カテゴリー「船・船旅」の記事

2023年1月20日 (金)

嗚呼!飛鳥Ⅱ2023年オセアニアグランドクルーズ運航中止

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1週間前、飛鳥Ⅱの運航会社である郵船クルーズ株式会社から「飛鳥Ⅱ 2023年オセアニアグランドクルーズに関するご案内」とする手紙を受け取った時から、悪い予感はしていた。東京港を出て39泊、オーストラリアやニュージーランド、ニューカレドニアを巡る飛鳥Ⅱ 2023年オセアニアグランドクルーズの出港が2月10日に迫ってきた矢先である。ウイルス騒ぎで海外クルーズが催されなくなって3年、2度も延期を重ねた飛鳥Ⅱオセアニアグランドクルーズだが、現地のオプショナルツアーの参加コンファーメーションも受け取り、すでに気持ちの半分は真夏の南半球にあった。その手紙は、昨年末に再び起った電気関係機器の不具合で、「本船の速力を制限しての運航とする必要がある状態が現在まで継続」している事を告げ、新春のドックで修復を試みているが、「仮に速力の回復が見込めない場合には、本オセアニアグランドクルーズのスケジュールが変更になる、もしくは予定した日程の維持が困難になる可能性」があることが書かれていた。


ディーゼルエレクトリック推進という、いまやさして珍しくない動力方式なのに、度重なる重大な不具合とは一体何が起こっているのか疑問が湧きおこるが、素人の部外者が何を考えてもしょうがない。手紙の字句を文言通り読んで、スケジュール変更やら日程の調整ですむと考えるか、ひょっとすると更なる措置に対するショック緩和療法として、取り合えずダメジを小出しにしたジャブの手紙なのか訝しく思ったが、「本件に関する次回のご案内は1月20日頃を予定」とのことで、クルーズの準備を始めつつ「次回のご案内」を待っていたところである。すでに仕事の上ではクルーズで不在の期間に業務を引き受けてくれる代理人の設定をすませ彼への報酬も合意、確定申告の時期ゆえ証憑の収集を早めて税理士にも相談、病院の予約はクルーズの時期に重ならないように調整するなど準備を進めていた。しばらくお休みしていた社交ダンスレッスンも新年になって再開したばかりである。私には珍しく着々と準備を進めたのも、この3年間、鎖国状態で海外クルーズへ出られなかった反動だと云えよう。


という宙ぶらりんの状態の中、ついに昨1月19日に郵船クルーズから「飛鳥Ⅱ 2023年オセアニアグランドクルーズ運航中止のお知らせ」が発表された。それによると推進システムの不具合については「現時点では完全な原因特定には至っていないこと」「また定期点検中には、速力回復の確証が得られないこと」が判明し、「お客様の安全を確保した上で長期の海外クルーズを催行することは出来ないとの判断に至り、大変残念ながら『2023年 オセアニアグランドクルーズ』につきましては、運航中止を決定」したとのことである。やはり先の書簡は、ショック緩和の為のプレ・ノーティスだったのかと改めて合点がいく思いだ。我が家は寄港地のVISA申請はこれから、また海外旅行者障害保険付保もまだ検討中であったし、仕事の代理人は話がつくであろうから金銭面のダメジはあまりないだろう。だがここ数ヶ月間楽しみにしていたイベントが消滅してしまい、心にポッカリと穴があいてしまった昨日~今日である。返金された旅行代金で春から夏にかけて、ウンと贅沢な国内旅行に行くか、ヨーロッパのリバークルーズに乗船するかと、空いた穴を埋めるべくいろいろ代替案を考え始めねばならない気分だ。


≪参考≫「飛鳥Ⅱ 電気系統の不具合・原因(2022年4月12日)」

2023年1月11日 (水)

飛鳥クルーズの新造船(A3)トークショー

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2025年就航予定と発表された飛鳥クルーズの新造船がどんな船になるのか、クルーズファン、飛鳥ファンは大いに気になり色々と知りたいところだ。その期待に応えるべく、昨年末のアスカクラブクルーズNEXTの2日目に、「新造客船への想い」と銘打ったトークショーが飛鳥Ⅱのギャラクシーラウンジで開かれた。トークショーは雑誌「クルーズトラベラー」編集長の茂木政次氏の司会で、飛鳥クルーズ新造船準備室の女性リーダー、新造船の建造監督、それに飛鳥Ⅱの小川ホテルマネジャーの4名によって約50分間に亘って催された。アスカクラブクルーズNEXTはリピーターばかりの乗船、かつこの日は終日航海日とあってギャラクシーラウンジは結構な入りで、乗客の新しいクルーズ船に対する関心の高さがうかがえるトークショーであった。


まずこのプロジェクトは社内ではA3(エースリー)と呼ばれていることが紹介されたが、これからすると新造船は飛鳥Ⅲと命名させる可能性が高いのでは、と勘ぐりたくなった。建造工程はドイツのマイヤー造船所で2023年9月に船の起工式にあたるスティールカットが執り行われ、2024年1月~2月にキール・レイイング(本船の背骨に当たる竜骨の施設式)、2025年1月に造船所に面するエムス川への進水式、3月にエムス川から北海への川下り、4月にデリバリー(引き渡し)が予定されているとの説明がプロジェクトリーダーよりなされた。引き渡しにあわせて日本からの新造客船見学ツアーも計画しているというから楽しみである。引き渡し後の日本までの回航に一般乗客が乗れるのだろうか発表が待たれるところだが、新造船の就航ツアーで乗船すると、まだ技師も多数乗船していたり、船内の不具合があちこち見つかったりするのでそれなりの覚悟は必要かもしれない。そういえば私たちは2015年に長崎で引き渡しがあったアイーダクルーズの新造船に、ドイツまでの処女航海 兼 回航に乗船したいとアイーダクルーズ本社に直接メールしたことがあった。この時は「日本人用には用意がない」と丁重に断りの返事が来てがっかりした経験もある。さてA3ではどうなるだろうか?


トークショーでは建造予定のA3と現飛鳥Ⅱのスペックが比較紹介された。飛鳥Ⅱの長く伸びた美しいクリッパーバウ(船首)はA3では見られなくなるものの、今度はダック・テイルと云って船尾が長く伸びる船型を採用するとのことである。このダックテイルによりプロペラ効率が上がり、船の直進性能が高まるとの説明が監督からなされた。またA3は船体から水中に垂らした小さな容器内のモーターでプロペラを廻すポッドで推進するため、回頭性能が向上し狭い水路や港内での操船が容易になる。これに併せ船体が定位置に留まることが出来るDPS (DINAMIC POSITION SYSTEM) を採用し、錨を下さずとも定点に停泊できる船になるので、海底環境に対してもやさしいといま風の説明が誇らしげであった。デザイン的にはA3のファンネルが前後方向に大きくなっているのは、6台の発電用エンジンが、3台づつオモテ(船首)側とトモ(船尾)側にセパレートして配置される事によるものだそうだ。これとは別にハウス前部のデッキ上にはLNG用の小さなファンネルが設けられ、LNGを燃料にして推進する際はここから排気するというから面白い。


新造船準備室のリーダーからは、船室は9カテゴリーに分かれ、全キャビンがバルコニー付きであること、一人乗船客のためのシングルルームを設置することなどの説明があった。最前部には「船長目線で楽しむクルーズ」のキャビン、最後部には「航跡堪能!」キャビンが設けられると彼女は説明する。ただ以前アメリカでサファイアプリンセス乗船時に最前部スイートに、またゴールデンプリンセスで船尾スイートに乗船した経験があるが、最前部の進行方向を展望するバルコニーは容赦ない強風に始終悩まされたし、最後部バルコニーも船の速度(エンジンの回転数)によって乗り心地がひどく悪かった経験がある。A3が就航時にこの辺りの難問に対してどのような工夫をこらすのか気になるところだ。A3にはその他にマルチ・コートとする多目的広場ができて、飛鳥クルーズ伝統のイカ跳ばし大会が再開できるようになるのはちょっと嬉しいトピックである。また風呂やプールがハウスの前部に配置される予定とのことで、最もピッチングの影響を受けやすい船の前方で水の揺れをどうコントロールするのか今後の詳細発表が待ち遠しい。

シングルルームのキャビン
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新造客船のドック見学ツアー(ドイツ)検討中
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2022年12月29日 (木)

アスカクラブクルーズNEXT乗船とニューイヤークルーズ瀬戸内航路中止

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年末のアスカクラブクルーズNEXTに乗船した。飛鳥Ⅱに乗船した人たちで作るリピーターズクラブとその同行者限定の今回のクルーズは横浜発着で無寄港の2泊3日である。NEXTとは飛鳥クルーズの未来を模索する意味を込めて命名したそうで、2018年1月のNEXTクルーズは(下記リンク)は「大人の雰囲気、ワイン、ネット予約」などがキーワードだったが、今回はフォーマルナイトのほか「新造客船への想い」として2025年に竣工する新しいクルーズ船についての船内トークショーが目玉企画となっている。暮れも押し迫った時期とは云え、このクルーズは料金が少し安めな設定の上に、アスカクラブの泊数割引券や「乗るトクキャンペーン」特別割引券を同時に使えるので、最近の飛鳥Ⅱにしてはかなり穏当な値段となったのが乗船の理由である。2018年1月29日アスカクラブクルーズNEXT 

 

今回はリピーター限定とあって知っている顔に多数出会ったが、そのほか冬休みシーズンで子供連れの家族や、祖父母に連れられた子供も多く心和む船内光景だった。終日航海日の2日目は天気晴朗で波も穏やか、午前中は駿河湾で富士山の絶景に目を見張り、午後は相模湾で湘南海岸や江の島を遠望しつつドリフト航海を続ける飛鳥Ⅱのゆったりクルーズを楽しんだ。特に本船の露天風呂から見る富士山は、青空をバックに聳え立ち、どんな名人の描いた風呂屋の書割も到底及ばぬ本当のホンモノ!。穏やかな風を頬に感じながら湯に浸かって富士山を眺めていると、この一年の疲れが吹き飛ぶようだ。そのほか武漢ウイルス発生以来、長らく中止になっていたダンス教室がやっと午前・午後と2回開かれるようになったのは特筆すべきことと云える。本年年内はまだ組んで踊ることはできないとの(日本船の?)申し合わせがあるようで、初心者用のマンボとブルースの足型などを男女分かれて練習したが、ダンス教室再開はまことに喜ばしいニュースである。


このクルーズの乗船客は約350名ほどで、そのうち約50名が次の「ニューイヤークルーズ瀬戸内航路」の連続乗船と云うのが、ヘビーリピーターの多い飛鳥Ⅱらしい。ただ舷門をくぐって以来、アスカクラブクルーズなのに中村大輔アスカクラブ会長の挨拶はおろか、彼の姿がまったく見えないことは変だと思っていた。レセプションで尋ねると「中村会長は体調不良で乗船できなかった」とのことで、ヘビーリピーターたちは「多分コロナね」と察していたようだ。翌日は朝は元気で会話をしていたクルーが夕方には顔を見せないこともあって、何かが起こっているかもしれない事をうすうす感じさせる船内であった。そういえば乗船前のPCR検査でも、何組かのカップルに陽性反応があったらしく、荷物を持ってひそかに検査結果待ちの待合室から入口の方へ出ていく乗客の姿を見ることもあった。


さて横浜港で無事下船したのち、我々はこのクルーズの乗船で貰った地域支援の「いざ神奈川」クーポン(一人6,000円分)を費消するために、大さん橋や近所の売店で何か適当なものを物色することにしていた。しかし例によって買い物となると妻はあちこち行ったり来たりの上、年末ですでに閉まった店やら、クーポンの使えない店もあってあまりに時間がかかるため、私はクルマを駐めている大さん橋に一人引き返して妻を待つことに。さっき下船した大さん橋に戻ると、ちょうど次の「ニューイヤークルーズ瀬戸内航路」に乗船する客が荷物を手に次々にバスやタクシーを降りて集まり始めていた。なにしろ武漢ウイルス騒ぎ以降、乗船前に必須となったPCR検査が1時間半以上かかるため、集合時間はぐっと早くなっている。が、この時なにやら入口すぐ近くの乗船受付近辺はただならぬ気配になっていた。


近寄ってみると、郵船クルーズの係員たちが「クルーの定期検査で多くの陽性者が見つかったため、次のニューイヤークルーズは中止になりました」と平身低頭で謝っている。船内で感じた違和感はこれだったのかとすぐに合点がいったが、それにしても笑顔で手を振って船内に残った連続乗船の人たちもここで降ろされてしまうのかと思うとなんとも気の毒でならない。年末年始を本船で過ごす予定で横浜にやって来た乗船客は、7泊のクルーズに備え家の冷蔵庫も空にしてきたに違いないから、これから急遽スーパーに買い出しに急ぐのだろうか。ニューイヤークルーズは予約が多いと聞いたので、本船はお節料理の準備のために普段使わない食材も大量に積み込んだ筈だ。我々にとっては年内最後の楽しいクルーズだったが、次の乗船者や関係者に深く同情しつつ、こんな騒ぎは今年限りにして欲しいと願いながら帰路についた。

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2022年12月25日 (日)

飛鳥Ⅱ 2023年 世界一周クルーズ中止 2024年世界一周発表

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アムステルダムの飛鳥Ⅱ 2018年5月世界一周クルーズにて

飛鳥Ⅱ2023年世界一周クルーズの中止が発表された。飛鳥Ⅱを運航する郵船クルーズ社は、感染症対策で「一部寄港地への寄港が困難」「クルーズの円滑な実施」や「期待にこたえる水準でのサービスの提供が極めて困難」なうえ、「目下の不安定な世界情勢」を鑑みて中止の止む無きに至ったとしている。来春のワールドクルーズが中止になるであろうことは、すでに旅行社からだけでなく飛鳥Ⅱ船内でも非公式に聞いていたし、昨今の諸情勢を見れば仕方のないことだとは思うが、この決定でもともと2020年に予定されていたワールドクルーズは、4回連続で催行されないこととなってしまった。私達も早くから2020年世界一周の予約をして料金も支払っていたのだが、中止のたびに発表される次年度のワールドクルーズに料金を振り替えることをこれまで3回経験してきた。今回も例によって中止発表と同時に、新たに2024年のワールドクルーズ(99泊)が発表されたがさてどうするか。


4度目の正直、2024年のワールドクルーズに振り替えるかと新料金表を見て、まずはその高騰ぶりに驚いた。最後に乗船した2018年にはDバルコニーキャビンがフルクルーズ早期全額支払割引で525万円(以下同様の割引料金)で一泊当たり54,700円であったが、中止になった2020年は637万5000円で一泊62,500円と上がっていた。2021~2023年は700万円で一泊当たりは66,000円~68,000円(単価が異なるのは年によって泊数が異なるため)であった。今回発表された料金はフルクルーズが850万円、一泊あたりは一挙に2万円近く上がった85,900円である。早期全額支払い割引でないDバルコニーキャビンの正規料金となると一人1,010万円と発表されたから夫婦でなんと2,000万円超である。その上に燃料サーチャージ(数万円か?)を追加で支払えとのことであまりの負担増に料金表を読む我が目を疑うほどだ。たしかに船舶燃料のC重油は低硫黄のものしか使用できなくなり総じて強気な動向だし、船員費も感染症下で大幅にアップ、世界的なインフレで各地の港費も上昇していることであろう。なにより船が費用として支払うのはドル建てが多いのに、乗船客から受け取る料金は円だから最近の円安で目減りしてしまっていることはよく分かる。しかし2020年から4年も待たされた挙句にこの料金はあんまりじゃないか。


新規発表された2024年の寄港地は一見2022年のそれとよく似ているが、その時の目玉であったアカバ(ヨルダン)がなく、2023年に寄港予定だったミコノスや北欧のフィヨルドにも行かず、もう一度訪問したいと思っていたレイキャビク(アイスランド)にも寄港しない。楽しみなヨーロッパ各国の寄港地数がとても少ないし、その他の地域もこれまで飛鳥Ⅱで訪れた定番の地が多いため、我々にとって旅程はそれほど魅力的に感じられない。飛鳥クルーズではこのクルーズからあと1年経って2025年になれば新造船が出来るし、商船三井客船も2027年に35000トンの新しい客船が就航する。ここまで待たされたのだから、どうせこの高い値段を払うならそれら新造船を待つというのも悪い選択肢ではない気がしてきた。今回、振り替えずにキャンセルして払い戻される料金を使って、念願の欧州リバークルーズに行こうか、外国船に何度も乗船して楽しむか、はたまた10年以上乗っているクルマを高齢者向け安全運転サポート車に乗り換えるか、などと代替案をぼんやり考える週末である。飛鳥Ⅱは「普通のサラリーマンだった人たち」が定年後のご褒美として楽しめる値段でなくなってしまったようだ。

2022年12月 3日 (土)

カハラホテルと商船三井の新造クルーズ船発表

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カハラホテルより横浜港を望む クルーズの前泊・後泊にいかが


先日、横浜みなとみらい地区のカハラホテルでランチを摂る機会があった。ハワイ・オアフ島のラグジュアリーホテル、ザ・カハラが2020年に日本に進出した国内第1号ホテルである。場所はみなとみらい地区のなかでJR横浜駅寄りの東北部、最寄駅はみなとみらい線(東横線)の新高島駅から700米ほどであり、決して交通至便とは言えないので、観光バスやシャトルバス、タクシーを利用する海外からの観光客をターゲットにしたものであろう。客室を見学することができたがアジア系の人たちが好みそうな白を基調とした内装であった。ウイルス騒動で海外からの観光客が大幅に減っているが、それでも14階のロビー脇にある展望の良いラウンジは予約が取りにくいほど盛況だそうで、なかを覗いてみると平日の午後にも拘わらず婦人客を中心に優雅にアフターヌーンティを楽しむ人たちで一杯であった。いまホテルは国内の旅行者、特に横浜港を発着するクルーズ船乗船者の前泊・後泊に大いに期待を寄せているとのことである。


クルーズと云えば、商船三井は1000億円を投資し2027年に35000総トン、乗客600名の日本籍新造船2隻を就航させると先ごろ発表した。海運各社はこのところ業績が絶好調とあって、その余波をかって商船三井も一挙にクルーズ船を2隻を新造するようである。ただふつう新造客船の発表には造船所の名前と完成予想図くらいは呈示するのにそれがないのは不思議である(最初にこの事を発表した日経のインタビューに商船三井の社長が口をすべらしたのか?)。まだ船価やデザインの詳細が煮詰まっていないのかもしれないので、その発表が待たれるところだが、発表された3万5千トン級ならば全長は200米以下であろう。このサイズなら日本のクルーズ船顧客の需要にも合致するし、200米以上の船舶は夜間航行制限のある瀬戸内海など国内の港湾・航路事情でも取り回しが難しい。2025年に就航する飛鳥クルーズの新造船は5万トン超、長さ230米、乗客が740名とあって、今後どのように両社が競争するのか、或いは棲み分けていくのかが注目される。


商船三井の新造船2隻は、それぞれ内装や仕様を異なったものとして顧客層ターゲットを変えるのか、それとも姉妹船として同じコンセプトで就航させるのかも興味深い。可能ならば1隻は定員を増やして3人部屋や廉価なインサイドキャビンを造り、家族連れにも気を配って経済性や楽しさを志向する船に、1隻はシニア向けの高級志向で落ち着いた船はどうだろうなどと勝手な想像はつきない。造船所の点では大型フェリーを下関で造っている三菱重工が客船事業を復活させ商船三井の2隻を建造するのか、飛鳥クルーズのように海外造船所に発注するのか、はたまた全く新たな造船所の名前が出てくるのかも気にかかる。独アイーダクルーズ発注による大型客船2隻の建造で2000億円もの損失を出し客船建造から撤退した三菱重工だが、今度は気心の知れた国内船主である。日本を中心とするクルーズなら、今後のメンテナンスのためにも国内機器、国内船用品、国内造船所の方が都合が良いはずだ。複雑なIT関連のケーブルやらエンターテイメントの設備もアイーダ船のような特別な要求はないだろう。三菱をはじめ国内造船所の発注を期待したい。

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2022年11月27日 (日)

飛鳥Ⅱ「2023年オセアニアグランドクルーズ」寄港地観光ツアー・船内生活説明会

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飛鳥Ⅱ「2023年オセアニアグランドクルーズ」実施が決定し、25日(金)午後、東京駅前KITTEビル内で運航会社郵船クルーズによる寄港地観光ツアーと船内生活説明会(東京会場)が開かれた。2021年の飛鳥Ⅱオセアニアグランドクルーズが武漢ウイルス騒ぎで中止になり、2年間延期を繰り返してきたのだが、やっと国内外の関係当局の承認を取り付け来年2月10日から39泊で催行されることになったものである。ただし2021年のスケジュールからは、COVID 19の影響によりタスマニア寄港が抜かれるなど若干旅程が変更になっている。すでに商船三井客船の「にっぽん丸」はインド洋のモーリシャス向けに12月15日から47泊のクルーズ実施を決定しており、日本船では海外クルーズ再開後の第2船となる。


KITTEに設けられた説明会場はほぼ満席であった。冒頭、郵船クルーズの営業部長から、「安全」「楽しんでもらう」「最後までやる」が今回のクルーズのキーワ―ドであり、海外クルーズ再開にあたっていかに感染症防止対策に苦慮したかが述べられた。このクルーズでは乗船にあたっては3度のワクチン接種が「強く推奨」され、これまで通り乗船日のPCR検査が実施される上、日本帰港直前のグアムに於いても乗客全員に再度PCR検査が行われる。また海外寄港地での個人的な外食も禁止というからかなり徹底した対策である。もしクルーズ中に陽性者であることが分かると、次の港で強制下船となり、現地の医療費や隔離宿代、帰国費用などは自費となるので、旅行傷害保険についてはクレージットカード付帯のものだけでなく、追加の保険を十分検討して欲しいことが強調された。


ただしCOVID 19を問題視しているのは今や世界中でシナと日本だけであり、我が国も来春までには現在の感染症2類相当からインフルエンザ並みの5類に諸要件が緩和されることが予想されるので、現在発表のコロナ対策は「変更ありうべし」とのこと。一方でウイルス対策を行いつつも、なるべく「日常」を取り戻すように人気の「ダンス教室」や「コントラクトブリッジ教室」が再開される予定と嬉しい説明もなされた。「2023年オセアニアグランドクルーズ」の乗船予定者は460名だそうだ。いまクルーズ船に乗ってもし感染すれば「金持ち老人の道楽でほらみたことか!」と世間から非難や嘲笑の的になろうが、それにもめげずに乗船しようとする460名である。石橋を叩いても渡らないような感染症対策ばかりでなく、3年ぶりに実現した海外クルーズが楽しくなるように諸対策がいっそう緩和されることを願いつつ会場を後にした。

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2022年11月 9日 (水)

飛鳥Ⅱ のんびり秋旅クルーズ

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横浜港大さん橋の飛鳥Ⅱと護衛艦いずも

「飛鳥Ⅱ のんびり秋旅クルーズ」に乗船してきた。11月3日発のこのクルーズは、国内8泊にも拘わらず寄港地が高松、新宮、四日市の3港だけと名前通りきわめて「のんびり」の秋のクルーズである。なぜ「のんびり」かと云えば、本船は今春起きた船内発電機の故障がいまだ直らず、現在に至るも全力航行ができない状態であることが理由だと思われる(飛鳥Ⅱ 電気系統の不具合・原因 本年4月12日ブログ)。いま飛鳥Ⅱは最大でも11~12ノットしかスピードが出ず、よって1週間ほどの日程では母港の横浜から遠くの幾つもの寄港地まで往復できない。また感染防止の観点から国内でクルーズ船を受け入れる港がまだ限られているのも事実である。これらのいくつかの制約の中で、必然的に本船は洋上を「のんびり」遊弋するようなスケジュールになった模様である。


私たちは新宮や四日市はこれまで訪れたことがあるので、今回はクルーズ前半の横浜~高松間の3泊コース(Bコース)のみの乗船とした。300名の乗船者のうち、70名ほどがBコースだそうだ。出発日である11月3日(祝)は例によって乗船前PCR検査を受けるため、横浜港大さん橋での集合、受付は出港3時間前の2時であった。この日は国際観艦式に参加する自衛艦「いずも」が大さん橋に着桟しているため多くの艦内見学者が詰めかけ、飛鳥Ⅱの出港時にも最近になく人だかりができて、「ついで」にか、多くの人たちが飛鳥Ⅱを見送ってくれる。PCR検査も無事終わり久しぶりに賑やかな見送りの中、定刻5時に飛鳥Ⅱは大さん橋を離れたが、やはり客船の出港は華やかなのが一番だと感じた。


飛鳥Ⅱには約1年ぶりの乗船となったが、感染症対策は昨年末と大差なく船内パブリックスペースはマスク着用が原則。またフォーシーズン・ダイニングで友人夫妻と夕食を共にしたら、相変わらず同室者以外との間にはアクリル板のパーティションが置かれ、まるで耳の遠い老夫婦2組が会話しているように大声を出さねば通じない。これでは却って飛沫やらエアロゾルが飛ぶのではないのだろうか。クラブ2100もフロアーに無粋なソファが置かれたままで、せっかくの生バンド演奏とあってもダンスはできない。もっともパームコートや飛鳥プラザでバンドの演奏に合わせて踊ってみたが、クルーは何も言わなかったからこの程度は黙認なのだろう。総じて感染症対策でピリピリした昨年の雰囲気に比べれば、船内は大分マイルドになった気がしたが、もはやオミクロンは「ただの風邪」である。早く以前のように皆で集まって「アスカダンス」(エイキー・ブレーキーハート)を踊りたいものだ。


この「のんびり秋旅クルーズ」の船長は小久江キャプテン。いつもの様にさまざまな航海情報や本船の今後の予定、船長の意図などを的確かつ詳細に船内放送で語ってくれるのが素晴らしい。本船は11月中盤からドックに入り、いよいよ具合の悪かった発電機も直するそうだから、その後は減速航海やまるでドリフティング(漂泊)のような速度調整も少なくなるだろう。彼には思う存分腕を奮って欲しいものである。一方で日本船の一画である”ぱしふぃっくびいなす”が年内出港をもって、クルーズから撤退するとのニュースが飛び込んで来た。本船郵船クルーズの親会社である日本郵船のマニラにある関連会社は飛鳥Ⅱのフィリピン人クルー養成だけでなく、ディズニークルーズや”ぱしび”にも船員を供給している。飛鳥クルーズは2025年に新造船が投入され2隻体制になるので、日本語が分かり日本文化を知っている”ぱしび”のフィリピン人クルーはどうやら多数が飛鳥クルーズに転船してくるようである。

ブリッジで操船する小久江キャプテン(左)とスタッフキャプテン
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「のんびり航海」とあって8.8ノット(右下メーター)の超減速航海の飛鳥Ⅱ
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2022年6月14日 (火)

続・陸と海と空 にっぽん丸の「門司発着 海の京都 舞鶴と佐渡島プレミアムクルーズ」その6(下船後)・了

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西鉄5000形(二日市にて)

4泊のクルーズを門司港でおりた後、まっすぐ帰京するのもつまらない。北九州で何か楽しみはないかと考えたら、妻が大宰府に行ってみたいと言う。なんでも令和という元号は、万葉集の梅花の歌編序文「初春の令月にして気淑く風和らぎ 梅は鏡前の粉を披き 蘭は珮後の香を薫らす」が出展元であり、これら梅花の歌は大宰府で詠まれたものだそうだ。妻はもともと一度は大宰府天満宮を訪れたいと思っていたが、ゆかりの元号になったということで機会を伺っていたようだ。一方で私は大手民鉄16社の中で、ただ一社乗車したことのないのが西日本鉄道(西鉄)であり、彼女の希望が大宰府なら西鉄天神大牟田線と大宰府線に乗れる絶好のチャンスだとただちにこれに賛同する事にした。という事で門司港で下船後はまず鹿児島本線の快速電車で博多駅近くのホテルにチェックインし、翌日の大宰府訪問に備えた。夕刻大濠公園までジョギングをした後(意外と遠かった)、夕食は博多駅筑紫口の居酒屋で名物の焼き鳥に博多ラーメンだったが、にっぽん丸の上品な味に慣れた舌には濃い味付けが刺激的でつい酒を注ぐ杯も進んでしまった。


「大宰府へはそこのバスで行った方が便利ですよ」とのホテルフロントのアドバイスもものかは、地下鉄に乗ってやってきたのは西鉄福岡(天神)駅である。ほとんどの大手私鉄がJRの駅にターミナルや準ターミナルを置いているのに、西鉄はJR博多駅より2キロほど離れた天神という繁華街に立派な始発駅を設けているのが九州男児の心意気を示しているようだ。4面3線の福岡(天神)駅で二日市方面の電車を待っていると、やってきたのは折り返し5000形の花畑行き急行であった。運転席側がパノラミックウインドウなのに反対側の前面はそうではないというアンバランスな顔ながら写真などでお馴染みの西鉄を代表する電車である。福岡(天神)駅を発車するとこの5000形はモーター音や加速感が思いの外スムースで快適なことに気が付いた。5000形は最近のJRや大手私鉄で全盛のVVVF制御ではなく一昔前の抵抗制御なのだが、抵抗制御のリニアな加速音の方が人間の感性に合っているからであろう。二日市まで15キロ、わずか20分の初西鉄だったがさすが九州一、大手民鉄の一画と思わせる5000形の走りっぷりと沿線風景であった。


二日市で西鉄大宰府線の3000形観光列車「旅人」に乗り換え終点の大宰府駅へ。行き止まりホームの駅を出れば目の前は天満宮の参道である。名物の梅ヶ枝餅をぱくつきながらそぞろ歩いて到着した天満宮は、政敵の陰謀によって京から左遷され失意のうちにここ大宰府で亡くなった菅原道真が祀られている。道真の死後に京では疫病や天変地異が起こり政敵も早世したのだが、その道真の怒りを鎮めるための社殿である。道真が優秀な学者だったことから、天満宮は中世以降学問の神様として信仰されるようになり、境内には京都大学合格、国家公務員試験パス祈願など沢山の絵馬が奉納されていた。次に向かったのは大宰府政庁跡である。大宰府政庁は7世紀後半に大和朝廷が置いた役所で、西日本防衛や大陸の窓口の役割を担った歴史的な機関なのだが、こちらは天満宮に比べてアクセスも良くないせいか(我々は天満宮より2キロ半歩いて訪問)訪れる観光客はほとんどいなかった。大宰府といえば天満宮が代名詞なのだが、この政庁跡は大和朝廷時代を偲ばせる貴重な遺構であり、西鉄や地元はもっとプロモーションしたらいかがであろう。

 

旅の締めは福岡空港から2019年度からJALに導入されたエアバスA350-900である。南風の日の夕方15時から19時頃、羽田空港新飛行経路が運用されると、高度を下げていく航空機が我が家からは良く見える。福岡便は主にボーイング777とエアバスが運用されており、帰って来るのにちょうどよい福岡1605発のJAL320便がエアバスで、運よく左舷の席を並んで予約することが出来た。新飛行経路を使ってくれれば都心遊覧便になり我が家を見下ろすことが出来る筈だが、搭乗した日の風向きはまさにお天道様まかせである。クラスJの広いシートに身をあずけ最新のモニターで楽しみながら窓外を眺めていると、この日は房総半島上空から大きく内陸に向けて旋回を始め、どうやら新飛行ルートを使うらしい。荒川の上空あたりでは雲が厚かったが池袋近辺から南へ向かうアプローチに入り高度1000米を切ると、やっと機体は雲の下に出て「あ、うちのマンションが見えた」と二人してしばし興奮しつつ羽田着。こうしてクルーズ船に鉄道、飛行機と「陸と海と空」を堪能する旅を無事終えたのだった。

大宰府政庁跡
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羽田新飛行経路でエアバスA350-900から見る都心風景
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2022年6月10日 (金)

続・陸と海と空 にっぽん丸の「門司発着 海の京都 舞鶴と佐渡島プレミアムクルーズ」その5(寄港地編 佐渡)

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宿根木の集落は吉永小百合の大人の休日倶楽部CMでも使われた

クルーズ3日目、にっぽん丸は佐渡の小木港に入港した。佐渡と云えば史跡である金鉱山がユネスコ世界遺産に登録される可能性が濃厚で、いま脚光を浴びている島だ。島の南部に位置する小木港は直江津連絡の高速船が着くものの、大型船の係留はできない小ぢんまりした港であった。しかし小木港は江戸時代は西回りの北前船の主要な寄港地であり、すぐ近くの宿根木集落は当時は廻船業の船主で栄えた町だった。そんな小木港に寄港できるのは小粒なにっぽん丸サイズのメリットだといえよう。佐渡島は沖縄本島につぐ大きさで、Sの字にも似た形の島には南と北に二つの山地があり、その間に両津平野が広がっている。島の北部は日本海的気候で冬の積雪も多いが、南部は比較的穏やかで、両津平野は良質なコシヒカリの産地だそうだ。「離島」というと何等かの目的がないとなかなか訪れないが、クルーズ船は国内の様々な島に気軽に連れて行ってくれるのが嬉しい。


小木では「北前船で栄えた町宿根木散策」の有料ツアーに参加することにした。船から観光バスに揺られて10分ほど、海を挟んで対岸の妙高山地を前にした宿根木は国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。地元ガイドさんに案内されて踏み入れた集落は、入り組んだ狭い路地の両側に肩を寄せ合うように住居が並んでおり、それぞれの家を見れば廻船の外板を流用した腰板が目立ち、屋根は真っ黒な能登の瓦吹きである。ここは江戸時代は船大工が住み金融が整備されて船主が多数いたそうで、そこかしこの家並が往時の繁栄を偲ばせてくれる。これまでも瀬戸内に点在する各地の伝統的な船主の町を訪れたが、ここ佐渡も西回り北前船の主要な寄港地であったから、同じような海運業が発達したのであろう。集落の入り口にある佐渡国小木民族博物館には往時の設計図を使い新造された千石船「白山丸」が展示されており、これをゆっくりと見学するうちに江戸時代の廻船業や船主業をじっくり研究したいとの気持ちが湧いてきた。完全にリタイアしたら生涯のテーマとして江戸時代の海運業をじっくり研究するのもよいかもしれない。


集落の見学が終わると、目の前の海岸でこのツアーについているたらい舟の乗船であった。船頭さんは昔絵本で見たような編み笠に絣(かすり)の女性でなく運送会社のドライバーのような男性だ。ライフジャケットを着用して生まれて初めてのたらい舟に乗ると予想通りゆらゆらと揺れて何とも不安定な乗り心地。たらい舟は形は丸いし櫓の支点も柔道の帯のようで、櫓で漕ぐ力を推進力にするには何ともファジーな形態と云える。時速は最高でも3キロだそうでなぜこんな乗り物が佐渡で使われたのか不思議なのだが、箱メガネを使いながら岩場で海草や貝を採取するにはたらい舟が良いそうで観光以外に今でも現役で漁に使われている。ところが好事魔多し。こうして妻と共に海岸を一周するたらい舟体験を終え「右足をその座る所にかけて左足で岸壁に」と言われて彼女が上陸しようとする瞬間であった。私の目の前で妻のジーンズのポケットからはスローモーションのように何かが海にすべり落ちるのが見えた。思わず「スマホ!?」と呟くと陸にいたにっぽん丸の付き添いガイドが「ご主人のは撮影用に先ほどお預かりしたのでここにありますよ!」「あっっっ、私のが落ちたんだ!(心の声:ヒィィィ)」と妻。

ここからは妻の日記から引用。
(完全に水没してしまったので)もう(スマホとして蘇生させるのは)無理だな、と思ったけどその箱眼鏡で見えませんか、と船頭のおじさんに頼んでみる。「どんな形状?」「本体は水色でオレンジの短いストラップの先に銀色のカラビナが付いてます」と言ったらそれらしいものが見えたみたい。アワビ漁に使う鉤(かぎ)にストラップを引っ掛けて掬ってくれようとするけどなかなかうまくいかない。そろそろバスの出発時間なので、もし掬えたら小木のにっぽん丸に届けます、とおじさんが言ってくれたので夫の携帯番号を書き残す。後でわざわざ届けてもらうのはあまりに申し訳ないなと思っていたら、おじさんはタモ(網)が要るなと呟きながらも、海の底を狙いすまして何度も鉤でチャレンジしている。海中を漁ること数分、やがて気合とともに鉤に引っ掛けたスマホをタモに受け、なんとか無事サルベージしてくれた。早く清水で洗った方が良いとのアドバイスを得て近くのトイレで充電口を中心に洗った。ご迷惑をおかけして申し訳なかった。特ににっぽん丸のガイドさんが一緒にショックを受けてくれて申し訳ない。でもとりあえず現物が戻って良かった。平身低頭引き揚げる。


海中滞在時間約10分のスマホは、サルベージ直後は不調だったものの、翌日は機能を完全に取り戻した。それにしても箱眼鏡で拾い上げてくれた船頭さんの技は卓越している。この災難から不安定だと思ったたらい舟は、海中の漁にとても適していることが体験的・実証的によくわかった。関係者の皆さん、お騒がせして大変すみませんでした。

スマホを回収してくれるたらい舟の船頭さん(迷惑をかけておきながらでデジカメを出して妻が写真を撮る)
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2022年6月 9日 (木)

続・陸と海と空 にっぽん丸の「門司発着 海の京都 舞鶴と佐渡島プレミアムクルーズ」その4(寄港地編 関門・天橋立)

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日本製鉄九州製鉄所

先に書いたとおり今回このクルーズを選んだ理由の一つが航路や寄港地が魅力的だった事である。まずは関門海峡である。カボタージュ目的で釜山や済州島に寄港するクルーズ船は、関門海峡を夜間に通行する事が多いが、門司港発着のこのクルーズなら昼の北九州の眺めを船上からゆっくりと堪能できる。小倉・八幡・戸畑の工業地帯に拡がる製鉄所の高炉群、彦島の精錬所の煙突や白島石油備蓄基地の遠影、洞海湾に見えるかつての「東洋一」の若戸大橋など屈曲する関門航路の右舷・左舷につぎつぎに展開する情景は、さながら日本の近代工業化をたどる社会科見学のようで飽きることがない。六連(むつれ)島を最後に見れば、大東亜戦後この検疫錨地が大陸からの引き揚げ船で忙しかった現代史に思いが至る。


翌朝、目が覚めると船は舞鶴湾であった。終戦後に66万人の引き揚げ者が帰国の一歩を踏み出した港である。周囲に山が迫り航路が曲がっている湾内の光景は横須賀港や佐世保港に似ており、ここにかつて帝国海軍鎮守府が置かれた理由も海から来てみるとよく判る。今までも幾度か書いてきたが、クルーズ船で海から訪問すると陸の旅からでは感じることができない、そこに町や港が存在する必然性が体感できるというものだ。ここ舞鶴からは観光バスに揺られて約1時間、日本三景の一つ、天橋立へのオプショナルツアーに参加することにした。松島や安芸の宮島はすでに何度か訪問したので、これでやっと日本三景を制覇できたと思うとちょっと嬉しい気分がする。


天橋立というのは天然の砂州だそうで、ケーブルカーで登った傘松公園からはまずはお約束の「また覗き」を楽しんだ。見ると公園の眼下には橋立観光の遊覧船が走っているのどかな情景が拡がり、砂州の南側には小さな廻旋橋があって、外海につながる宮津湾と橋立内の水域(阿蘇海)を小さな船舶が往来できるようになっていた。阿蘇海の奥には日本冶金の大江山製造所があって、工場の傍らにニューカレドニアやフィリピンから運ばれて来た大量のニッケル鉱石が野積みされているのが傘松山から遠望できる。輸入されたニッケル鉱石は宮津湾で大型のバラ積み本船から何隻かのバージに積み替えられ、廻旋橋を利用して工場の傍の鉱石荷揚げ場までシャトル輸送で運ばれているようだ。


日本でニッケル鉱石を大量に輸入する港は八戸(青森)、日向(宮崎)と宮津の三港のみで、現役時代は八戸や日向の仕事に深く関わってきたものの、ここ宮津に関連する仕事にはまったく縁がなかった。なので持参の望遠鏡は天橋立の松林よりバージの荷揚げ場や鉱石の置き場ばかりに焦点が合ってしまい、まだ仕事の余韻が抜けていないのかと我ながら苦笑。大江山はかつてニッケル含有分が多い鉱石が採れたそうだが、原料を海外に頼る時代になっても天橋立の奥に主力工場があるのはちょっと不思議だ。さて、ツアーのにっぽん丸への帰路は京都丹後鉄道(旧国鉄宮津線)の「天橋立駅」から「西舞鶴駅」まで一両の気動車に揺られる旅であった。途中の由良川にかかる橋梁は水面上3米を走る列車が”バエル”そうで鉄道ファンでなくとも人気のスポットらしく、40分余りの鉄路の内この部分だけを乗る人たちも多かった。こうしてみるとクルーズ船の旅はまことにシニアの社会科見学の場だと思うのである。


天橋立の股のぞき
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京都丹後鉄道・人気の由良川橋梁
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