伊予高浜の陸軍大演習跡
伊予鉄道の終点・高浜駅で下車した。このあたりは、むかし鉄道が開通する前には松山の玄関口としてさぞ多くの人で賑わった事だろうと、瀬戸内の潮風を吸いこむ。時間もある事だし、ぶらぶらと「松山観光港」とある道路標示にしたがって散策していると、「 陸軍大演習跡 」という大きな観光案内版が道端に立っているのを発見した。ここも「 坂の上の雲 」の秋山陸軍大将と深くかかわった場所に違いないと思うのだが、この案内板には演習所跡へどう行ったら良いのか表示がないし、周囲には何も古跡を示す手がかりがない。
なんとなくこのあたりを行けばよいのかと、あてずっぽうに小さな路地を何度か入ってみるが、曲がりくねった小道は民家の敷地に入ってしまったり、夏草に覆われて道跡が消滅してしまったりで、一体どうやったら「 陸軍大演習跡 」に到達できるのか皆目わからない。それでも「 坂の上の雲 」に強く感化されている妻は、どうしてもその場所に行きたい様で、あちこちの横丁を行ったり来たりして道を探していると、地元の人が通りかかる。「 あの看板の演習跡に行くには、どこを行けばよいのですか? 」と尋ねると、物好きな人もいるもんだと言う顔で「 たしか、その先を曲がれば演習場跡への道があるはず 」と教えてくれる。
教えられた方へ歩いて行くと、まるで空き地の様な場所に「荒神山」と書いた手書きの小さな案内板を発見する。どうやらここが入り口かとやや不安であるが、傍らの小道を突き進む事にした。地元の人のふみ跡の様な山道を分け入る事10分ほど、ようやくやぶの彼方に目指す「 陸軍大演習跡 」の碑を発見した時はホッとしたものだった。碑の周囲 はちょっとした広場になっていて桜の木などが植えられているが、観光名所や旧跡を示す様な案内はまったく何もない。高浜駅近くの看板の大きさと現場の格差に唖然とするが、たしかに大正11年ここで陸軍が昭和天皇の来臨の下、大演習をおこなった様で、鄙においては名所といえば名所である。それにしても妻の「坂の上の雲 」に対する執念に突き動かされて、大汗をかきながら誰も来ない山の中の石碑を訪れてしまったのだが、こんな隠れた史跡を発見するのも旅の思い出という物であろう。
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