頭髪は毎日洗うのか?
『20歳若く見えるために、私が実践している100の習慣』という本が売れているそうで、その広告が新聞に大きく掲載されている。私は若く見られて損した思いも多いし、この手の医療本などは、眉に唾をつけて読む様に心がけているものの、広告の中で一箇所「頭の洗いすぎがハゲを招く」とあるのに目が止まってしまった。そういえば子供の頃は、「毎日洗髪すると禿げるから、頭を洗うのは数日に一回にしなさい」とよく言われたが、髪に問題がない今でも、このキャッチコピーはその時分を思いださせてくれる。思いおこせば当時は風呂などすっ飛ばして早く遊びたかったので「100数えるまでは肩までお湯に浸かっていなさい」など親に注意されつつ、洗髪しなくてよい日は何か得した気分になったものだった。
あの頃は家に風呂がない家庭も多く、シャンプーもシャワーもなかったから、みんな毎日髪を洗うなどという習慣がなかったが、「朝シャン」などと云う言葉に伴い清潔志向が蔓延してきたのは、一体いつごろからであろうか。最近は男性でさえ毎日髪の毛を洗うのが普通になっている様で、汚いのが一向に気にならない私でさえ、驚くべき事に毎日髪をシャンプーするのが習慣になっているのである。妻は「老人になると加齢臭がするから、体や髪は清潔にして」とうるさいのだが、実は酔っ払って帰って来た日などは風呂やシャワーも面倒で、「俺がアレルギーなどに無縁なのは、汚くて平気だからだよ」などとうそぶき、風呂を回避しようとするので、そのたびに妻の顰蹙をかっているのが現実である。
子供の頃、いつも行く床屋に「髪が柔らかいし、頭皮が固いので大人になったら禿げるよ」などと言われてムッとした覚えがあったが、床屋の見立てに反して髪の毛が健在なのは、これまでに洗う回数が人より少なかったからか、などと屁理屈も頭に浮かんでくる。考えてみれば頭部や毛根は適度な脂質で保護されていて、それを毎日ゴシゴシとシャンプーなどの化学成分で剥ぎ取るのは良くないというのも一理ありそうで、ホームレスにハゲが少ないという都市伝説も妙に納得させられるのである。健康のために毎日洗髪すべしというのは、整髪料や養毛剤業界の陰謀かもしれないと、件の本の広告を眺めながらしばし考え込んでしまったのであった。
« 食にこだわらず | トップページ | 雨の降っている休日 »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 読売新聞夕刊・インティマシーコーディネーターの流儀 (2025.09.25)
- シニアの秋(2025.09.16)
- ビールはミニグラス、ワインには氷(2025.03.06)
- 八千穂寿司のおいなりさん(2025.02.27)
- 神田川・環状七号線地下調節池(2025.02.24)

コメント