フェリーさんふらわあ・昼の瀬戸内感動クルーズ(2)
<この景色に美味が加われば、昼からでも酒を飲まねば瀬戸内の神々に申し訳がたたぬ>
”さんふらわごーるど”は三菱重工下関造船所で平成19年に建造された1万トンクラスのフェリーである。瀬戸内のフェリーとしては珍しく最上階のデッキに木製のバルコニー付きキャビン(デラックスルーム)を8室備えており、いつも外国クルーズ客船などでは気張ってバルコニー付きキャビンを指定する我々は、今回もデラックスルームを予約してしまった。
この感動クルーズでは神戸六甲ターミナルを朝の11時前に出港した直後、昼食としてすぐに船内で「なだ万」特製のお弁当が配布される。潮風に吹かれながら部屋のバルコニーで、配られた高級弁当を味わっていると何ともいえない贅沢な気分になって、わざわざ東京から来た甲斐もあったと感じたのであった。日頃アルコールはなるべく少なくしようと心に誓いながらまったく実践できない我々だが、やはりこの景色を前にビールでも飲まなければ、瀬戸内海の神様に申し訳ないというものだ。
<冊子と航路図>
瀬戸内感動クルーズでは、瀬戸内の名所である架橋やさまざまな島に関する解説冊子と、海図をベースにした航路図が乗船前に配られる。これらの配布物を見るだけで「フェリーさんふらわあ」がいかに本気でこのクルーズに取り組んでいるか意気込みが伝わってくる。黄砂で遠くの景色が春霞の様に見えるのがわずかに残念だったが、梅雨前の晴天に恵まれて、次々と目前に展開する絶景を昼の陽の下で眺められるのは、飛鳥Ⅱなど本格的なクルーズ客船でもなかなか味わえない経験である。
明石海峡大橋、瀬戸大橋、来島海峡大橋と3大架橋を昼間くぐるのも素晴らしいが、圧巻は右に左にと次々と本船に迫る大小の島々で、配られた冊子と持参の望遠鏡を手に目はこれらの景色に釘付け状態となってしまう。そのためせっかくの船内コンサートも宝塚レビューも見る暇がなくなり、唯一参加したイベントはブリッジ見学だけというのが現実であった。
<小豆島・地蔵崎>
デッキから眺めるその島影は、淡路島や小豆島を皮切りに、産業廃棄物問題で話題になった豊島(てしま)へと続く。しばらく左舷遠くに四国・高松の屋島の平たい山頂を見つつ穏やかな海面を行くと、瀬戸内海が日本で初めての国立公園に指定されたという歴史も納得できる。直島の美術館や日比の精錬所を遠望した後、船は塩鮑諸島から住友財閥の島である四阪島沖を通る。いつしかしまなみ街道の島々を望みつつ、来島海峡を通過する頃には夕陽を前面に受け、このクルーズでもクライマックスといえる情景の中を”さんふらわあごーるど”は航行した。
夜のとばりがおりる頃、伊予灘を西下する本船のレストランでは特別クルーズ限定、九州の郷土料理も入ったディナーバイキング(料金は1540円)である。本船特売の神戸ワイナリーのワインを飲みつつ腹も一杯になると、早くも船窓には大分の町の灯りや新日鐵の高炉の火が映ってきたのであった。嬉しい事にはその晩は大分に着いても焦って下船する必要もなく、ホテルシップとして船でゆっくり翌朝まで睡眠がとれるのである。(続く)
<来島海峡>
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