昼下がりの郵便局
お昼すぎに都内の住宅地の郵便局に用事があって行く。狭い局内だが表通りに面しているため、近所の商店街の人などが利用するのか結構混んでいる。用を足すのに10分ほど時間がかかるので、この局に来る人々をなんとなく観察する事になる。夫婦でやってきた高齢者は、待ち時間が10分ほどかかると言われて、自宅近所にもっと小さな局はないかと係員に聞いている。ところが係りが地図を出して来て最寄の郵便局を教えても、どうもピンとこない様で幾度も幾度も念を押している。その間に後ろの待ち人の列がどんどん長くなる。
順番待ちで立っている村山富一元首相ばりのひさし眉をしたお爺さんに、横を通った女性が接触する。女性は「あ、失礼!」と声をかけたのだが、この老人はそれに気が付かずまったく無言で微動だにせず立っている。女性はさらに「(お先に郵便の窓口へ)進んでいいですか?」とひさし爺さんに聞くが、まだ聞こえないらしく返事をしない。若者で言う処の「 ガン無視 」状態なのだが、相手が老人なら仕方がないと云う様にその女性はさっさと窓口に進んで行った。
窓口でもめている別の老人は、振込み入金があるので送金人に口座番号を教える必要があるらしいのだが、自分の口座番号はどこにかいてあるのか、と何やら印刷物を出して係員に説明を求めている。傍で聞いている私は彼の質問の意味が分からず、つい聞き耳をたててしまったのだが、郵便局の窓口の女性はこの手の質問を受け答えるするのに手馴れたもので、親切に銀行などの例を出して説明する。
そうこうするうちに狭い郵便局内は、待つ人で一杯になってしまったのだが、見るとそのほとんどが立派なご老人である。先日東京近郊の住宅街を昼間歩いた際には、退職して間もないまだ初老の男性が目立ったのだが、都心に近づくに連れ明らかに若手が減り、本当の年寄りが多くなるようである。たしかに都内の良い住宅地は戦中派で占められ、団塊世代はスプロール化で郊外に住居を求めたから、都心の住宅地ほど老齢化が進んでいるとも考えられる。
彼ら老人の一挙一動を見ていると、我々がこれから経験する高齢化社会は前人未踏の領域で、これは大変な社会が到来する事になるぞ、という思いが脳裏をかすめる。私たちが後期高齢者と呼ばれる歳になった時、今日郵便局に来ている彼ら先輩老人も相当数存命で、そこに後輩老人が毎年毎年新規参入してくる訳である。社会の担い手である若者が少なくなる事を別にしても、老人だらけになった社会とはどんな光景なのだろうか。1400兆円という日本人の金融資産のほとんどがこれら老人によって所有され、国債購入などだけにこの金が使われているという事実をみると、老人が安心して生活し、さらに消費活動や投資活動を気軽に行える社会の仕組みを考える事は、喫緊の課題だと改めて認識したのである。
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ブログ拝見させて頂きました。(*^-^)
と微笑んでしまう内容で、私にとってもとても参考になり、楽しませていただきました


くすくす
また次にレッスンする機会を楽しみにしております,,,,,,,,


投稿: サカトモの女性先生より | 2011年3月11日 (金) 14時00分