伊予鉄道
「坂の上の雲」を辿る松山旅行の2日目、松山のお城も見終わって帰りのフライトまで時間があるので、正岡子規や夏目漱石が乗下船した三津浜方面に伊予鉄道に乗って行く事にした。前日に松山市内の踏み切りで、京王線の旧5000系がまだ元気に走っているのを見て、旅の思い出にと伊予鉄の乗車を急遽決めたのである。京王5000系と云えば関東の通勤電車で初めて冷房装置を搭載した画期的な車両で、それまで路面電車の面影を残していた京王電鉄が、近代的な郊外電車に変わるきっかけになった名車である。昭和40年代前半の高校時代には、京王線沿線から通学してくる同級生が、「冷房つきの電車に乗ってくるんだぜ」と自慢げに話していたくらい、当時は時代の先端を行く車両であった。
先般、松江に旅行した際にも、一畑電鉄に売却された旧5000系に乗車する機会があったが、地方に行くとかつて東京や大阪で一世を風靡した私鉄の名車に再会できるのは嬉しいものである。車両だけでなく過疎化が進む地方で、中小私鉄がどの様に頑張っているのか、現場の営業や運転形態、保安状況などを垣間見るのも楽しい。という事で、松山市駅で三津方面高浜行き電車を待っていると、やってきたのはモハ710を先頭にした2両編成。この車両は銘板によると昭和38年東急車輛製造製で、さすがに少々くたびれてはいるものの、座席のモケットなどはきれいに整備されて感じが良い。
松山市から6キロ先の三津までは乗車時間約20分。運転台越しに見る線路はATSの地上子も配置された自動閉塞の様である。前方窓からは15分から20分ヘッドのダイヤで対向電車が近づくし、一部高架化されたりPC枕木が敷かれているのが見えて、田舎にしては立派な運転状態に驚く。それもそのはず、どうやら伊予鉄道は、地方私鉄としては歴史的に先進的な試みを採り入れると評判との事で、乗車券もIC化を進めていて各駅にはカード・リーダーが目新しい。そんな沿線風景を堪能するうち、三津で下車するのが惜しくなって終点の高浜まで乗ってしまったのである。
終点・高浜駅はノスタルジックな駅舎でトイレはなぜか汲み取り式。さすがにトイレの近代化までは手が廻らないのかと、それなりに納得しつつも、最近とんと使わぬ和式汲み取り便所で、携帯などを落としたら取り返しがつかない事になる、と用心しつつ用を足したのであった。
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