山陽電鉄最新の6000系 阪神梅田行 直通特急(高砂駅)
5000系梅田行 直通特急の車内、金曜日午後とは云え閑散としているのが気懸り
妻が年内最後の大阪出張となり、ここのところ「ワシ」族(妻が行くところにワシもワシもとついて行く定年退職ジジイ)気味の私は、彼女の仕事が終わる頃を見越して関西に向かった。先月出張の際は京都で合流したが、今回はまず一人姫路まで新幹線で行って、山陽電鉄で妻の待つ大阪難波に戻ることに決めた。合流した翌日の帰京コースについては、名古屋まで近鉄の新型特急「ひのとり」に乗車するという趣向で、先月に続き「関西鉄道の旅」第2弾である。まずは予てより乗りたいと思っていた山陽電鉄だが、これはJR線や新幹線が並走する大阪~神戸~姫路間において、わざわざ乗ろうとしない限り乗車の機会がない路線である。時間がかなり自由になる身になった今だからこそ、ちょっと気になっていた交通機関をあえて利用する旅が出来るというものだ。
昭和30年代後半、父の転勤で神戸市東部の灘区に住んだことがあったが、当時の鉄道少年の関心と云えば、やはり阪神電鉄 VS 阪急電鉄であった。大阪・神戸間の山側に路線を持ち、駅間も長く高速運転をする阪急電車に対し、海側の商工業地帯を走り抜け、駅数も多いが、高加速・高減速でこまねずみのような運転で走るのが阪神電車で、この両社の競争は当時大いに気になったものだ。一方で神戸の西部から明石や姫路へ向かう山陽電車は、その頃は路面を走る区間もあり、17米の旧型車両や国鉄の払い下げ車両も多く、コトコトと田舎へ向かう中くらいの規模の鉄道という印象であった。その山陽電車が1968年(昭和43年)第三種事業者である神戸高速鉄道の開業によって、阪急や阪神とレールが繋がった。かつては2~4両でのんびり走っていた郊外電車が、阪急・阪神と云う大手私鉄に乗り入れることによってどう変わったのか、その後の発展が気になっての山陽電鉄である。
とは云うものの山陽と阪急電鉄との相互乗り入れは、1984年(昭和59年)に阪急六甲駅で起きた事故によりその後は中止になっている。当時、阪急・阪神に乗り入れる山陽鉄道の車両は乗務員もそのまま乗り入れ先まで乗務しており、ダイヤを勘違いした山陽の運転士が、阪急六甲駅で出発赤信号を無視、側線から本線に乗り入れたところに、本線を走ってきた後続の阪急梅田行き特急列車が突っ込んだ事故であった。以来、山陽は阪神電鉄のみと直通運転を実施しており、現在は阪神梅田駅から高速神戸駅までの33.6キロと高速神戸から山陽姫路駅まで58.2キロ、計91.8キロを阪神・山陽の相互乗り入れ6両編成の直通特急が十数分おきに運転されている(いまは阪神車、山陽車に関わらず高速神戸で乗務員はすべて交代)。今回はその山陽姫路から阪神梅田まで、気の趣くままに乗り降りをして山陽電鉄のあれこれを味わってみることにした。
ということで、例によって「大人の休日倶楽部」の3割引切符を使い、新幹線「ひかり」で姫路城の威容が見渡せる姫路駅にやってきた。山陽電鉄の姫路駅はJR姫路駅の真向かいにあって乗り換えもごく便利である。もっとも大阪方面から新幹線でやって来たのに、ここで何もせず直ちに折り返し、山陽電車で大阪に戻るなどという酔狂な客はまずいないだろう。始発の姫路駅からは阪神乗り入れ梅田行き直通特急の5000系クロスシート車に乗車。金曜日の午後とあって乗車する人は少なく車内は空席も目立つ。例によってかぶりつきで10分ほど前面展望を楽しむうち、大塩駅で待ち合わせた各停の神戸新開地行きが、懐かしの3000系車両であるのを見てこちらに乗り換えることにした。そう云えば、3000系は1964年から配備された山陽の顔とも云うべき車両で、その頃に全国で配置された国鉄の東海型や165系電車などと前面形状が瓜二つだった。国鉄と私鉄なのに車両のデザインがそっくりなのが気になって、手慰みに下の絵を描いたことからすると当時は相当3000系が気になっていたことが分かるが、50年以上経ってその車両に乗車しているのに気が付いて嬉しくなった。
各駅停車の旅をしばし楽しみ、この日は再び高砂駅で後続の6000系直通特急に乗車して終点の大阪梅田に向かう。最高110キロで疾駆する山陽電車の路線条件は播州平野では良好で、標準軌1435ミリにロングレールの路盤もしっかり整備されており、乗り心地はすこぶる快適。6両編成の直通特急に乗っていると、「私鉄に乗るならやはり関西だ」と思うと共に、通勤対策や過密運転に追われる関東の私鉄に同情したくなる。もっとも神戸近くになっても、車内に立つ客もない山陽電鉄は、ゆったりと乗る分には良いが経営は楽ではないそうだ。原因は日本製鉄広畑製鉄所の高炉廃止など地域産業の伸び悩み、沿線のモータリーゼーションに加え、なにより速達性重視のJR新快速の攻勢で山陽は守勢にまわっているらしい。昔から気になっていた山陽電車である。スピードはJRに敵わぬとも、阪神電鉄とこれだけ相互乗り入れをしているのだから、その先に線路が繋がる近鉄奈良線に乗り入れ、姫路城と奈良という2大世界遺産を直接結ぶ新型観光電車でも走らせ売り上げ促進を図ったらどうだろうか。この列車、山陽電鉄の須磨浦公園で一休みを置くのも一興。山陽/阪神/近鉄を結ぶ特別列車が出来たら絶対に乗ってみたいと一鉄道ファンとして勝手な夢を描いている。(続く)
高校生の頃に暇まかせに書いたイラスト
左画)当時、阪神車両と阪急車両が神戸高速鉄道を介して山陽鉄道内で同じ線路を走っていた。左線(上り)の阪急列車/右線(下り)の阪神列車のライバル同士が(旧)山陽西代駅で顔合わせする様子
右画)方向幕と前照灯の位置こそ違うがデザインがそっくりな国鉄165系と山陽3000系
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