2025年4月20日 (日)

飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第19日 レユニオン島

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クルーズ第19日目、飛鳥Ⅱは仏領(県)レユニオン島のル・ポールに入港した。レユニオンはマダガスカルから東に800キロ、モーリシャスから西に175キロの洋上にある火山島で、神奈川県ほどの面積の島に85万人が住む(ウイキペディア)。入港時にレユニオンを遠望したところ、ちょうどハワイのカウアイ島やタヒチのモーレア島のような火山島独特の切り立った山容を背後に、海岸に向かう斜面にコロニアル風の住居が立ち並び、南洋の植物が生い茂る緑ゆたかな島であった。ル・ポールの港から県庁のあるサンドニの街まで、片道2~3車線の立派な自動車専用道路は、途中の部分が、海の中に立つ橋脚の上に施設されていた。ここはもともと海食崖の下を通っていた高速道路が1980年のサイクロンで被害を受け、新たに海上に付け替えられたもので、自然保護の観点から様々な制約が課せられたため、キロ当たりの建設費用は世界で一番高いものになったと云う(レユニオン公式サイト)。シャトルバスでこの海上の道を通って約20分、この日は自由行動でサンドニでの半日の市内観光を楽しんだ。


上陸に当たって飛鳥Ⅱでは、蚊の感染症例(デング熱)があるので、長袖・長ズボン着用の上、虫よけスプレーをして下さいと呼びかけていたが、入港直後、港付近を歩く現地の人たちを見れば半袖・バミューダパンツが多く、どう見ても船の薦める服装は当地では異様に思えてならない。南国の日差しの中、暑苦しそうな長袖・長ズボンに身を包み、ましてや一部にはマスクまでした集団がぞろぞろと街中を歩くのは、まことに奇異で人目をひきそうだ。なにごとも超安全策の飛鳥Ⅱゆえ、このような注意をしているのだろうが、衛生的に問題なさそうな港の周辺を一目見れば、例えて云えばマニラで半ズボンにポロシャツでゴルフをする方が、蚊に刺される恐れがよほど高そうだ。郷に入れば郷に従えと云うから、シャトルバスに乗車する際の他の乗客の冷ややかな視線を横目に、自己責任で行動すれば良いと、短パンにポロシャツでサンドニの街に出かけることにした。


初めての地を訪れた際にまず気になるのは、その地の文化である。横断歩道の脇に立てば、歩行者優先で目の前でクルマがサッと止まるのか、はたまた強い者が勝ちとばかり歩行者を無視するかで、文化の優劣は大体わかる。以前、出張でシンガポールを訪れ、その帰路に香港に立ち寄った際、罰金刑が厳しいために歩行者優先だったシンガポールのような感覚で、香港の横断歩道を渡ろうと足を踏み出したところ、クルマがスピードも落とさず目の前を通り過ぎ、肝を冷やしたことがあった。シンガポールと香港、同じ中華系、同じような街のたたずまいでも、中華思想と中国文化がより濃厚な香港では交通道徳は大きく劣っていたのが分かった。その点、サンドニ市街では、完全に歩行者優先のルールが守られており、ここがヨーロッパの出先で、フランスの一つの県であることをまずは実感した。


サンドニの中心部、ラジソンホテルに設けられた飛鳥デスクで薦められた方角に向かって踏み出せば、街路や古くから立ち並ぶ邸宅はフランス風で、混血のクレオールや西欧人がゆったりと道を歩いていた。中心となるヴイクトワール&パリ通りの突き当りにあったエタ公園でしばし休憩をとっていると、色々な人種の子供たちの遠足(校外学習?)が何組も目の前を通り過ぎ、先進国の中でもフランスの出生率が高い現状を垣間見たような気がした。この地は第1次世界大戦のフランス軍の英雄パイロットだったローランギャロス生誕の地でもあった。天気は快晴、そよ吹く海からの風も気持ち良く 「 天国に一番近い島」と云われた同じ仏領のニューカレドニアより、こちらの方が天国に近いのではないかと思わせるレユニオンである。そうこうするうちに、昼休みの時間になると店々のシャッターは降り、レストランの軒先では人々がワインなど片手に食事を始めている。紛れもなくここはフランスそのものであった。

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世界一高価な高架橋

2025年4月16日 (水)

飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第17日 あれから14年

南インド洋にやって来たのは、2011年の飛鳥Ⅱ世界一周クルーズ以来14年ぶりである。月日が経つのは何と早いことだろう。レ・ユニオン島が近づくにつれ、飛鳥Ⅱも航路筋に完全に戻ったのか、欧州から極東へ向かう巨大コンテナ船の姿を近くに見るようになった。喜望峰を回る航路が忙しくなったのは、2023年頃からアラブ過激派のテロが頻発して紅海が危険になってからで、大型コンテナ船がこの海域を通るのは以前なかったことである。わが身を振り返れば、この14年の間には職場も変わったし、2度のガン手術も経験した。しかし、この間もインド洋は変わらずにここにあって大きなウネリをつくり、空には南十字星が瞬いている。ふと14年前の我がブログには何を記したのか気になって読み返してみたら、当時はこんなことを感じながらここを通過したのかと感慨深い。

2011年4月26日のブログ

『イルカが船の周りに遊びに来て、しばらく飛び跳ねたり船の速度に合わせて泳いだりするのは、クルーズでは良く経験する光景だ。航路によっては運が良ければ鯨に出会う事もあるし、海鳥が魚を捕食するために海面に飛び込む様を見たり、ふだんの生活では見る事のできないものに出会うのもクルーズの楽しみといえよう。インド洋を航海中の今も、窓の外は天の川をバックに南十字星がくっきりと浮かび、私達は船から配られる今宵の星座図をもとに、デッキでいろいろな星を探している。


沈み行く夕陽の最後の輝きが、プラズマ現象で一瞬みどり色にかわる”グリーン・フラッシュ”もこの航海ですでに2度ほど見る事ができて感動したが、先日は海の上の竜巻を初めて見た。本船の左舷1マイルほどだろうか、一本の水柱が天空と海を繋ぐ神殿の円柱の様にゆっくり移動して行ったが、その竜巻の景色はなにか生きものの様でもあり、自然の神秘を大いに感じさせてくれるものだった。竜巻の下部では滝つぼのごとく海の水が巻き上げられて白く光り、あたり一面の海がにわかに白波を立てる様子は、まるで地の果てとでもいうもので、思わず映画やニュースのトルネード場面を思い出させてくれた。


こうして船で移動していくと、地球は海の部分が陸地より遥かに広く、この広大な大洋が生命の源であり、かつ地球の天候や環境の源である事がわかる。この海洋で原始の生命が発生して進化し、水は蒸発して雲になり、雨が降って陸地では森が出来、光合成が行われて動物や人間が生きてきた。こうした自然のサイクルに思いをいたすと、まさに海とは奇跡の様な存在で、我々はますます海洋汚染に注意し、この海を守っていかなかればならないと殊勝な考えが浮かんでくる。 加山雄三の「地球をセイリング」の歌詞ではないが、「母なる波の上」に人間の存在があるのだと、毎日海を眺めながら感じている。』

その日の写真 海上のツイスター
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2025年4月14日 (月)

飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第12日 アジアンデッキディナー

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植木等 後ろ姿

クルーズ第14日目、マラッカ海峡を抜けて船はインド洋の大海原を南西に向かって航行している。乗船して数日は船体の動揺やきしみ音で夜間に目覚めることもあったが、人間の体は環境に慣れるもので、インド洋の大きなウネリの中でも、このところ朝までぐっすり寝ていられるようになった。マラッカ海峡の出口から喜望峰までの直線上には、紅海・スエズ運河の治安がまだ完全ではないためか、以前より数多くの船舶が走っており、渡邊船長もこのコースは予想以上の船舶数だと語っていた。ただ飛鳥Ⅱは途中で食事や船内イベントのために揺れの少ない方位に進路を変えたり、赤道上の緯度00度付近を横走りしてくれたために、現在は周囲には船影もなく、一隻だけで次の寄港地レ・ユニオン島に向かって突き進んでいる。


主要クルーの紹介や、最初のフォーマルデイ、県人会など世界一周クルーズ恒例の出だしのイベントも終わり、シンガポールも過ぎて、船内には落ち着いた空気が流れている。300名弱の乗船者とあって、リドグリルの朝食ビュッフェはピーク時でも好きな場所に座れるし、毎朝の日本の新聞縮刷版を待つための順番待ちもない。露天風呂もいつも数名で贅沢に湯に浸かる日々である。競争が少ないのは融和の源泉なのか、廊下や階段、エレベータなどで見知らぬ同士が声を掛け合う場面も以前より多いようだ。とは云え優雅なクルーズ船も、実際は長さ200米、幅20米の面積、上下は数フロアーの空間とあって、ここは乗客とクルーによって構成される運命共同体である。何よりこのクルーズでは、全100日余のうちで上陸できる日が20日強、それ以外はどこにも行けない洋上生活だ。云わば合宿とも表現できる空間の中、クルーが趣向を凝らして催す各種船内イベントや、今日しか味わえない洋上の体験を存分に味わうのがクルーズを楽しむ極意である。


ということで、シンガポールを出て3日目(第12日目)の夜のアジアンデッキディナーは、自ら大いに盛り上がろうと、今回もいつもの昭和のオヤジのコスチュームに身を包むことにした。アジアンデッキディナーには 「 各国の民族衣装などをお持ちでしたら、是非お召し下さい」と船内紙にあるので、持参した麦わら帽にロイド眼鏡、口にはちょび髭、クレープの肌着に腹巻、足は雪駄、腹巻にはうちわといういで立ちだ。植木等スタイルこそ、日本の民族衣装である。飛鳥Ⅱでは永年デッキイベントの際にこの姿で出ていくことにしているのだが、初回から10数年経ってもこれを追従する乗客はいないし、幸いなことに船から禁止命令も出ない。本音はそろそろこんな格好から卒業したいところだが、古い船友から「またあれやる?期待しているよ」と励まされ、クルーからは「デッキディナーを盛り上げて下さい」とおだてられ、見知らぬ乗客から「一緒に写真を撮って」などと云われれば、オッチョコチョイの江戸っ子としては逃げるわけには行かない。『 臨済録 』曰く 『 随処に主となれば、立処皆な真なり 』( それぞれの置かれた立場で、それぞれのなすべき務めを果たせば、必ずその真価を発揮できる)

アジアンデッキディナー
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2025年4月10日 (木)

飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ 第9日 シンガポール フェーバーパーク

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クルーズ第9日目、最初の海外寄港地シンガポールに飛鳥Ⅱは寄港した。朝9時の入港直後は雨まじりの天気だったが、11時ごろ船外に出かける頃には雨も止み曇り空が周囲に広がっていた。南国特有の湿気はあるものの、真上から刺すように照りつける太陽もなく、曇天で寧ろ歩き易くて助かるコンディションである。歩くとは言っても、シンガポールはかつて仕事で数え切れぬほど来た場所だし、妻も若いころに出張で長期滞在しており、もう町の喧騒や観光名所を見たいとは思わない。とは云え、せっかくだからブラブラとどこかへ行こうかと考えていると、昨年も飛鳥Ⅱ世界一周クルーズに乗船した友人から、フェーバーパークの散策を勧められた。


フェーバーパーク(Mt.FABER PARK)は、飛鳥Ⅱが着岸したクルーズターミナルの背後に横たわる高さ100米~150米の丘陵で、近年、自然公園として整備された一帯である。昨日はターミナルに隣接する地下鉄ハーバーフロント駅前のハイウエイ高架下をくぐってまずはMarang Trailと云う遊歩道にとりついた。ここでは高度を稼ぐために最初の10分ほどは階段を上るのだが、傾斜も適度な上、ステップはきれいに舗装されており登るのに苦痛はまったく感じない。一歩丘陵に踏み入れれば、周囲はうっそうとおいしげる熱帯雨林で、木々のあちこちから日本では聞けぬ虫の音や鳥の鳴き声がする。汗をかきつつ緑に包まれた道を歩いていると、ここが昭南島と言われた大日本帝国時代は、こんな風景が広がっていたのかと想像が掻き立てられる。


セントーサ島からクルーズターミナルを経由してフェーバーパークにやってくるケーブルカー(ロープウエイ)の終点を過ぎ、ヒルトップウォークと呼ばれる稜線をたどる道は、どこも整備されており、途中にトイレや道路標識、自販機なども設置された格好の散歩コースになっていた。適度なアップダウンを繰り返しつつ途中のヘンダーソン・ウェイブと呼ばれる場所まで、道そのものはもっと先まで伸びるが、ここで引き返し往復で約6キロの森林浴を楽しむことができた。途中にはシンガポールに7頭あると云われるマーライオン像もあり、ところどころで周囲に広がるシンガポールの街や、夥しい船が集う港の景色を眺めながら、2時間弱歩いた快適なトレイルであった。


ただ最初、クルーズターミナルの入国審査場を出た所に設置された飛鳥Ⅱデスクで、この丘に行く旨を事前に告げると「ケーブルーカーを使って下さい」と詰めていた現地在住の日本人が強く勧める。いや「歩いて登りたいんです」と幾度か言い張ると、呆れたように「まあ道はありますけどね...」との返答だった。暑い国とあって向こうは親切でアドバイスをくれているのはよくわかるが、寄港地では体を動かしたい派の乗客もいる。船のすぐ脇から歩いて2~3時間の往復と云えば、船内で縮こまった体をほぐす恰好のエクササイズの機会だと思ったが、色々な要望を持つ人が乗船しているから、それに対応する現地の案内も大変だ。老若男女、体育系も文科系も乗船する中、皆の要望を一様に叶えるのも長期クルーズは至難の業だ。

ヘンダーソン・ウェイブ(Henderson Wave)と呼ばれる木橋
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稜線よりビルの向こうに飛鳥Ⅱを遠望
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2025年4月 7日 (月)

飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第8日 シンガポール入港を前に

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シンガポール入港を前に南の海でゆったりとした船内時間が流れている。3回乗ったこれまでの世界一周クルーズより今航海は穏やかな雰囲気を感ずるのだが、この余裕の空気はどこから来るのだろうか。乗船客が少ないために、食事のテーブルもシアターの席もいち早く確保する必要がないこともあるが、私自身が年齢を重ねて、ちょうど世界一周乗船客の平均年齢になったことも関係ありそうだ。初めて世界をぐるっと廻った2011年にはまだ50歳台の後半で妻は40歳代であった。今航海の乗船者の平均年齢は73.5歳だそうで、世界一周クルーズの乗船者平均年齢は毎回その辺りとあって、2011年当時は多くのシニア客の中で若造が場違いな場所に来てしまった感があった。今年はようやくほぼ乗船客の平均年齢に達したことから、肩身の狭い気持ちが払しょくされ、伸びやかな気持ちになっているのかと自己分析している。


ということで船内関係者から聞いたデータでは、この航海で最高齢は90歳代から10代までの乗船客がおり、その中で最も多い年齢層は我が70歳代、続いて80歳台、60歳代が続くと云う。男女比は男性が約40%で女性が約60%、全乗客のうち飛鳥Ⅱの初乗船者が約30%だそうだ。シングル(一人乗船)の乗船者が100名以上とのことだが、船内で早々に友人を見つけて、いたって賑やかなのが女性の一人乗船者陣である。一昨日もダイニングの我々の背後では、たまたまテーブルが並びだったご婦人2人がたいそう盛り上がっており、大きな笑い声が夕食中ずっと絶えなかった。帰り際、2人は「騒々しくて大変失礼しました。私たち今日初めてお会いしたんですが楽しくて...」と周囲に謝っているので、思わず「 いいえ、こちらも仲間に入れて欲しくなりました」とお返しした。シングル(と思われる)男性陣は総じて大人しく、対して友人を見つけてはひどく元気なのが女性客である。どこへ行っても女性は強い。


歳を重ねると時間の経過をより速く感じるものだとは思いつつ、それにしても船上では時間が経つのが早い。ネットの接続、ダンスレッスン、毎日のジョギングなど公私おりまぜて参加していると、あっという間に夜になっている。6日の晩はおまけにカラオケにまで参加してしまった。まあ酔って幾ら調子よく歌っても、帰りのタクシーやら酔客の息が臭い電車で家路につく必要がないのが船旅の良さである。船上で再開しようと目論んでいるゴルフレッスンは、初っ端なは予約が詰まっているため、参加者のほとぼりが醒め船上生活に飽きた頃から参加することにした。このあたり、先の長いロングクルーズならではの余裕である。航海の序盤、人間というのは赤の他人であっても僅かでも会話を交わせば、一瞬にしてお互い垣根も低くなるものだ。乗り合わせた船である。どうせなら他の多くの人と挨拶を交わし、気持ち良く船内生活を楽しみたいものである。

2025年4月 6日 (日)

飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第6日 一日25時間

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露天風呂より石垣島をのぞむ

 

飛鳥Ⅱはベトナム沖を順調に南下している。この航海では起き抜けの体を目覚めさせ、朝食を美味しくいただこうと、起床してすぐにデッキを2周ほど(900米弱)歩くことにした。朝陽を拝みながら「🎼朝だ、夜明けだ、潮(うしお)の息吹、うんと吸い込むあかがね色の胸に若さのみなぎる誇り、海の男だ艦隊勤務、月月火水木金金♭」などと口ずさみながら深呼吸をしてデッキを歩くのがとても気持ちよい。クルーズ船では食事やアクティビティに参加するだけで階段を昇り降りし、船内どこに行くにも長い通路を歩くため、思ったより一日に歩く距離が多くなるものだ。毎日のジョギングやダンス教室を除いても、歩数は軽く一万歩を超える日々で、のんべんだらりとしている普段の生活よりかなり活動していることになる。


こうしてデッキを歩いていると、外板がどこもきれいに錆打ちされており、新しい船かと見まごうばかりに船体が白いのに気づく。そういえばパームコートやリドのガラス廻りのパッキン、内装の化粧板もかなりの部分が新しく張り替えられており、船齢を感じさせない船の美しさである。プール周りもきれいになっているし、ところどころで船内が刷新されているのがわかる。これらを観察するにつけ、相当な費用をかけて本船が整美されていることがこちらにも伝わり、『飛鳥Ⅲ』が就航してもこの船が当分の間、現役で使用されることが予想できる。ミャンマー産の天然チーク材を張ったプロムナードデッキ、廊下や階段の手すりに多くの真鍮が施されているオーセンティックな内装など、贅沢な空間で日々を過ごしているが、そのすべてが程よくリノベートされて快適さが保たれていると感じる毎日だ。


船内のIT化に伴い、仕事の一部を持ち込んだことを先に記したが、便利な状況になるほど予想外なことも起こる。仕事の関係者と留守宅のケアを頼んだごく一部の親戚以外には、世界一周クルーズに出ていることを告げていないため、突如「 今週、新宿あたりで一杯やらない?」などと旧友からラインLINEメッセージも入って、都度「すまんが、いま海の上」などと釈明に追われることになる。IT化も功罪相半ばで、陸地との交信が便利になった一方で、日常に一挙に戻される連絡が来るのが現代のクルーズ風景なのだろう。さて昨日より船内は時刻改正で日本標準時より1時間バックし、4月4日は25時間あった。これから地球を西へ西へと移動するに連れ、一日の時間が長くなり、最後はその調整でカレンダーから消える日ができる。ジューヌ・ベルヌの小説『 八十日間世界一周』で示されたトリックの反対の現象が起きるのだが、これから一体どういう光景が我々を待ち受けているだろうか楽しみだ。

 

毎日歩いたりジョギングをするプロムナードデッキ
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2025年4月 4日 (金)

飛鳥Ⅱ2025年世界一周クルーズ開始

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4月1日、神戸港を出港

3月31日、桜咲く横浜港を出港、翌4月1日に神戸港で西日本の乗客が乗船して、103日間に亘る飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズが始まった。今日、本船は石垣島を右舷に見て、時速19ノットで南下、周囲の海の色も空の雲も徐々に南方特有のものになったきた。このクルーズの乗船客は横浜から約180名、神戸から約80名、計300名弱と少なく、そのため船内はどこへ行ってもゆったりムードが漂っている。2011年に初めて世界一周に出た折は、東北大地震の直後だったためキャンセル客が多く、乗船者が約400名と少なかったが、それにも増して今回は静かで、コロナ禍時代を思い出してしまうほどだ。


その為もあろうか、いつに増して、『 乗客の醸し出す雰囲気』が整然としており、エレベーターや廊下で他人に進路を譲り合う場面や、見知らぬ同士が会釈を交わす機会も多いようだ。ロングクルーズになると、その日の新聞の縮刷版(以前は読売新聞もあったが、今回は毎日新聞のみになっている)が数部バインダーに綴じられてパームコートやライブラリーに置かれ、午前中は多くの船客が殺到して順番待ち状態となるものだが、今回はいつも新聞が余っているのが助かる。何よりなのは、このクルーズでは、告知されていた夕食時のフォーシーズンダイニングだけでなく、リドグリルでも夕方5時以降はビール、ワイン、日本酒などがフリーなことで、我々にとってはまさにラグジュアリー船状態である。


ネット接続は無料で24時間使い放題(ただし3時間ごどに一旦切断される)とあって、リモートワークで簡単な仕事を船内に持ち込んでいるが、乗船前はうまく機能するかいささか心配であった。少しずつ業務を船上で開始してみたが、これまでのところ陸上より反応が若干遅いものの、メールの送受信など仕事を船内で遂行する上では満足のいく水準である。この調子なら船上でリモートワークをしましようと、現役世代に積極的にプロモートするクルーズ船が出現(飛鳥IIIはそのコンセプトもありそうだが)してもおかしくない時代なのかと感じる。ロングクルーズの嬉しいところは、乗船して数日たっても「ああ、早くも半分すぎてしまった」などと焦らなくて済む点にある。まだ航海は始まったばかり、徐々に船内のペースに合わせて、アクティビティの参加予定などを考えるクルーズ第4日目である。

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本邦最南端の有人島、波照間島。奥は西表島

2025年3月29日 (土)

2025 飛鳥Ⅱ 世界一周クルーズ 準備も大詰め

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乗船中のリモート業務の為に新たに購入したパソコン

今回の世界一周クルーズは103日である。クルーズに向けて準備をしていると、103日とはかなり長い期間であり、この間に期限が来る公的な手続きがとても多いことを実感する。まず最初に面食らったのが、下船後数日で期限が到来するクルマの車検で、これとクルーズの期間が重なったのは初めての経験だ。車検は有効期限の1か月前からしか検査を受け付けず、長期クルーズや海外旅行で国内にいないことが事前に分かっていても、前広に受験できない制度であることが今回分かった。一方で期限を1日でも過ぎれば、クルマは公道を一切走れず、検査のためにはレッカー車で指定場所まで移動させるしかない。いつも車検を受けているディーラーから陸運局に問い合わせをしたところ、もし旅行中に期限が切れそうならば友人にでも頼んで受けて下さいとのつれない返事が返って来た。我が愛車は不在の間にバッテリー上がりを防ぐために、義弟に時々エンジンをかけてもらうことにしているが、さすがに車検の手続きまでは彼に任せられない。よって下船したら真っ先に車を10キロ離れたディーラまで移動させねばならないことになった。車検をとるために必要なのが毎年5月に支払う自動車税の納付証明書で、これまた義母に支払いを依頼することにしている。周囲の協力なしには、103日間の遊びは完遂できないのである。


と思えば、先日は左目のまぶたの上にふとした違和感とかゆみを覚えた。鏡でよく見るとまぶたにブチっとごく小さな膨らみが出来て赤くなっている。痛みもないし大したことも無かろうと思ったが、普段なら無視するか、時の経過に任せるようなごく小さな症状も、もし航海中に何かあったらと考え、近所の眼科医に見てもらうことにした。船医は乗船していても眼科出身の医者は今まで見たこともないので心配と云えば心配である。眼科特有の精密な器具で目を見てくれた女医は「顔をあまりきれいに洗ってないと、こういう小さな出来物ができますね、軟膏を出しますから顔を良く洗って下さい」と、その朝に顔を洗うのを忘れたこちらを諭すようにニヤッと診察の結果を告げてくれた。このように日常生活を続けておれば何という事もない事柄も、100日先を見越して準備や対応せねばならないのが長期クルーズ乗船前である。そう云えば日ごろ「年齢の割に寝かせておけばいつまでも寝ている」と妻に感心される私も、この一週間ほどは朝7時頃にバチッと目が覚め、今日はこれこれをどうしても準備しなければと一瞬にして覚醒する日々である。会社に行かなくなってからは便秘気味だった便通も、最近は毎朝快調に出ていることからすると、きっとサラリーマン時代の朝と同様、あれこれの準備で交感神経が優位に立っているのではなかろうか。

 

以前の世界一周クルーズの際には感じなかったほど、なぜこんなにバタバタと気ぜわしいのだろうか。一つは当時は昼間は会社に行っており、妻が家で一人で奮闘していても我関せずでいられたことだろう。二番目はテレワークで引き受けている現在の仕事を乗船中もこなすためのセットアップに手間暇がかかることである。船のWi-Fi環境が格段に向上したことによる恩恵だが、わが家のテクニカルスタッフ(本人はCIO;CHIEF INFORMATION OFFICERと呼べと言っている…)である妻のご機嫌を取る時間も益々増えている。その他、加齢に伴いすべてが絶好調という具合にいかなくなったと云う身体的な面もある。ジョギングで痛めた膝は一年経っても完治せず、だましだまし走っている毎日だし、歯医者には2~3カ月おきに定期的に検査とクリーニングに通っていても、なんとなく気になる歯もある。そう思うと、やはり旅行やクルーズは行ける時には躊躇なく実行すべし、後になればなるほどさまざま障害が増えると云うことになる。もしもの時の海外旅行保険に関しては、旅行社が薦める保険商品は100日強の旅で一人あたり30数万円(70歳以上)と、年齢割り増しを考えても以前の数倍になる法外な値段で驚く。洋上では何があるか分からないし、クレジットカード付帯の保険は90日までなので、是非別途海外旅行保険をかけて下さいと船側や旅行社は云うので、大手損保以外の割安な海外旅行保険を探したりとなかなか手間もかかり骨の折れる乗船前の準備である。そう云えば参議院議員選挙が今夏に予定されている。国政選挙には必ず投票に行ってきたが、今回は欠席になってしまうとすれば残念だ。

 

デッキディナーに備えコスチュームもパッキング
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2025年3月24日 (月)

飛鳥Ⅱ A-styleクルーズ~春彩~ 乗船 (クルーズは人と人を繋ぐ)

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マッシー村上の講演

この週末、3月21日(金)~23日(日)の2泊3日で『飛鳥Ⅱ A-styleクルーズ~ 春彩(はるいろ)~に乗船してきた。2011年の飛鳥Ⅱの世界一周クルーズに乗船した、船友(せんゆう)計11名での記念乗船である。来週から世界一周クルーズに出かけようと云うのに、直前でのショートクルーズ乗船となったのだが、実は昨春から皆で一緒に飛鳥Ⅱに乗ろうと乗船計画を練り始めたところ、それぞれのスケジュール調整やら満船で予約が取れずなどの事情が重なって、この時期になったものである。考えてみれば年齢もバックグラウンドも全く異なる家族が、長期クルーズにたまたま乗り合わせて親しくなり、以後10数年経っても年に数回集まって、ワイワイガヤガヤと好きな事を喋れるとは何と幸せなことであろうか。もっとも2011年下船直後の会合には20名ほどが参加していたのだが、病気や亡くなった方、遠くに引っ越したり、何となく疎遠になったメンバーもあって今では常時集まるのが11人となってしまった。それだけにこの繋がりを大事にしたいと思っており、世界一周の前と云えども万難を排して春彩クルーズに参加することにした。


A-style クルーズ~春彩~は横浜発着の無寄港クルーズで、霞町にある「リストランテ アルポルト」の片岡護オーナーシェフのイタリアンや、歌手・俳優の別所哲也氏のショー、日本人初の米国メジャーリーグ投手である村上 雅則氏(マッシー村上)の講演などをゆっくりと楽しむ趣向になっていた。最近の飛鳥Ⅱのショートクルーズは満船続きの絶好調の模様で、今回もなんと780人が乗船、そのうち7割が初乗船だそうで、まことにご同慶の至りだと云える。来週からの世界一周クルーズは乗船者が少ないから、ここでウンと稼いで頂戴ね、などと勝手に思いを抱きながら横浜港で舷門をくぐっての乗船である。一歩足を踏み入れれば船内はいつもと変わらぬ雰囲気だが、今夏に就航する”飛鳥Ⅲ”に移るクルーは、すでに別途違うローテーションに入っているそうで、特にサービスクルーは若手が大幅に増えて見知らぬ顔が多いことに気付く。ダイニングでは頼んだ酒を待たされたケースもあったが、超満船の割には若手といえどもうまく乗客の注文をさばいており、イライラすることが少ないのはさすが飛鳥Ⅱクオリティーである。これなら世界一周もあまりストレスを感じずに過ごせると期待できそうだ。


実は当ブログサイトは、管理者側が海外からのコメントをはじく設定としているのはわかっていたのだが、船上からの衛星通信システムであるスターリンクを経由して、記事そのものを投稿することもなかなかうまくいかなかった。他方で現在もまだ細々とリモートで続けている仕事についても、船上でEXCEL表を更新しメールでやりとりをしなければならなくなりそうだ。世界一周のパッキングに忙殺される中ではあるが、直前での乗船は、図らずもこれら船上でのネット環境を色々と試すためにはちょうど良い機会にもなった。100日余の海外クルーズ中に折々ブログを新たにしたり、業務のデータを送受信するために、わが家の”テクニカルスタッフ”である妻は、この航海中に試行錯誤を繰り返した結果、ブログ投稿に関しては何とか隘路を突破できそうで、これが分かったのは収穫である。メール送受信に関しても今まで同様に特に問題はなかったが、万が一エラーとなった場合にはWebメールで代替出来るだろうとのことで、航海中に妻への船内接待費用(毎月1回海彦のしゃぶしゃぶを要求されている)が増えそうだ。なお、ブログへコメントをいただいた場合は、残念ながら即時の返信は難しそうである。


この春彩クルーズでは、一緒に乗船した船友の他に、何人かからの若い乗客の方々から「 ブログや妻のX(旧ツイッター)を見ています」とお声掛けを頂いた。今回はさらに海難事故などこれまでアップした記事へのお褒めの言葉を貰って恐縮し、評価を頂けるならもっと真面目に勉強しキーを叩かねばと決意を新たにするところである。鉄道関連の記事に興味を寄せて下さる読者にもお声を頂戴し、その方面でも多くの人と情報を共有できるのだと意を強くしている。妻の2011年の世界一周クルーズの準備編では、「荷造りやいろいろな準備に役立ちました」と何人かの女性からかつてコメントを頂いたこともある。私も妻もまったく思いつくまま、好き勝手に書き散らしているのに、「愉しみにしています、参考になります」などと言われるとは望外の歓びである。ブログやXが人と人を繋ぐ足がかりとなり、世代や立場を超えて交流するきっかけになるのなら、ウンウン唸りながら下手な文章を絞りだす作業も楽しくなると云うものだ。拙ブログを通じて新たな出会いが実現すると思うと、世界一周中クルーズ中も楽しい事や船内あれこれを綴って、記録してみようと思っている今日である。

 

霞町「リストランテ アルポルト」片岡シェフの鮪カルパッチョ
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2025年3月22日 (土)

船内環境からテスト投稿

Starlinkからだとどうしても投稿した記事が読めなくて苦労している件。

記事入力までたどり着くことは出来たのは一歩前進@もうすぐ相模湾

右の神子元島を堪能しようとしたら、作業に夢中で気が付いた時にははるか後方へ。

残念 by テクニカルスタッフ

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