神田川・その後
昼食に入った定食屋で、ぶりの照り焼き定食を食べていると、有線放送から、かぐや姫の「神田川」が流れてくる。何を隠そう、私はこの貧乏くさい歌が嫌いなのである。
その昔大学に入学した当初、地方から上京してきた新入生達は、受験疲れか蒼い顔色をしていた。それが夏休みを過ぎる頃からか、東京で育った私が知らない様な六本木やら原宿の話題を、彼らの何人かが声高にする様になってくる。と思うまもなく、女の子との付き合いを彼らは自慢しだし、2年生になるとやはり地方出の短大生などと、当時はやった「同棲」をしている輩がいたものである。硬派オクテの私などは、田舎から出てきた彼らが瞬く間に変身して、女性と暮らしているのを見ると羨ましくもあり、また「自分はしないし、できない」と反発心も混ざった複雑な気持ちだった事を思い出す。そんな「同棲世代」の気分をこの歌がうたっている事が、当時から私にはなんとなく疎ましくて嫌いだったのである。
さて貧乏くさい同棲カップルがそのまま結婚し、50年目の銀婚式を迎え、60歳の還暦の頃を振り返ったらどんな事になるのだろうか、などと「ぶり照り」をつつきながら、つらつら考えたのが ”神田川・その後”である。
”貴男はもう忘れたかしら、赤いチョッキをもらったことも
二人で行った横丁の居酒屋、一緒にたべようと言ったのに
いつもあなたが食べてしまう、残った唐揚げ芯まで冷えて
小さな入れ歯カタカタ鳴った
私は、貴男の匂いを嗅いで、加齢臭ねって言ったのよ
この前の還暦何も怖くなかった、ただ貴男がぼけるのが
怖かった ”
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