ブサン・タクシー考
韓国のブサンに行っていた。宿泊したホテルは東京で云えばお台場の様な所にあり、新しい埋立地にリゾート風ホテルやコンベンションセンターなどが出来ている。おりしもブサン国際映画祭が開催されていて、各国からのスター達と共に日本からもキムタクが来ていたらしく、とても華やかな雰囲気だった。韓国も昨年来の世界経済危機の影響を強く受けているはずだが、不況どこ吹く風という活気、この国も近代化が着々と進んでいるのを肌で感じたのだった。ただそんな中、唯一昔の日本を思い起こさせるのがタクシーである。
どうも外国に来ると感じるのだが、その国の文化の成熟度とタクシーなどのプロのドライバーの運転の乱暴さは反比例するのではないだろうか。中国やインドネシア、フィリピンなどアジア圏でクルマに乗ると感じるのは、運転手たるもの前のクルマを抜かなければ男ではない、と云う信念にでも駆られている様で、憑かれた様に目一杯アクセルを踏むドライバーが多い事。また、シンガポール出張の帰途に香港に立ち寄った時の事だが、高層ビル立ち並ぶ町の感じが似ているという安心感から、シンガポール並みに横断歩道を渡ろうとしたら、車優先の香港で危うく轢かれそうになっった事があって肝を冷やした。同じ中国人社会でも一人当たりの国民所得が高く、規則も厳しい国は、車の運転マナーも変わる様だ。
一方アメリカの田舎に行けば、大変な高齢者も運転している為か、時々一方通行を逆に走ったりウインカー(ターニング・フラッシャー)をつけたまま走っているクルマがあるが、そんな時に周囲のクルマはたいてい安全の為に止ったり見守っていたりする。またイギリスなどでは横断歩道で人が立っているだけで、通行のクルマがピタっと止る光景などを良く見る。アウトバーンに代表される都市間の高速道路や田舎の国道は、巡航速度が大変高いが、一旦町中に入って学校の表示などがあると、スーと皆速度を落とすのも見慣れた風景である。
さて昭和の30年代東京や大阪などのタクシーは、とにかく運転が荒くカミカゼタクシーと呼ばれて恐れられていた。マナーも悪く近距離の客は乗車拒否をするし、返事はろくすっぽしないなどタクシーに乗るには、客の方で勇気が必要だった時代である。日本では自由化でタクシーの台数が大幅に増えたり、業界の努力・教育などで最近は随分良くなったものであるが、ブサンのタクシーはまだ日本の数十年前並みの様だ。どのタクシーも飛ばすわ、赤信号は無視するわ、前車に超接近して走るはと運転は乱暴、大体ブスっとして笑顔もなく、20分も乗ると客の方が緊張と恐怖でこわばってしまう位である。今回の旅でも、タクシーに乗るとシートベルトもしない運転手の横で、私はシートベルトで身を硬直させ、同乗者はタクシーを降りるなり「運転が荒くて気持ち悪くなった」と青い顔をしていたものだが、客にクルマ酔いをおこさせる様な韓国のタクシーを見ると、まだ運転文化の成熟度が低いのではないのか、この国では20年後にタクシーのマナーは日本並みになっているいるのだろうか、などと云う思いが旅空によぎった。
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