デパート
日本橋の三越でオーダーで作ったワイシャツの袖や襟が傷んできたので、余り布を持参して直しにいった。確か以前安く補修してくれた記憶があるので、代金は大した事あるまいとタカを括っていたら、襟・袖の修理で4300円かかる上、修繕するまで一ヶ月いる云う。注文した時は一万円ほどの布地だったと記憶しているが、4300円も出すなら既製のワイシャツがいくらでも手に入るので、修理はやめると共にもうデパートでワイシャツなどは作るまいと決めた。一万円というとデパートのオーダーでは高級品ではないのかもしれないが、幾らでも安くて良い製品が手に入るご時勢に”デパートの定価”で買ったものである。ボタンの付け方も既製品に比べるとヤワで取れ易く、着ていて特別に快適と云うわけでもない。いわばデパートの看板で売った様な商品の修理については、ごく安くかつ迅速にアフターサービスをしてくれるものと思っていたら、そんな期待は見事に裏切られてしまったわけだ。
デパートの経営が大変苦しいというが、今のデパートには買いたいものがない。服飾を始めちょっと良いものが欲しければ、今では専門店や直営ショップがどこにでもあるし、安いものが欲しければアウトレットや安売り店に行けば良い。私がデパートに行くのは、ギフトとして有名店の包装紙が欲しい時か、たまに百貨店共通商品券を貰った時ぐらいのものである。しかし貰った商品券を握り締めてデパートに行っても、特に欲しい物もないので、地下の食品売り場に行って普段買えないお惣菜をためらわずに買うくらいだ。それでも日本橋三越本店の車寄せで佇んでいると、ショーファー・ドリブンの高級車に乗った身なりの良いご夫人などが、係員にうやうやしく敬礼されて店内に入っていく姿などを良くみるのだが、こんなお帳場買いをする顧客層がいつまで存在するのであろうか。
どうやら今のデパートの業態は、時代に合わなくなっていると言えよう。良く利用する客に特典がつく三越カードなどは、結婚して女性の姓が変わると、これまで家族会員として認められていた女性の母親の家族カードが使えなくなる。同じ条件でも息子なら結婚しても姓が変わらないから、母親は家族会員としてそのまま認められるのだが、これなどは明らかに時代錯誤の規定である。その他、ひる日中、閑散とした売り場に正社員のバッジをつけた人件費の高そうな中高年の男性社員などが手持ち無沙汰に立っているのをみると、儲からないというのも当然だと感じるのである。
抜本的な見直しがこの業界には必要だろうが、目先の事としては、デパートの看板を背負って定価で売った商品については修理代を取らないとか、「 さすがデパートは買う時はちょっと高いけど、アフターサービスが良いね 」という様な、さまざまな工夫が求められる。
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