飛鳥Ⅱ 2025年世界一周クルーズ第19日 レユニオン島
クルーズ第19日目、飛鳥Ⅱは仏領(県)レユニオン島のル・ポールに入港した。レユニオンはマダガスカルから東に800キロ、モーリシャスから西に175キロの洋上にある火山島で、神奈川県ほどの面積の島に85万人が住む(ウイキペディア)。入港時にレユニオンを遠望したところ、ちょうどハワイのカウアイ島やタヒチのモーレア島のような火山島独特の切り立った山容を背後に、海岸に向かう斜面にコロニアル風の住居が立ち並び、南洋の植物が生い茂る緑ゆたかな島であった。ル・ポールの港から県庁のあるサンドニの街まで、片道2~3車線の立派な自動車専用道路は、途中の部分が、海の中に立つ橋脚の上に施設されていた。ここはもともと海食崖の下を通っていた高速道路が1980年のサイクロンで被害を受け、新たに海上に付け替えられたもので、自然保護の観点から様々な制約が課せられたため、キロ当たりの建設費用は世界で一番高いものになったと云う(レユニオン公式サイト)。シャトルバスでこの海上の道を通って約20分、この日は自由行動でサンドニでの半日の市内観光を楽しんだ。
上陸に当たって飛鳥Ⅱでは、蚊の感染症例(デング熱)があるので、長袖・長ズボン着用の上、虫よけスプレーをして下さいと呼びかけていたが、入港直後、港付近を歩く現地の人たちを見れば半袖・バミューダパンツが多く、どう見ても船の薦める服装は当地では異様に思えてならない。南国の日差しの中、暑苦しそうな長袖・長ズボンに身を包み、ましてや一部にはマスクまでした集団がぞろぞろと街中を歩くのは、まことに奇異で人目をひきそうだ。なにごとも超安全策の飛鳥Ⅱゆえ、このような注意をしているのだろうが、衛生的に問題なさそうな港の周辺を一目見れば、例えて云えばマニラで半ズボンにポロシャツでゴルフをする方が、蚊に刺される恐れがよほど高そうだ。郷に入れば郷に従えと云うから、シャトルバスに乗車する際の他の乗客の冷ややかな視線を横目に、自己責任で行動すれば良いと、短パンにポロシャツでサンドニの街に出かけることにした。
初めての地を訪れた際にまず気になるのは、その地の文化である。横断歩道の脇に立てば、歩行者優先で目の前でクルマがサッと止まるのか、はたまた強い者が勝ちとばかり歩行者を無視するかで、文化の優劣は大体わかる。以前、出張でシンガポールを訪れ、その帰路に香港に立ち寄った際、罰金刑が厳しいために歩行者優先だったシンガポールのような感覚で、香港の横断歩道を渡ろうと足を踏み出したところ、クルマがスピードも落とさず目の前を通り過ぎ、肝を冷やしたことがあった。シンガポールと香港、同じ中華系、同じような街のたたずまいでも、中華思想と中国文化がより濃厚な香港では交通道徳は大きく劣っていたのが分かった。その点、サンドニ市街では、完全に歩行者優先のルールが守られており、ここがヨーロッパの出先で、フランスの一つの県であることをまずは実感した。
サンドニの中心部、ラジソンホテルに設けられた飛鳥デスクで薦められた方角に向かって踏み出せば、街路や古くから立ち並ぶ邸宅はフランス風で、混血のクレオールや西欧人がゆったりと道を歩いていた。中心となるヴイクトワール&パリ通りの突き当りにあったエタ公園でしばし休憩をとっていると、色々な人種の子供たちの遠足(校外学習?)が何組も目の前を通り過ぎ、先進国の中でもフランスの出生率が高い現状を垣間見たような気がした。この地は第1次世界大戦のフランス軍の英雄パイロットだったローランギャロス生誕の地でもあった。天気は快晴、そよ吹く海からの風も気持ち良く 「 天国に一番近い島」と云われた同じ仏領のニューカレドニアより、こちらの方が天国に近いのではないかと思わせるレユニオンである。そうこうするうちに、昼休みの時間になると店々のシャッターは降り、レストランの軒先では人々がワインなど片手に食事を始めている。紛れもなくここはフランスそのものであった。
最近のコメント