運輸安全委員会
国交省の外局・運輸安全委員会のホームページで鉄道事故調査報告書を見ていると、2007年~2008年の2年間だけで、脱線・衝突などの鉄道の事故が32件報告されているが、その中に脱線事故が21件もある事に驚く。中には踏み切りで自動車と衝突して脱線したり、新潟地震によって脱線したりしたものもあるが、いわゆる「せり上がり脱線」「輪重抜け」脱線が調査中のケースも含め相当ある様で、鉄道というノリモノはいまだに、実は「微妙」な安全性の上に成り立っている事を実感する。
鉄道模型をやった事がある人なら誰でも経験する事だが、何百回と同じ線路を同じ模型車両が通過していても、ある時ちょっと微妙に速度が違った時などに車両が脱線する事がある。その後何事もなくその箇所をまた車両が通過する事もあれば、不思議に同じ箇所で脱線が連続したりする事もある。その時はその車両をごく低速で運転しながら、目を線路に平行にして、喰い入る様にどの車両のどの部分が脱線するのかを調査し、微妙に線路の勾配を直したりするのが大方であろう。運輸安全委員会の報告書を読んでいると、本物の鉄道で起こる「せり上がり」「輪重抜け」事故も、こういった模型で起こる脱線のケースにどうやら近いものであるかの様に感じる。
報告書によると、これらの事故の原因は、カーブやポイントで車輪に横への圧力が掛かり、レールの微妙な具合や、車輪の研削の状態によってレールと車輪の摩擦が大きくなった処(すなわち車輪がうまくカーブを廻って行かなくなった時)に、特定の車輪に車体の重さが掛からなくなって車輪がレールに乗り上がり脱線に至ると言う事らしい。数年前の日比谷線中目黒駅での事故の様に、それまで数分おきに同じ型の車両が何万回走っていても何もなく、ある条件の下でこの脱線が起きると云うから、調査したり予防したりする立場の関係者は、模型での脱線とは比較にならない様々な条件の中、人身の安全を問われる重圧を受けて原因を究明しようとしている事であろう。
車輪とレールが、こんなデリケートな関係であるとすると、例えば高速で走る新幹線や、あまり線路状況の良くない地方のローカル鉄道などはもっと心配になるのだが、どうやらこの種の脱線事故、低速で走っている車両、それも乗客の乗っていない車両重量が軽い時に起こる事が多いらしい。また専門家によっては空気ばねで車体を支えるボルスタレス台車が事故の一因と言う人もいる様である。鉄道が生まれてから200年、日本でも130数年になるが、まだこんな基礎の”キ”みたい事が解明されていないと云うと、鉄道も造船と同じ「経験工学」なのだな、と感じると同時に、そんな微妙な欠陥を持っているシステムの探求こそ、素人は素人なりに興味も湧いてくるのである。
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