港町の復活
港町と云えば、横浜港は客船が発着する大桟橋こそ残ったが、かつて荷役で賑わった港内は閑散として船影が見えない。ここではコンテナは山下埠頭へ、貨物船は大黒埠頭など他の地区にそれぞれ街中を離れて行った。神戸港では新港埠頭こそ健在だが麻耶埠頭はなくなり、港の中心は今や繁華街から遠いポートアイランドや六甲アイランドへシフトしている。さて日本と同じく世界では、街の中から港湾地区が郊外遠くに移って行って、この趨勢は今や止まる事はないようだ。
最近クルーズ船で訪問した都市でも、ヨーロッパ屈指の港湾都市であるロッテルダムは、川に沿って次々と下流に港が移り、今では町を遠く離れた河口に近いマースブラッケという地区が港の中心となってしまった。飛鳥Ⅱで行ったノルウエイの古い港町ベルゲンも、町に近い岸壁は主に客船に使われ、商業港は別の場所にあると云うし、豪州のシドニーはかつて石炭積み出し桟橋だったダーリングハーバーが商業・観光地になっていて大変な賑わいである。
洋の東西を問わず町というものは港を中心に発展した所が多いから、そういう都市では港湾施設は市街地の中心部にある事が多い。しかし港が賑やかであれば、貨物を運ぶトラックが市街地を走って渋滞や事故の原因になるし、逆に港が寂れると夜間は普通の人が立ち入れない様な地域になってしまうから、いずれにしても最近は港湾施設は町の中心から遠方に追いやられ、跡地がシアターや公園、観光名所などとして再開発されて行くのである。
そんな中で見事に港湾と町が調和して共存しているのは、カナダのバンクーバーであろう。バラード・インレットという入り江を挟んで、客船ターミナル(カナダ・プレイス)とコンテナ岸壁、穀物やバラ積み貨物の各種ターミナルが並び、大きな貨物船が荷役している有様がここでは街中から一望できる。入り江の入り口にはライオンズ・ゲート・ブリッジと云うきれいな吊橋がかかり、傍らには緑に溢れたスタンリーパークが横たわっている。仕事柄いろいろな港町を訪れたが、バンクーバーは都会と自然が調和した世界でも屈指の港らしい港であると私は感じるのである。
さて東京でも臨海副都心である台場地区を始め、海辺の地区の再開発が進んでいるが、肝心の都心にごく近い築地市場の移転が決まっていない。銀座からほど近い市場などはさっさと豊洲に移り、跡地に客船ターミナルでも建設したら良いと、私は勝手に想像をたくましくする。銀座を歩きながら近くに大型客船の満船飾の小旗が見えたら、さぞかし東京の港湾や船の旅が身近に感じるのではないだろうか。
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