽妙すぎるのにはひどく違和感が残った。この指揮者はNHKによると『ヨーロッパでもっとも熱い注目を集める指揮者の一人。17世紀から同時代作品まで、オペラや室内楽も含む幅広いレパートリーをもつ』だそうだが、ベートーベンよりはラベルの「ボレロ」とかモーツアルトの「パリ」や「フィガロの結婚」の方が合っているのでは、と妻と語り合っていた。
ひき続き紅白歌合戦にチャンネルを替えると、かなりの出演者が見た事もない子供達だ。日頃オジサン、オバサンの歌はテレビ東京で堪能しているとあって、こういう若い歌手を大晦日くらいゆっくり見るのも良いものである。司会の女優がぎこちないのはご愛嬌としても、ここ数年何組も出ていた韓流歌手たちが出ていないのが何ともすがすがしくて良い。NHKも経営委員が変わって以前より少しはマシになったのかと新年に期待がもてる。と思いつつ聞いていると恋愛や色恋の歌が減って、みんな仲間だよとか個性を大事に云う歌が多いのに気がついた。「ナンバーワンにならなくていい、もともと特別なオンリー・ワン」(SMAP)とか「奇跡は挑戦者に与えられた賛意」(EXILE)、連帯をたたえた嵐の「THANKS MEDLEY」などである。
考えてみると色恋ざたや私小説的な同棲ものが流行ったのは、まだ貧しかった高度成長期であった。当時の若者達は社会に従順にならなくとも、出世や賃金の上昇など約束された未来があり、異性の気持ちを引き止めるのが若者の本分の様な時代でもあった。翻って今の若者を見ると、身の回りに様々なものが周到に準備されているものの、コンプライアンスやらガバナンスやらでガンジガラメ、出る釘になる事や若者の特権である猪突猛進あるいはおっちょこちょいがあまり許されない時代になっている。男女の仲は昔と比べものにならないくらい近くなった一方で、若者の未来がノー天気に輝いているとは云えない時代である。こういう時勢となって恋愛の歌より人生の応援歌が流行るのではないか、と考えながら新年を迎えた。さてこれまた恒例NHKのウイーンフィル・ニューイヤーコンサートは今年はどんなであろうか。
追記:テレビ東京の東急ジルベスターコンサート、生中継の”フィンランディア”が0時きっかりに終了したのには感動した。「世界初のスリリングなコンサート」が今年も一秒たりとも狂わなかったのは拍手喝采である。
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