カテゴリー「船・船旅」の記事

2020年4月20日 (月)

ピースボ-ト・世界一周クルーズで2回目はタダ?

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一度ピースボートの運営サイトをクリックしたら、以後我がディスプレイ上にピースボートのバナー広告が上位に出てくるので苦笑している。そもそもピースボートは辻元清美という私が大嫌いな政治家が創始者の一員だった上、いまでも核廃絶運動などと係わりがあり、船上では「原発反対」やら「九条を考える」など怪しげな人たちの集まりもあるらしい。もし乗船したら、船内のあちこちでサヨクやリベラルと云われる人達と大喧嘩をくりひろげそうだから、料金にかかわらず乗船する気はまったくない。それでも飛鳥Ⅱなどで知り合った友人のそのまた友人などにはピースボートに乗船した経験者もいて、船上でのさまざまな話を漏れ聞くこともあるので、ふとサイトを覗いてみたものである。


このネットのバナーにはしばらく前まで、2020年夏からピースボートが催行するOCEAN DREAM号かZENITH号の何本かの世界一周クルーズ料金を4月30日までに全額支払えば、つぎの世界一周は無料で乗船できるというキャンペーンが繰り広げられていた。すなわち1回目のクルーズ料金を早期に全額支払えば、もう一回はただで世界一周できますよ、というなんとも破格のサービス提供である。私はこれを見た瞬間に「すごい企画だ!」というより「話がうますぎる」と直感し、よほどピースボートは資金繰りに困って目先のキャッシュが欲しいのだろうと思っていた。


そもそもピースボートは週刊文春の2019年2月7日号で「570億円豪華客船計画が座礁」とたたかれた事がある。当時ピースボートは画期的なエコシップを北欧の造船所で建造、2020年に就航させるとして乗船客を募っていたが、金を集めるだけで本当に計画が進展しているのか疑問を呈した記事であった。それから1年余り、今やエコシップの話はまったく聞こえなくなり、代わりにプルマントゥールクルーズにいた船齢18歳のZENITH号(4万8千トン)をピースボートがチャーターし、従来のOCEAN DREAM号と2隻体制で世界一周クルーズを催行しようとしていた矢先である。「エコシップ」なり「2度目はタダで乗船」なり、ピースボートは世間が驚く計画をぶち上げては金を集め、事業継続資金に充当するという自転車操業を繰り広げているのではないかと私には映る。


と思っていたら、4月15日に神奈川新聞のサイトにはピースボートが「クルーズ中止で返金トラブル」という記事が掲載されている。周知の通りここに来て武漢ウイルスのために世界のクルーズ事業は中断し、ピースボートも予定していた4月9日発の第104回世界一周クルーズがキャンセルとなったが、この代金返済に対し問題が生じているとの記事である。それによると一人139万円~395万円の返金に対して、「安定した経営のため」3年分割払いで払い戻したいとする書簡が、乗船予定者に届いたとされている。顧客からの反発や日本旅行業界の指導もあり、ピースボートは「旅行業約款を順守する。3年間の分割はお願いで、顧客とは個別に対応している」と取材には答えている。ただクルーズ船ビジネスの再開めどはたっておらず、すでに長期でチャーター契約している2隻目のチャーター料も支払い義務が生じるのだろうから、どうやって彼らはこの苦境を乗り切るつもりだろうか。主義は合わぬが海の友としてクルーズは頑張って続けて欲しいとも思う。辻本さんは助けてやらないのか?


リンク
ピースボートのエコシップ(2019年2月6日)

2020年4月19日 (日)

クルーズ船の感染対策

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カリブ海のクルーズ船メッカ、ナッソーにて(2011年6月)

武漢ウイルスでは関係者の必死の努力をよそに、生かじりの知識でここぞとばかり勝手な持論を述べるコメンテーターや評論家がネットやワイドショーで跳梁跋扈し、批判の為の批判を繰り広げるさまにあきれるばかりだ。最近はバカらしくなってテレビもほとんど見なくなった。こんな時には武漢ウイルスが収束し、不安なしに国内・外の旅行に出かける日が来るのを夢見ることにしている。もっともクルーズ船は、いまアメリカのCDC(疾病予防管理センター)から100日間の運航停止措置が講じられているが、この騒動が収まり運航再開となっても、これまでと同じようにビジネスを続けられるだろうか大きな不安が残る。ダイヤモンドプリンセスでの集団感染が記憶に新しいなか、その後もオーストラリアやアメリカでクルーズ船で同じ問題がおこり、そのうえアメリカやフランスの空母で乗り組み員の集団感染が報じられると、フネが感染に弱いという認識が世界中に広まるのではなかろうか。


これまでもノロウイルスやSARSによる感染危機を乗り越えてきたクルーズ船業界である。ただ今回の騒動のインパクトの大きさや世界中に汚染が広まってしまった事を考えると、クルーズ船の主たる顧客である高齢者の中には、乗船をためらう者も多くなるのではないか。考えてみれば武漢ウイルス騒動が始まるまでは世界の海域でクルーズブームがおこっており、欧州の新造船ドックは2023~2024年までは建造予約が一杯、その後の契約についても商談が進んでいた。しかし現在の苦境と、運航再開後も元に戻るには相当の時間がかかるという想定から、すでに一部のドックと船主の間ではとキャンセル交渉が始まっていると伝えられている。航空機と同様に数百億円の動産を整備し、それが稼働しないという地獄が船主に待っているかも知れないのだ。現にここ10年間、次々と巨大クルーズ船を就航させたアメリカのメガクルーズ船会社は、いま資金繰りにいろいろな算段を始めていると報じられているが、クルーズと云えば「不要不急」の代表的な業種だから、充分な援助などを得るのはそう簡単ではないだろう。


我が日本船もしばらく運航を休止しているが、飛鳥Ⅱやにっぽん丸は上場する老舗大手海運会社の連結対象子会社である。資金繰りについては当面問題なかろうから、こちらは事態の進展待ちで静観といったところだろうか。ただ運航を再開した後に、これまでのようにリピーターの高齢者層が心配なく乗ってくれるのかやはり疑問は残る。もっともピンチの後にはチャンスありで、以前にも書いたように、欧州の客船建造ドックには新造船キャンセルによる空きが相当出てくるだろうから、安い船価で飛鳥Ⅲや新にっぽん丸をつくるチャンスの到来とはいえよう。クルーも世界的に余剰になろうから、船員費も抑えられる事が期待できるし、船用品や船食もしばらく安価に買えることだろう。原油安からバンカー(船舶用重油)も、かなり安い水準で推移している。石橋を叩いても渡らないような安全策オンリーでチャレンジしない事が日本の経営者の常となったが、10年・20年後の隆盛を目指して、この機会に外国の大手クルーズ会社に出資やら提携する事くらいは模索したらどうだろうか。


さて今後、乗客の不安を解消し、クルーズビジネスを再び興隆させるには、まず空調システムの見直しが必要ではないだろうか。これまで大型客船の換気システムは外の空気を取り入れるとともに、内部でも空調機を介して船内の空気循環を行っていた。プリンセスクルーズでは、その割合はキャビンでは30%が外部からの空気で70%が内部循環、パブリックエリアでは50%、医務室や厨房では外気取り入れが100%だそうで、このようなシステムが船内の集団感染に結び付いたのだと思われる。飛鳥Ⅱなども似たような割合で空調が設置されている事だろう。一説によるとプリンセスクルーズでは今後外気を取り入れる割合を増やすそうだが、これから建造される新造船では外気の取り入れを大幅に増やしたり、船体の各部で空気の遮断や取入れに関して分散管理ができるように設計変更が行われれることが求められるよう。また内側の窓なしのキャビンを少なくし、バルコニー付きのキャビンを極力増やして各自が任意に外気に触れることができるようにするなどの対策も考えられる。クルーズ船のビジネスを継続させるため船級協会や関係機関の速やかな感染対策がのぞまれる。

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ローマの玄関口チビタベッキアのクルーズ船)(2018年4月)

2020年4月12日 (日)

戻ってきた 飛鳥Ⅱ

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これから錆落としをするのか8・9デッキバルコニー

新聞を読んでもテレビを見ても武漢ウイルスの話ばかりでウンザリの毎日。いつも一面からじっくり読む新聞もウイルスの記事だらけで、いまは新刊本の広告、書評や料理の欄などしか読む気がしない。新聞で唯一面白いのは「人生相談」(読売は「人生案内」)で、寄せられた悩みに対する識者のコメントを、妻と二人で「俺ならこうする」「私はこう思う」とあれやこれや日々論じている。しかしこの季節の愉しみ、神宮球場での六大学野球観戦や後輩の陸上の試合応援も今春は順延、各種コンサートは中止の上、図書館も閉鎖となってまことに意気が上がらない。空いた時間はジョギングにあてるが、さすがに最近は毎日10キロ近く走ると疲労を感じ、「今日はお休み」などと宣言する日もある。これが年齢相応ということであろうか。


「外出するな」ではあるものの、人と会わずに外気に触れるのは推奨されているから、こんな週末はドライブを楽しむ事にする。3リッター・ツインターボでリッター当たり8キロくらいしか走らない愛車も、この時期ガソリンが安くなっており、気軽に遠出できるというものだ。昨日はシンガポールのドックで改装工事を施し、母港・横浜港で停泊中の飛鳥Ⅱの外観を見に行くことにした。武漢ウイルスなかりせば、今頃飛鳥Ⅱは世界一周クルーズの序盤で4月10日にシンガポールを出港、インドのゴアに向けマラッカ海峡を北上中のはずであった。乗船予定だったこのクルーズが催行されていれば、今日は太陽光線を真上から受け「影のなくなる日」を味わっていただろうなどと、死んだ子の年を数えるようなことをしていたら無性に改装後の本船の雄姿を眺めたくなったのである。


横浜港の大さん橋は屋内のホールが閉鎖されているものの、名物の「くじらの背中」と呼ばれる板張りの送迎デッキはオープンしていた。駐車場にクルマをとめいつも通り出船・右舷付けにされた飛鳥Ⅱを眼前にすると、昨年11月「ウイーンスタイルクルーズ」から下船する時「次に来るときは世界一周だ」と胸を膨らませてボーディングブリッジを歩いた事が遠い過去のような気がしてきた。送迎デッキの向こうの本船では、おりしも7階プロムナードデッキの上で顔見知りのボースンの下、セイラー達がハンドレールのカンカン(錆落とし)の作業の真っ最中であった。老齢となった本船もドックで化粧直しが施されてまた美人になったが、どこもここも錆落とししたのでなく、望遠鏡で見る9階や8階のバルコニーにはまだ赤さびが見える。ただバルコニーの窓ガラスには養生がなされており、これからクルーハンドでカンカンをして、運行再開までに真っ白になってくることだろう。


ファンネルの中に聳える排気管の中には真新しいステンレス生地が太陽光線に反射しているものもあり、この下に排ガス規制対策のスクラバーが設置されたと思われる。ウインブルドンコートの跡に造られた露天風呂はその覆いがひときわ目を引くが、以前から思っていた通り、橋の上などからは風呂が丸見えになるように思えて実際どうなのか気になる。こうして桟橋から目の前に飛鳥Ⅱを眺めていると、船内に足を踏み入れられないことが何とももどかしく、一刻も早くこの武漢ウイルス騒動が収束してくれることを望むばかりだ。じきに乗ってやるから待ってろ飛鳥Ⅱだ。ただ都内から大さん橋まで道はどこもガラガラ、帰路は横浜市内・都内とも2か所しか赤信号に捕まらず、首都高はクルーズコントロールを80キロに設定すると前後が詰まることがない。こんなすいている道路も滅多にないから、この騒動もドライブには良いかと気を取り直したのだった。

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新設の露天風呂

2020年4月 2日 (木)

飛鳥Ⅱ2020年世界一周クルーズ出発の日

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大桟橋のWEBカメラで見る飛鳥Ⅱ

今日4月2日は、予約していた2020年飛鳥Ⅱ世界一周クルーズの出航の日であった。関東は風は強いが久しぶりの晴天で、実現していたらよき船出になったことだろう。中国人が野生動物を食べる習慣がなければ、あるいは昨年末に中国共産党政府が新しい感染症を隠蔽せず防疫対策を適正に行っていたら、武漢ウイルスもここまで拡大せず、きょうは晴れて乗船できたはずなのにと考えると残念でならない。もしこの騒動がなかりせば今頃は東海道線で横浜に向かうころだったろう、今の時間は大桟橋で見送りの人や知っている乗船者と挨拶を交わしているはずだ、そろそろ出国審査を終えて乗船か、ブラスバンドに見送られ出港だ、などと、一日「死んだ子の齢を数える」ような思いが続くに違いない。


おりしも飛鳥Ⅱがシンガポールでの改装工事を終え、昨日母港・横浜に帰ってきた。大さん橋に設置されたWEBカメラを見ると、いつものように出船・右舷付で着桟した飛鳥Ⅱの11デッキには新設の露天風呂の開口部が見え、7デッキの外側もすっかり錆落としがされている。画面を眺めつつ、この露天風呂の構造だとやはり外から見えてしまいそうだが一体どうなっているのだろうか、プロムナードデッキを歩くと周囲はすっかりきれいになっているに違いない、などと営業復帰後のクルーズの様子を想像してみる。一方で画像を拡大すると8・9階のバルコニーには茶色の錆らしき筋も見えるようで、その部分は今回手を入れなかったのかなどと疑問が湧き、早く実際の様子を見たい、乗船してみたいとの思いが強くなってくる。


世界一周クルーズに乗船する日はいつも、旅への期待とともに狭い空間に拘束されるような圧迫感や、病気や怪我が無く行ってこられるのか、小さな不安も入り混じる。キャビンは20平米弱、日本最大のクルーズ船といっても、生活空間は長さ200米、幅20余米で、その中で24時間100日間を600名ほどが暮らすのである。中にはちょっと変わった乗客もいるし、時には濃密な人間関係にもさらされる。2011年はアデン湾の海賊問題で、スエズ運河を通れず喜望峰周りに航路が変更になった上、出港直前には東日本大震災があった。後顧の憂いや旅の不安なくして世界一周することはできないが、それでも帰国すればまた行きたくなるのが世界一周クルーズである。今年が駄目でもまた次のチャンスに行けばよいと気持ちを切り替え、季節の良くなる日本での100日間を過ごそうと思う。

2020年2月27日 (木)

飛鳥Ⅱ2020年世界一周クルーズ中止

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乗船を予定していた4月2日からの飛鳥Ⅱのワールドクルーズが中止と発表になった。すでに妻がツイッターでこのクルーズ乗船をつぶやいていたので、友人などからは「また行くの?」とあきれられ、最近は「コロナウイルスで大丈夫?」と心配されていたが、これで周囲からの心配や批難の声もなくなることだろう。じつはかねてから老母には「サラリーマンの身で何度も世界一周に行くのは身分不相応」とおこられていたのだが、その母も昨年亡くなってもう叱責されることもなくなり、仕事場でも何とかしぶしぶ許可をもらってあとは出発を待つのみであった。かかりつけの病院には検査や診療の日程を調整してもらい、クルーズの102日間分と万一の際のプラスアルファの薬の処方もお願いするなど、乗船に向けての準備おさおさ怠りなく進んでいたところだ。


そんな中のクルーズ中止連絡で、いまは何かぽっかり目標を失った感じがしてならない。寄港地の情報を調べつつ、今回はダンスもだいぶ上達したから見知らぬ女性から踊りに誘われてもドギマギせず対応できるか、久しぶりにゴルフを再開して船内でレッスンを受けるか、フィットネスで週に数回は筋トレをするかなど、あれこれクルーズ生活を想像していたのだが、そんな愉しみも露と消えてしまった。しかし男性の健康年齢は平均で70歳代前半だという。身体が元気で動けるうちになるべく遊んでおこう、というこれまでの方針はいささかも揺るがない。この「失った102日間」でできる事はなにだろうと、気分を変えて考えることにした。


海外のクルーズ、特に行ったことがないエーゲ海やエジプト、ヨーロッパのリバークルーズなどを検討したが、コロナウイルス騒動で海外旅行も目途がたたないため、しばらく国内ででできることをしようと、頭を巡らしている最中である。そんな中、内外のクルーズ船が日本市場でのサービスをやめているのにも関わらず、4月に国内で唯一クルーズを催行するのが「にっぽん丸」であった。パンフレットを見ると4月の「飛んでクルーズ沖縄」がなかなか面白そうなのだが、これまた申し込んでもクルーズ中止となっては喪失感も倍増となる。普段はクルーズの手配は妻に任せきりの私だが、今回ばかりは「にっぽん丸」の商船三井客船に直接電話して状況を確かめると、「今のところ、4月以降のクルーズは台湾に寄港するのは取りやめだが、それ以外は計画通り行う予定です」との返事であった。この沖縄クルーズを目標にしばし職場に戻って仕事をするか、とモチベーション維持に心をくだくここ数日である。

 

2020年2月22日 (土)

ダイヤモンド・プリンセスで関係者をディスりたい人々

政府のすることには是非をこえて何でも反対することが使命だと勘違いし、自己陶酔しているようなメディアの存在を日頃から苦々しく思っている。今回もダイヤモンド・プリンセスの防疫体制に関して、政府の対策がまずいと「後出しじゃんけん」ばかりの報道やネットの記事が不愉快だ。3,700人もの乗客・乗員である。乗下船するだけでも数時間かかる人数なのだ。大きな体育館に4,000人近い人々がぎっしり詰まっているような状態を想像してみれば如何に多くの人数かとわかるであろうが、未知の脅威を前にここにいる人たちの防疫をどうするのか、関係者が頭を抱えベストを求めて試行錯誤したに違いない。

 

コロナウイルスは潜伏期間、感染力や症状が現れる過程・治癒の経過もよく判っていない未知の病原体なのである。船内に留め置くのは非人道的だとの声もあったが、検査キットの数は十分でなく、ふだん救急車でさえ受け入れる病院を探すのが難しいなかで、何千人もの人を選別して近辺の施設でただちに収容などできようか。専門の医者はどうするのか看護師はどう手配するのかも言わず、自分は安全地帯に居ながらただ無責任に批判するコメンテーターや評論家と云われる人々を見ると「あんたたちは万能なのか、無責任でお気楽な論評でお金が貰えてよいね」とテレビやネットの前で文句の一つも吐きたくなる。

 

今回の騒動では、船長やプリンセス・クルーズのアメリカの運航会社に対して、彼らが早期に適切な対応をとっておればここまで状況は悪くならなかったと批難する向きもあるが、これまたちょっとお門違いではなかろうか。香港で下船した乗客がコロナウイルスに感染していると分かったのは2月1日土曜日(米国では1月31日金曜日)のことだ。船長としては、多分船医と相談した上でシアトルの運航管理会社にただちに今後の対策を打診したことであろう。仮にアメリカ側で事の重大性かつ緊急性にすぐ気がつき、当日中に厳しい対応方針を打ち出し本船に指示したとしても、どんなに早くとも船が指示を受け取れるのは日本時間2月2日(日曜)で東京湾に入る一日前である。

 

但しこれはベスト中のベストの対応で机上の空論だといえよう。クルーズ船の大規模感染といえばこれまではノロやレジオネラ菌であり、これらの対策マニュアルはあったであろうが、週末を前に直ちにウイルス感染の専門家の意見を纏め適切な対策を本船に指示すべきだったという批判は理想論でしかない。ダイヤモンド・プリンセスで感染された乗客・乗員、船内で長期留め置かれた方々はまことにお気の毒だったが、今回の騒動は「不可抗力」であろう。政府や関係者がしている必死の努力を無責任にディスるメディアを情けなく思うとともに、外野の無責任な報道にぶれることなく対策を施した政府や関係者、それに乗客を励まし続けた本船や船会社には拍手を送りたい。ただ今回の事態が収束したら外国籍クルーズ船の検疫や疾病対策、関係法令・条約や感染症に関するマニュアルの見直しや検証などは関係諸機関で検討されたい。

2020年2月20日 (木)

ダイヤモンド・プリンセスと旗国主義

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姉妹船:サファイア・プリンセス 2009年メキシコ、カボサンルーカスにて

外国船の船内は一歩踏み入れれば「外国」である。今回のダイヤモンド・プリンセスは船籍港が英国のロンドンだから、本船が日本国内の港にいてもその船内は英国であって、日本の税関の許可を得なければ陸/船の往復さえできない。一方で日本籍の”飛鳥Ⅱ”や”にっぽん丸”のクルー ズ客船旅客運送約款には「この運送約款は、日本法に準拠し、この運送約款に関する紛争は、当社の本社又は主たる営業所の所在地を管轄する裁判所に提起されるものとします」とあり、同様にダイヤモンド・プリンセスのクルーズ約款も「クルーズに関連して生ずるすべての請求は英国法を準拠法とします」と記されている。今回のダイヤモンド・プリンセスの騒動に関するニュースでは、最近になってネタがつきたのか盛んに「旗国主義」なる言葉が散見され、英国籍の本船と本国の関与がいかなるものかの報道がなされているが、どれも「ちょっと何を言ってるのかわからない?」という類いの記事ばかりだ。本船はたまたま英国が旗国だったが、バミューダやバハマ籍などの客船で同じことが起きればどう云われただろうかイメージが湧かない。「旗国主義」と一口に云っても、世界中で運航される船舶上でおこるさまざまな出来事は複雑で、主義と現実に起きる出来事が一致しないことが多く、今回のような的を得ない解説がなされるのもやむを得ない。


旗国主義による困難な紛争といえば真っ先に浮かぶのがTAJIMA号で、これは2002年に日本の海運会社が実質的に所有・運航するパナマ籍の大型原油タンカー"TAJIMA"号上でおきた殺人事件である。同船はペルシャ湾から姫路港に向け原油を輸送中、台湾沖の公海で日本人の航海士が行方不明になり、この航海士を殺害して海に突き落としたとされた2名のフィリピン人船員の捜査・裁判を巡りもめた事件だ。姫路港にTAJIMA号が到着しても日本の警察や保安庁は被疑者を拘束することはできず、フィリピンも国外犯を裁く法律がないため事件は宙に浮き、結局被疑者たちは一か月以上、本船の居室に留め置かれることとなった。検疫の問題とはいえ船室に拘束されるのは今回の例でも同じようにおきたことだ。当時、海運界は法務大臣など関係大臣に対し被疑者を一刻も早く上陸させる等の措置を講じるよう要望したものの、わが国の法制上はアクションを起こすことは困難であるとして認められなかった。最終的にフィリピン人被疑者両名は便宜置籍国にすぎない「旗国」パナマに引き渡され、同国で裁判が行われ無罪になったのだが、このような事件に対して国際的にも国内にも適用する法律がない事が問題になり、事件の翌年に日本では国会で刑法の一部改正が行われている。「旗国主義」と一口で言っても、事件がおきた時の実際の処理はそう簡単ではないのである。


さて今回のコロナウイルス問題では、ダイヤモンド・プリンセスを横浜港の大黒ふ頭に停泊させ、乗客を隔離させたことが正しかったかどうかが議論になっている。もしダイヤモンド・プリンセスの船長が旗国主義を盾に、今回の措置に疑問があるゆえ日本の防疫体制に従わないと宣言していたらどうだっただろうか。考えられる事はその場合に日本の当局は「それでは日本国の領海外に退去してください」というだけで、ただちに本船は多くの感染者を乗せながら、英国法ないし英国流の処置が受けられる国を探さねばならなかっただろう。領海を無害通行している時には船内で旗国の法令が適用されても、いったん本船が港に入ってしまえば、旗国(本国)主義よりまず寄港国の法律・慣習の適用を受け入れざるをえないのが実務だと云えよう。それが嫌なら何の助けも得ずに再び外洋に出て、自ら助かる方法を考えるしかないのだがそんなことはまず不可能だ。ましてやダイヤモンド・プリンセスには日本人の乗客が多数乗船し、横浜がこのクルーズの最終下船地であることを考えると、「旗国主義」を押し出し何らか違った展開があったかの想像をする事にあまり意味はないだろう。今回は旗国主義の出番はなかったようだが、ただこの問題を契機に、国際海洋法条約に関する新たな取り決めが今後なされることを期待したい。

ダイヤモンド・プリンセスの船尾に翻る英国商船旗 2014年4月基隆にて

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2020年2月 6日 (木)

ダイヤモンド・プリンセス騒動

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2014年4月基隆港の”ダイヤモンド・プリンセス”
Holland America Lineの”フォーレンダム”号船上から

新型コロナウイルスの感染で、「初春の東南アジア大航海16日間」から帰ってきた11万6千トンのクルーズ船”ダイヤモンド・プリンセス”の乗客2700人が14日間も船内に留め置かれることになった。乗客はこの間、自室から出られず、窓のない内側キャビンの乗客などは外の様子をうかがおうとしても、部屋のテレビに映るブリッジからの映像しか見られないはずだ。僅か16㎡の内側キャビンの乗客たちは閉じ込められた2週間、ただテレビを見るか、無料開放されたと云うネットでパソコンやスマホで無聊を慰めるしかない。食事は部屋に配られるようだが、アルコールなどは注文できるのだろうか。洗濯はどうするのだろうか。クルーズ船だけ悪く目立っているが、この調子なら飛行機の機内の感染はどうなのだろうか。※注(下記)

 

数年前、乗船した飛鳥Ⅱがホノルルでコーストガードの検査により一晩出港差し止めになったことがあった。乗客は町の喧騒を前に上陸できず船にとどまっているしかなかったが、自由に船内を移動できるその一晩でさえ待っている時間はイライラしたものだ(もっとも妻はクルーズが延びてゆっくりできるとよろこんでいたが)。今回は長期にわたる自室留め置きで、楽しいはずのクルーズなのに、乗り合わせた乗客の気持ちを考えるとまことに同情の念を禁じ得ない。一方で1000人以上乗っている本船のクルーはどうしているのだろうか。食堂のサービスクルーやデッキクルーの一部も「濃厚」に乗客と接しているはずである。下の職位のクルーはふつう数人で部屋を共有してるが、彼らも部屋から出られないのだろうか。船内感染を防ぐためなら乗客だけでなくクルーも同じ処置になるのかと思うも、その辺りのことはまったく報道されない。


閉ざされた小ワールドであるクルーズ船では集団感染がおきやすく、しばらく前にノロウイルスによる食中毒事件も話題になったことがある。現在も香港の啓徳クルーズターミナルでは大型クルーズ船がダイヤモンド・プリンセスと同様に、コロナウイルス騒ぎで立ち往生していると報じられている。もっとも世界はクルーズ船ブームで、新造客船を作る造船所はどこも数年先まで建造予約で一杯だ。ことに中国人マーケットを意識した新造大型船の案件が目白押しのなか、今回の中国を発端とする騒ぎでこのブームも冷や水を浴びせられるのかもしれない。建造計画がキャンセルされたり複数船を建造するオプション契約の行使が見合わされたりする事も想定されるが、考えてみるとこういう時こそ船台の空いた造船所で船を造るチャンスではある。船の価格はブームか否かで大きな差がでるもので、飛鳥Ⅱやにっぽん丸など老朽クルーズ船の代替に頭を悩ます邦船社には、新造発注の好機がやってくるかもしれない。


さて”ダイヤモンド・プリンセス”は乗ったことがないが、本来ダイヤモンド・プリンセスと命名されるはずだった姉妹船の”サファイア・プリンセス”には10年ほど前にロス発着のメキシカンリビエラクルーズで乗船したことがある。この時は日本人はごく少数だったが、天気に恵まれ広く大きな船体で楽しい思い出が一杯だった。同型船である渦中のダイアモンド・プリンセスは日本近海でクルーズを展開するために、改造工事を経て大浴場など設置され人気も高く、我々もいつかは乗ってみようかと思っていたところだ。今回のコロナウイルス騒動は春にかけてなかなか治まらないという予想もあるし、欧米では中国人だけなく今後アジア人全体が差別的取り扱いを受ける危惧もありとの観測もあるようだ。しかし高齢者に優しく家族で乗っても楽しくラクチンな旅行形態がクルーズである。一刻も早く事態が収拾され気兼ねなく世界の国々をクルーズする日が早く戻って来るように祈りたい。

※注)その後のニュースで内側キャビンの乗客は、時間を限りプロムナードデッキに出られるようになったとされている。まずは良かった。

2019年11月11日 (月)

にっぽん丸の事故(4)米国運輸安全委員会調査報告書

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昨年12月30日にグアム・アプラ港で起きた”にっぽん丸”桟橋衝突事故に関して、10月23日に米国運輸安全委員会・NTSB(National Transportation Safety Board)から事故報告書が出された。このブログでも今年1月に3回アップした通り本件に対して興味を持って見守ってきたが、今回のNTSB事故報告は簡潔明瞭に作成されているでその概要に沿って以下所見を述べたい(日本の国交省運輸安全委員会の事故調査報告書は現在調査中)。
にっぽん丸のグアム事故(2019年1月12日)
にっぽん丸のグアム事故(その2)(2019年2月2日)
にっぽん丸のグアム事故(その3)(2019年2月11日)

<事故概要>
事故はニューイヤー グアム・サイパンクルーズ催行中、昨年12月30日夜21時13分にグアムのアプラ港で発生した。当時の気温は摂氏27度、北西の風5メートルで海上は静穏であった。本船は次港サイパンに向け出港準備を整え2050にパイロットが乗船、船首には一等航海士、船尾に二等航海士、ブリッジには船長の他に三等航海士が出港ワッチに当たっていた。2104に最後の係船索が解かれ本船は船長がウィングブリッジにあるジョイスティックを操作し離岸、港内で後進・回頭して出港しようとするなか(画像)、船は後進で対岸の米沿岸警備隊(COAST GUARD)のドルフィン(係船岸壁)に2113に船尾から衝突、50万ドル以上とされる被害を岸壁に及ぼした。

<事故時操船状況>
船長は本船に28年間、船長として6年乗船し当港には10回寄港、同じパイロットの嚮導で操船した事もあって港内の状況は良く知っていた。またパイロットが乗船した時間に船長はブリッジにおらず、にっぽん丸の会社=商船三井客船(MOPAS)の品質管理基準で必要とされる船長とパイロットの出港手続きに関する確認はなかった。ジョイスティックを握る船長は後進旋回中に見当識を失った(lost sense of orientation)らしく、ジョイスティックを誤ったポジションである後進をかけたままにし、行き足がつきすぎて3ノットで船尾から対岸にぶつかった。

後進中、パイロットはDead Slow Ahead(微速前進)、Hard Port(左舵一杯)、Half Ahead(半速前進)など、後進衝突を止めるべく船長に指示をしたが、船長のエンジンに関する復唱はなく操船は変らなかった。この間、船尾の二航士やタグボートから対岸が迫ってきた事を告げる報告が数度あり、パイロットはタグに衝突回避のためよりパワーを要求、ブリッジの三航士もジョイスティックの位置がFull Astern(全速後進)になっている事を船長に告げ、船長からジョイスティックを取り上げようとしたが船長に阻止(rebuff)された。

<事故後の検証>
怪我人が出ず本船の浸水もなかったため、にっぽん丸は一旦出港した岸壁に戻り、Coast Guardの調べを受けている。そのインタビューで船長は、当日1300に缶ビールを1本、1700~1800にウイスキーのソーダ割缶を1.5本、事故後に"To calm mind"(落ち着く)の為に缶ビール1本呑んだと供述しているが、事故後5時間の呼気アルコールは0.071ℊ/dlで、もっとアルコールを呑んでいたのではないかと報告書は推測している。なお米国の操船基準は0.04ℊ/dl、MOPASの基準は0.03ℊ/dlとの事で、我が国のクルマの酒気帯び運転は0.015ℊ/dl、飲酒運転は0.025ℊ/dlである。

NTSBの報告書は船長が飲酒の上、ジョイスティックを誤って操作した事が事故の主因としているが、ブリッジの三等航海士の証言では「船長にはブリーフィングや報告は要らない」と云われ、船内のコミュニケーションが良くなかった(power distance)状況があった事や、パイロット乗船時に打ち合わせがなかった事、本船オフィサーが日本語で報告しあっているのに対しパイロットやタグは英語でお互いに状況把握が十分でなかった事も事故の要因に挙げている。

<私の感想>
こうして見ると、この事故は最近のアクセルとブレーキの踏み違いの自動車事故と似ているような気がする。ドライバー本人は一生懸命ブレーキを踏んでいるつもりでも、足はアクセルを踏み続けてクルマが暴走し事故が発生すると言われるが、本船の船長も周囲から度々危険が迫っている指摘を受け、ジョイスティックをAstern(後進)からAhead(前進)にしているつもりが、実際はAsternのままで手が動いていなかったのではなかろうか。飲酒していることや日頃からブリッジ内のコミュニケーションが良くない事が、冒進の歯どめを失わせる事に繋がったのだろう。

さて今年の夏に小笠原クルーズで久しぶりに”にっぽん丸”に乗った際は、船長を補佐する副船長が乗船している上、着桟の際のエンジンの速度調整はジョイスティックでなく、ウイングの船長がブリッジ内の3航士ないしはクォーターマスターに口頭で指示する伝統的なやり方になっていた。MOPASも事故に懲りて様々な事故対策を実施しているようである。戦前から一貫して貨客船・移民船を運航し続けて来たMOPASは、この事故を機に見直すべき点は是正して今後は安全運航を期してもらいたい。

2019年11月 7日 (木)

2019 飛鳥Ⅱ 秋の休日ウイーンスタイル クルーズ(3)

20191107

もう一つ、この航海ウイーンスタイルクルーズのオマケが、上野・国立西洋美術館で開催中の「ハプスブルグ展」の鑑賞券だった。オーストリアといえばハプスブルグ家である。オーストリアと日本の国交150年を記念して、同家の600年に亘る帝国コレクションの一部がこの秋から上野で展示されているそうで、その入場券が乗船記念についてきた。私はこれまで音楽は好きでも美術にはあまり興味なかったが、なんでも「参加」してみるとそこに新たな発見があるから、最近は名画と云われるものは一応見てみようかと心掛けている。せっかくの「ハプスブルグ展」鑑賞券である。ウイーンスタイルクルーズ乗船を機に、また新たな分野を知るのも良いかもしれない。

さて飛鳥Ⅱは来年初めからシンガポールのドックでリニューアル工事を実施する。リドカフェやリドガーデンが改装され和洋室のキャビンが登場するなど工事が行われ、その一環で従来あったパドルテニス用のウインブルドンコートが、ドック後は露店風呂のスペースになってしまう。本船は他のクルーズ船に比べジョギングをしたり体を動かす設備が充実しているのがとても良いが、それでも長い航海日が続くと活動がマンネリ化してくるものだ。そこで私たちはグローブと軟式野球のボールを持参し、夕食前など誰もいない時間を見計らい時々ウインブルドンコートで夫婦でキャッチボールをしていた。2011年の世界一周クルーズではフィトネスのインストラクターが高校時代に女子野球部で、彼女を誘ってはその剛球に驚いたのも懐かしい。

そんな思い出の場所が来春から改装されなくなってしまうので、今回はグローブと軟球を持ち込み、夫婦で「思い出のお別れキャッチボール」をしてみた。我々からすれば今の大浴場があれば充分なので、露天風呂などを造るより運動スペースや自由に使える空間のままが良かったのだが、飛鳥クルーズの発展のための工事だろうから仕方がない。ここでは通りかかるクルーや他の乗客から「こんな所で何してるの」と奇異な目で見られつつも、夕陽をバックに大海原でボールを投げるのが気持ち良かったから、妻は「この場所がなくなると思うとうるうるしちゃう」と最後のキャッチボールにやや感傷的になっていた。来年のドック明け、改装された飛鳥Ⅱがどんな内容で復帰するのか、最後のキャッチボールを楽しみながらその姿に思いを巡らせていた。

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