カテゴリー「映画・テレビ」の記事

2023年9月19日 (火)

VIVANT 最終回 ベキは死んだか?

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今日のジョギングの目的地は乃木が毎日参拝する神田明神(江戸総鎮守)

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ドラマでは境内のこの木の根元の小さな祠に別班に連絡要ありの菓子が置かれていた

最後はどのような結末になるのかと人口に膾炙していた日曜劇場”VIVANT” 全10話が、先の日曜日で終わった。最終回の当日は、大学生の姪っ子が「どうせなら皆で最終回を見ない?」と言ってくれたので、義妹宅に酒を持ち込み大画面テレビの前で一族パブリックビューイングで盛り上がった。国際的テロ集団テントのボスであるノゴーン・ベキ(役所広司)は、最終回に日本で亡くなるものと私は予想していたが、果たしてどういう終わり方をするのか、一同ワイワイと勝手に予想を言いながらスクリーンの前に集合である。前回からの流れを見ると、ベキが世界的に恐れられたテロ組織の強面のボスから、悲劇の人であり実は慈善活動家であったという面が徐々に強調されてくるのがシナリオのミソのようである。主人公の乃木(堺雅人)が、入社同期の中ではもっともドジなダメ商社マンだったのが、実は凄腕の別班諜報員だったと云う思わぬ展開と同じく、登場人物のキャラが何度も観る者の予想を裏切る筋立てである。


ベキが最後のテロの地として日本を標的にしていたのは、希少鉱物であるフローライトの利権を貪りバルカから富を奪おうとしているのを阻止するためで、日本政府の中枢を狙うのではないか、というのが事前の私の見立てであった。しかしその予想に反し半沢直樹ばりの権謀術策合戦の末、フローライトの利権問題はスッキリ早々と最高の形でけりがついてしまった。さて最終回はこの後、物語はどう展開するのか、クライマックスに向けてテレビを前に一層期待が盛り上がる。実はベキの「最終目的」とは、40年前に日本の公安警察官だったベキの一家を見捨てどん底の境遇に陥れた当時の公安の上司(橋爪功)に対する個人的な復讐だったことがドラマの最後に向けて分かるのだが、組織を率いる冷徹なボスであり、かつ慈善活動家、しかしながら己の憎しみの感情から一生逃れられないアンビバレントな人生にベキはどう決着をつけるのかが見ものである。40年前に生き別れとなりベキが探し続けた一人息子であった主人公の乃木(堺雅人)が、いみじくもそのベキの復讐劇を阻止するのが任務であったという、ギリシャ神話並みの二重の愛憎劇でドラマはクライマックスを迎える。


「皇天親無く 惟徳を是輔く」(こうてんしんなく、ただとくをこれたすく)。乃木がドラマの最後に、テントの鉱物採掘事業を継いだベキの養子ノコル(二宮和也)に呟いた言葉である。広辞苑にも載っていない言葉なので、ネットで検索すると「天は公平特定の人をひいきすることなく 徳行のある者を助ける」(ことばの森)とある。乃木の銃弾で倒れ、自分を陥れ今は政府の要人となっている元上司への復讐が果たせなかった父ベキは、実は乃木が急所を外して撃っており生きているのか?。凶行の場だった要人宅が全焼してベキらの遺体が全部煤になり特定不明というのがポイントではなかろうか。あるいはこの言葉は、乃木が父の遺志を引き継ぎ今後要人に復讐することを意味するのだろうか?。また乃木はノコルに「墓に花を手向けるのはまだ先にするよ」と語っている意味は何かなど、このドラマには回収されない伏線もまだまだ多数ある。この話以前のシーンでは薫(二階堂ふみ)が作った目玉焼きをなぜ乃木が動画撮影したのか、不敵な笑みを浮かべていた丸菱商事の長野専務は本当に何も事件と係わりがないのか、善人かどうかが直感でわかる少女ジャミーンはなぜ公安の野崎(阿部寛)に懐かないのかなど数々の疑問が、いつの日にか作られる続編で明かされることを期待しよう。

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2023年8月28日 (月)

VIVANT第7話 乃木の裏切り

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バルカへの機中、乃木は野崎に謎の言葉をかける

なんと云う話の進み方であろうか。昨日の"VIVANT"第7話では、バルカ国のテロ組織テントとの接触に成功した自衛隊別班(VIVANT)の乃木(堺正人)が、仲間全員に銃口を向けるという展開となった。実の父であるテントのボス、ノゴーンベキ(役所広司)になんとしても近づきたい乃木が、組織や仲間を裏切る大どんでん返しとあって、テレビを見ていて椅子から転げ落ちそうになった。サイボーグのような人生を歩んできた乃木が、急に距離が縮まった女医の柚木かおる(二階堂ふみ)と生まれて初めてのキスをし夜を明かしたことにより、にわかに人間としての愛情に目覚めたことをあらかじめ示し、愛の苦悩や肉親の情に絡めたストーリーに進展させるあたりは、「やはり!」と唸る脚本である。前のブログで「ここへ来てドラマは親子の愛情相克の模様も見せる」と記したとおりである。


しかし、このまま話は進んでいくのだろうか。そもそも話す事ができない謎の少女ジャミーンは人の心が読めるとされているが、彼女がバルカに旅立つ乃木に親愛の情を示し固く抱きつくのは、2重人格者の乃木が本当は善人であることを見抜いているからに他ならないはず。今回、乃木はバルカに向かう機内で、乗り合わせた警視庁公安課の野崎(阿部寛)の手をとって、ごく小さな声で何事かボソボソと囁く場面があるが、なぜいきなりそんな奇異な行動を彼がとったのかが今後のキーポイントになりそうだ。実はドラマのこの場面、乃木が小声で話す内容が、わざと聞こえ難くなるような謎めいた演出になっていた。最初は画面を見ても、注意散漫の私には彼が何を喋っているのか聞き取れなかったので、音声ボリュームを揚げビデオに撮った機内の場面を三度ほど見返してみた。


乃木が野崎に一言呟いた言葉は、「あなたは鶏群の一鶴、眼光紙背に徹す」であった。「鶏群の一鶴」とは広辞苑によると晋書(晋朝に書かれた歴史書)の言葉で、「多くの凡人の中にいる一人のすぐれた人のたとえ」とのこと。「眼光紙背に徹す」は「書物を読んで、ただ字句の解釈にとどまらず、その真意をくみとる」とある。「優れた人は目で見た物だけでなくその裏にある真実を理解する」という事をこのことわざは指している。すなわち乃木はこれから自分がとる裏切りの行動の真の狙いは、野崎には分かるはずだ、と云いたいのでないか。乃木ほどの訓練を受けた凄腕エージェントなら仲間を撃つ際に急所を外すことは難しくないであろうし、あるいは彼が裏切るのは最初から仕組まれた別班側のシナリオで、仲間が撃たれたフリをする出来レースであることが、野崎には理解してもらえるはずという筋立てだと想像する。


日本からモニターで監視している別班の女性ボスが、乃木の裏切りを見て「この事は口外しないよう」と周囲に指示するのも、全体の企みを口外しないようにすべしという意味だとすれば辻褄があう。乃木が仲間を撃つ銃撃現場近くに、回収部隊と思われる別班手配の輸送機が準備されていたのも、出来レースであることを示唆するのではないか。次回の予告編ショットでは、乃木に殺された仲間たちの棺を日本に輸送するらしいシーンが流れていたが、この種のドラマでわざわざ遺体を運ぶシーンを挿入するのも余りにわざとらしい。テントの中枢に迫るために、乃木が仲間を売ったふりをしているというのが、現在の私の見立てである。この後、野崎と乃木のハリーポッターに関する会話がどう回収されていくのだろうか。VIVANTは全10回シリーズと云われているから、まだ3回分ものストーリーがある。ベキはなぜテントのボスになり日本をテロの最終標的地とするのか、果たしてかおるは敵か味方か、話がどう話が進んでいくのか、ますます日曜日が楽しみになった。

2023年8月21日 (月)

福沢克雄(山越)とVIVANT

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TBSホームページより

福沢克雄原作・演出の日曜劇場VIVANT(ヴイヴァン)が面白い。報道面ではサヨク寄り偏向姿勢が際立つTBSだが、さすが「ドラマのTBS」が誇る伝統の旧「東芝日曜劇場」枠とあって力の入った超大作である。VIVANTはモンゴルで2カ月半ロケを行い、1回の放送に通常の倍の1億円の予算をかけたと云われるだけあって、毎週日曜の夜は映画を見るような気分でテレビの前に座っている。このドラマ、最初は思ったほど視聴率が取れなかったそうだが、息もつかさぬ展開と豪華なキャストで、茶の間でも徐々に評判になっているとのこと。VIVANTとは「別班」(べっぱん)が物語の舞台であるバルカ共和国の言葉風になまったもので、自衛隊内に編成された対テロ用の非合法秘密機関である。主人公の乃木(堺正人)は、総合商社・丸菱商事のしがないサラリーマンを装っているが、本当の姿は別班の工作員であることがドラマ進行とともに明かされる。別班が立ち向かうのが砂漠の国、バルカを拠点とする国際的テロ組織「テント」で、警視庁公安部の野崎(阿部寛)も時同じくして「テント」を壊滅すべく行動を繰り広げている。バルカに派遣され現地で医療を施していた女医の柚木(二階堂ふみ)や、少女ジャミーン(ナンディーン・エルデネ)が絡みつつ、往年の「スパイ大作戦」のように話は展開する。


VIVANTは全10話(らしい)のところ昨日8月20日で第6話が終了したが、ドラマ序盤でまぶされた伏線が回収され始め、話の輪郭が見えるようになってますます目が離せなくなってきた。私はこの手の展開が多くスピードの早いドラマに限らず、画面の人の顔が覚えられないばかりか、セリフの内容もすぐには頭に入らないので、一緒にTVを見ている妻に「これどういうこと?」と尋ね、「え、わからないの」とあきれられる事しばしである。そのため番組を録画しつつ、追っかけ再生でCMの時間に少し戻しては妻の解説に頷きながらの視聴である。丸菱商事ではぼんくらの乃木が、なぜ国際テロ組織があるバルカ国のプロジェクトに向き合う部署に配属され、ドラマの発端となる誤送金事件に巻き込まれたのか、たまたまにしては偶然過ぎる筋立てと思っていたが、昨日は私のような者にもその理由がわかるラストの場面。ストーリーは伏線を丁寧に回収し、因果関係も見る者を納得させる展開だといえよう。(因みに乃木の勤務する丸菱商事のロビーは、新しくなった大手町の丸紅本社ビルをロケ地にしている)


乃木や野崎が追うテントのボス、ノゴーンベキ(役所広司)の正体は、乃木が幼い頃に行方不明となった実の父親であることが分かり、ここへ来てドラマは親子の愛情相克の模様も見せるなか、乃木との距離を急に縮める女医の柚木は何者かが興味をひく。私は彼女やジャミーンが絡んだ大ドンデン返しがあると予想しているが、今後この2人がどう物語に関わってくるのか楽しみだ。また一癖ありそうな丸菱商事の上司たちもこのままで終わるのか、ドラム(富栄ドラム)は本当に言葉が話せないのかなども注目である。原作者であり演出の福沢克雄は半沢直樹シリーズでも名を馳せたが、旧姓は山越で福沢諭吉の玄孫であるばかりでなく、慶応蹴球部(ラグビー部)時代はロックの名選手であった。慶應は1985年のラグビー関東大学対抗戦グループでは4位ながら、続く大学選手権決勝で明治大学と引き分けて両校同点優勝。山越は抽選で進んだ日本選手権で社会人優勝のトヨタ自動車を破り10年ぶりに学生が王座を奪った折の選手で、私は当時のNHKテレビ中継のビデオテープを今でも大事に保管している。あの時ラグビーで我々をテレビの前に釘付にさせた彼が、今度はドラマで多くの人を興奮させていることがなんとも印象的である。

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1986年2月ラグビー誌ゼロワン 中央で日本選手権優勝トロフィーを掲げるのが福沢克雄(旧姓山越)

2023年3月 2日 (木)

リバーサルオーケストラ

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日本テレビで水曜日の夜10時から放送されている連続ドラマ「リバーサルオーケストラ」を毎週楽しみに見ている。地方のプロオーケストラを話の中心に据えた珍しいドラマである。クラシック音楽の演奏家という人たちは、才能に加え子供の頃から大変な努力を重ね、専門の大学で研鑽を積むはずだが、そんな彼らでもプロのオーケストラの団員になるのは実に狭き門だと聞いてる。私の友人の娘さんも幼い頃からピアノの才能を認められ、音大付属高校から音大に進み、有力な先生に師事して、大変な時間と費用を使ったものの、結局プロのクラシック演奏家にはなれなかった。音楽家とは実に厳しい世界で生きているものだと思うが、演奏会の時だけでなく町で大きなチェロのケースなどを背負った演奏家を見ると、彼ら彼女らはどういう気持ちで日々音楽に向き合っているのだろうかと興味を掻き立てられる。という事で全10話とされる「リバーサルオーケストラ」を見始めた。

 

「リバーサルオーケストラ」は、主人公でトラウマを抱えた元天才少女バイオリニストの谷岡初音(門脇 麦)と、田舎のポンコツオーケストラ立て直しのためにドイツから呼び戻された期待の若手指揮者、常葉朝陽(田中 圭)を中心に話が進む。特別に美人というわけではないけれど、とても感じの良い女の子という風情の初音と、照れ屋で独善的、クールで頑固だが本当はやさしいマエストロの朝陽の2人によって、仲良し集団の緩いオーケストラがどうプロ集団に変わっていくか。ビオラ主席の濱田マリやオーボエ主席の平田満など演技達者な脇役によって紡がれるサブストーリーが加わりながら、団員が徐々に覚醒し脱皮することが見る者に伝わる筋書きである。オーケストラを潰したい勢力の権謀術策もあって話は一難去ってまた一難、かつて音楽で蒙った心の傷を初音がどう克服するのか、さらにお約束の恋愛話も絡めて毎回飽きることがない。ちょうど2019年に話題になったTBS日曜ドラマ「ノーサイド・ゲーム」のラグビーボールをクラシック音楽に置き換えたような展開だと言ったらよいだろう。


ドラマの幕間で流れる音楽はクラシック音楽の名曲が番組に合うようにアレンジされて耳に心地よい。感心するのは出演する役者たちの楽器を演奏する演技の上手なことだ。弦楽器を扱う際の弓の使い方や弦の押え方、管楽器演奏の時の頬の表情や息の吹き方は、役者の後ろで演奏する神奈川フィルの本チャン演奏者とさして変わらないように見え、本当に役者たちが音を出しているかと錯覚するほどである。田中圭演じるマエストロの指揮ぶりも評判が良いようだ。クラシック音楽やオーケストラがテーマになっているのにも拘わらず内容が親しみやすくこなれているのは、脚本や演出、構成がこの道に造詣の深いスタッフによってなされているからだろう。本物のクラシック音楽演奏家たちが「リバーサルオーケストラ」を見れば、「これあるある」とか「これはないなー」と会話が盛り上がるに違いない。さあドラマも終盤、初音と朝陽はどうなる?オーケストラは存続するか?この後が楽しみだ。いつも番組を見終わると音楽心が刺激され、真夜中に電子ピアノに向かってみたり、ドラマの中でオケが演奏した曲のCDをかけて夜更かしになってしまうが、それもあと僅かか。

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2022年6月25日 (土)

トップガン マーヴェリック(TOP GUN MAVERICK)

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トム・クルーズ主演の評判の映画”トップガン マーヴェリック"を日比谷東宝シネマIMAXシアターに見に行った。彼主演、1986年の"トップガン”以来36年ぶりに作られた続編である。もっとも第一作から随分と時間が過ぎたため、以前の映画の中身はかなり忘れてしまった。なのであらかじめ自宅テレビのamazon Prime Videoで前作を視聴し、前話の展開や様々なシーン、登場人物のあれこれを復習して久々の映画館行きに備えることにした。CGを使わないため俳優たちが厳しい訓練を経てようやく撮影が可能になったと云うジェット戦闘機の操縦シーンが、最新の映像・音響でどう表現されるか、amazonで第1作目を見ているうちに期待に胸がふくらんでくる。一方で現在の風潮に影響され、ポリコレやら(いわゆる)反戦・人権、はたまた(いわゆる)男女平等などに影響された面倒くさい作品になっていやしないだろうかと若干の危惧も持ちながら映画館に入った。


始まってみればそんな心配はまったく無用、2時間以上の上演時間はあっという間に過ぎ去る娯楽超大作で大いに楽しめた。映画では戦闘機に設置した6台のカメラで撮られた強烈なG(重力)でゆがむ俳優の顔や、立体音響のジェットの轟音がIMAX シアターで臨場感たっぷりに迫って来る。最近の軍隊をテーマにした作品は妙に戦争や軍隊の不条理を滲ませるものが多いが、ここではあっけらかんとただただ痛快無比、「ハラハラさせつつも最後は恰好よく勝つ」という戦争映画の基本を見せてくれるのが実に気持ちよい。そう云えば、60年半ばにテレビでアメリカ製の「コンバット」という連続戦争ドラマが流行り、我々世代の少年たちは戦闘ものに熱中したものだ。毎週サンダース軍曹率いる米軍の歩兵小隊がドイツ軍を撃破するストーリーだったが、”トップガン マーヴェリック”を見ると、”コンバット”に傾倒してテレビにかじりつき、最後は自らが戦場で敵を破ったかのような爽快感に浸っていた当時のことを思い出した。


本作を見ながらすぐに気が付くのは、これがトニー・スコット監督なる前作へのオマージュ(尊敬・敬意・賛辞)作品であるということ。冒頭トップガン同期のアイスマンが大将(ADMIRAL)になっているのに、トム・クルーズ扮するマーヴェリックがまだ大佐(CAPTAIN)に留まっているというのが、前作の後の彼の生きざまを暗に示している。そして前作で死んだグースの息子ルースターとの邂逅から、第2作目の人間ドラマが展開するストーリーが新旧作品を実にうまく繋いでいる。良い感じに渋くなったトム・クルーズはさておき、亡くなったグースの再来かと見まごうルースター役のマイルズ・テラーも正に適役である。第一作目の主力機だったF14トムキャットは今は米海軍で全機退役しているが、実は海外でこの機種を購入したのがただ一国イラン空軍であった。今回の作品でイランを示唆するかの「ならずもの国家」の基地にあったF14の思わぬ活躍は、前作の経緯を踏まえつつも事実を織り交ぜた極めて巧みな脚本だと云えよう。


その他、次々とスクリーンに展開するシーンは、ほとんどが前作と何等かの繋がりを示している。登場する機材はF14からF18スーパホーネットとなったが、カワサキのバイクで滑走路を疾駆するマーヴェリック。ガールフレンドの愛車はポルシェ356からポルシェ911に。ピアノを弾きつつ「GREAT BALLS OF FIRE」を酒場で歌うグースとルースター。トップガンたちのビーチでの球技。帰投するマーヴェリックのフライバイと管制塔の指揮官。空母上のオペレーションシーンなど前作を見た者には都度ニヤっとさせられるオマージュ場面のテンコ盛り。お馴染みテーマ曲"DANGER ZONE"や"TOP GUN ANTHEM"も作品に合って耳に心地よい。来る前にしっかりと予習してきたので、「あ、これ!これ!」と妻と2人して暗い館内で頷きあう事しきりである。この作品は「かつて前作を見たシニアは昔の映像で涙腺が緩み、初めて見る若者は純粋に感動する」のがネット上の評判らしい。前作”トップガン(無印)”を観て予習をしてから本作品を見ることを是非お勧めしたい。”イャー、映画ってほんとうにおもしろいですね、サヨナラ、サヨナラ、さよなら”(混ぜてみた)。

2022年3月29日 (火)

「カムカムエヴリバディ」の英語

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NHK朝の「カムカムエヴリバディ」に毎朝チャンネルを合わせている。朝の連続ドラマをきちんと見るのは2020年前期の古関裕而氏を描いた「エール」以来だ。「カムカム」はストーリ展開がテンポが良いうえ、出演する役者の持ち味を活かした演技が見ものである。画面を見つつ出演者の演技に思わず拍手を送ったり涙をもらったりで、「いや、プロの役者というのはやはり凄いな」といつも感じている。ただこの種のドラマで気になるのが、英語を喋る際の役者のセリフ。日本語の場面ではあれだけ間合いを決めたり、わざと言い淀む、あるいは言葉に詰まった喋り方で情感を繰り出す彼らが、英語になると長い言い回しでも余りにもすらすらと一気に喋ってしまうのがなんとも不自然である。

 

海外はアメリカしか住んだことがない私がしゃべる英語を聞いた妻は「あなたはYou Know派なのね」と笑うが、高校は英国の現地校を卒業した彼女にとっては"You Know"は米語であり英国ではあまり使われないフレーズだと言う。このアメリカ人が頻発する"You Know"の他にも"Well"や”"Umm" "Lets see" "I see"などと繋ぎのフレーズなどでちょとした「間」を取りつつ、次に何と言うか頭の中でつらつら考えつつ喋るのが我々の英会話の実際である。よって相当の英語の達人やネイティブの役者でもない限り、長い文章を喋る際に相当の「間」やらかなりの間投詞が入ってくるはずである。劇中、日本語では実に上手に演技をする役者たちが、英語のセリフとなると書かれた文章をよどみなく読み上げる調子になってしまうのは、まことに日本人らしくなくリアリティに欠けて聞こえる。

 

と偉そうなことを書いてみたものの、最近は英語を聞くのにめっきり耳が悪くなったことを痛切に感じる。一昨日はカムカム冒頭の"Ten yeays has passed"というナレーションを、"Can you hear that?"と言ったのか妻に尋ねると、「全然違う、あなた耳は大丈夫?」と呆れられてしまった。最近受けた健康診断の聴力検査は「異常なし」なのでこれは機能的な問題ではないらしい。仕事から離れ身近に英語を使った会話をする必要がなくなった事と、真面目に英語を聞こうという意欲が欠落してきたがことがこの聴き取り力の減退になったに違いないと自己分析をしている。対策として、かつてよくやった新作DVDを買い英語字幕モードで繰り返し見ることをまたやってみようかと思っている。

2021年7月12日 (月)

大谷選手と「エンジェルス」 ANGELS IN THE OUTFIELD

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テレビは武漢ウイルスを煽り、コロナ脳ばかりを刺激する馬鹿げた番組ばかりだが、その中でMLBロサンジェルス・エンジェルスの大谷選手の活躍を見るのは楽しみだ。オールスターゲームを前に打っては33本のホームラン、投げては先発登板で4勝とその2刀流はとどまることを知らない。なにより野球少年がそのまま大きくなったようにのびのびとプレーする姿が溌剌としており見ていて気持ち良い。彼はいまベースボールをやっていて毎日が楽しくて仕方ないのだろう。毎朝のNHK-BS放送でMLB中継が始まるとルーティーンのテレワーク事務を後回しにして、妻と二人で赤いユニフォームの大谷君をウォッチする日々となった。画面から流れるアナハイムのエンジェルススタジアムは、大半の観客がマスクをせずに観戦をしていて羨ましい限りだ。プロ野球もJリーグも大相撲も観客を入れているのに、オリンピックは無観客だというまったく訳の分からないわが国とは大違いである。


現地から中継される映像を眺めていると、エンジェルスのピンチやチャンスの場面で一部のファンが座席から立ち上がって両腕を羽ばたくように揺らしている時がある。そうだ、これは1994年公開のディズニー映画「エンジェルス」を機にこのスタジアムで見られるようになった風景だと思い出して、家にあった「エンジェルス」("ANGELS IN THE OUTFIELD")のDVDを書棚から取り出し久しぶりに鑑賞した。この作品はピッツバーグ・パイレーツを舞台にした1951年の映画"ANGELS IN THE OUTFIELD"をディズニーがリメイクしたもので、設定をディズニーに縁が深いロサンジェルス・エンジェルスに変更し「信じれば夢はいつか叶う」をテーマにした同社らしいファミリー向けの夢物語である。テーマ曲や作品のバックに流れるランディ・エデルマンの音楽も明るく雄大で、きっとどこかで耳にした人もあるだろう。


DVDの解説にはこうある。「今シーズン、カリフォルニア・エンジェルスはリーグ最下位のドン底状態。母親と死別し父親とも離れて暮すロジャーは、父親が別れ際に気休めに言った”エンジェルスが優勝したら一緒に暮らせる”を信じ、夜空の星に祈った。数日後、エンジェルスの試合を観戦していたロジャーは、不思議な光景を目にする。突然、空から天使が現れ、絶対絶命のエンジェルスの守備を助けたのだ。驚く彼の前にアルと名乗る天使が登場し、こう言った。”私たちの姿は君にだけ見える。君が祈ったから来たんだ”と…」。果たして天使たちの助けを得たエンジェルスは優勝することができるのか、優勝したら一緒に暮らせると言った父親の言葉を信じるロジャーの願いは叶うのか、ストーリーはシンプルだがユーモアあり、アメリカの抱える問題を映す場面あり、思わずほろりとする場面もあり、気軽に楽しいひと時が過ごせる映画であった。このような夢の舞台で思う存分力を発揮できる大谷選手は何と幸せなことか、彼の益々の活躍を祈りたい。


大谷選手の中継放送を見ていると映画で演じられたように手を振るエンジェルスの応援風景が見られる
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2020年9月22日 (火)

これぞネタバレ?半沢直樹

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妻が飛鳥Ⅱの図書館で借りた「銀翼のイカロス」

サラリーマンが日ごろ感じる組織へのうっぷんを晴らしてくれる番組「半沢直樹」の第2クール、10回シリーズもいよいよ来週で最終回だ。主人公である半沢の活躍が痛快無比で、日曜の夜にこれを楽しみにしている視聴者がきわめて多いと話題となっているものだ。日ごろ、テレビはつまらないと不満を抱いていても、この番組は特別である。経営危機に瀕する帝国航空のメインバンク側再建プロジェクトリーダー半沢に対し、同航空への500億円の融資債権放棄を迫る白井国交大臣。それを拒否すれば銀行の過去のスキャンダルを明るみに出すと脅す白井のボスである箕部幹事長。その箕部が絡んだ過去の不正融資の証拠書類を、彼の圧力に屈して銀行の中野渡頭取が本人に渡してしまう、というのが9月20日までのストーリーである。信じていた頭取や大和田取締役に裏切られ「(箕部と頭取と大和田の)3人、1000倍倍返しだ~!」と半沢が叫ぶのが第9話のエンディングとあって最終回が大いに気になるところだ。


ということで、せっかちな私はあちこちネットで「最終回ネタバレ!」を探すも、台本の管理には秘密が徹底されているようで、なかなかこれというのにヒットしない。妻は原作の池井戸潤作「ロスジェネの逆襲」と「銀翼のイカロス」を前に飛鳥Ⅱの図書室で借りて読んだが、テレビドラマは原作からかなり脚色されているのでよくわからないと言う。では自分で考えるしかないので、連休を幸いビデオに録っておいた第9話の全シーンと各出演者のセリフを入念にチェックした。というのも、ここにきて劇中で交わされるごく普通の会話や登場者の何でもない仕草が、実は話の展開の重要な伏線になっていることが多いので、前回を再度見ればきっとヒントが隠されているに違いないと思い立ったものだ。それにしてもテレビドラマにこんなに入れ込むのも久しぶりだ。


さて何度かの会社合併を経験した私は、自分の出身母体に内在する問題をいかに新会社へ軟着陸させるかに腐心したが、「半沢直樹」で展開される合併に伴う葛藤や泥仕合はリアルに我が記憶に響いて「ああ、こういうのあるよね」と画面の前で頷くことしばし。銀行員だった妻も金融庁検査をはじめとする行内風景には「とても誇張されてるけど、ああ、そうだったと思うシーンが多い」と言う。このようにサラリーマンならほとんどが日常感じる「あるある」をベースにしながら、完璧な勧善懲悪の世界、一難去ってまた一難の展開、法律・コンプラインスぎりぎりの半沢の八面六臂の活躍、加えて出演の歌舞伎役者のツボにはまった好演などがこのドラマの魅力である。憂鬱な月曜を前に多くの勤め人が溜飲を下げる要素がテンコ盛りで、このドラマの視聴率が極めて高いのもさもありなんというところだ。


こうして第9話をじっくりと検証した後に感じた、最終回の我が推理である。頭取が箕部に渡した書類は実はコピーに過ぎず、原本は半沢によって世間に暴露され箕部は政界から放逐されると予想する。頭取も不正融資の責任をとって辞任。ポイントの一つはアンジャッシュの児嶋演ずる白井大臣の秘書・笠松だと思われる。東京中央銀行の伊勢志摩支店に乗り込み、半沢たちが調べた箕部に関連する帳簿を熱心に眺めるシーンは、最終回で彼が重大な役割を演じる伏線になっているはずだ。江口のりこ演じる白井大臣も最後は箕部ではなく半沢に有利に働くであろう。第9話で見せた箕部に対する不信顔もそうだし、テレビでは普段あまり見ない江口のりこをここまで引っ張るのは、演出側に大きな意図があるはずだ。最も大きなポイントが香川照之演じる大和田取締役に違いない。半沢と時に敵対しながらも時として心配そうに見守る役柄もそうだし、番組のスポンサーであるスバルと提携しているトヨタでは香川がいまCMの顔である。最後は彼のイメージを壊さない脚本が書かれる(ひょっとして頭取の後任)と思うのは考えすぎか?来週9月27日が第10話で最終だが、その最後はハッピーエンディングとはならず、またいずれ半沢が倍返しの逆襲で出てくることを示唆することでお開きになると思うが果たして如何に?

2020年9月11日 (金)

BS日テレ 友近・礼二の妄想トレイン

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「半沢直樹」や「YOUは何しに日本へ」などごく一部を除き、ニュースを含めて今の地上波のテレビ放送には見たいという番組があまりない。バカなタレントが並んでウイルスの恐怖を煽るワイドショーに、「放送しない自由」のニュースばかりでまるで面白くないのだ。その点BS放送の方がよほどまともで、ちょっと視聴してみようかというプログラムがこちらの方に多い (ただし韓流ドラマはご免蒙りたいが)。例えば夜の8時から10時まで放送されるBSフジのプライムニュースは視点もしっかりしており、ゲストコメンテーターもリベラルが多い地上波よりよほど信頼おける専門家が登場している。プライムニュースを見だすとつい最後までみてしまい、夜ももうこんな時間かと時計を見ては驚く。そのほか早朝のクルーズ船の番組もBSならではの放送で、いつも録画してはポスト武漢ウィルスのクルーズ再開に夢を馳せている。


BSで面白いのが、BS日テレで毎週月曜日の9時から1時間弱放送される「友近・礼二の妄想トレイン」だ。この番組は大の鉄道ファンであるお笑い中川家の礼二と、それほど鉄道ファンではないのだが好奇心満々の旅好き姐さん友近に、二人のゲストを交えて時刻表を見つつスタジオから架空の旅をするという設定となっている。毎回、主に東京をスタート地点としてゲストの好みの寄り道ポイントを経由しながら、設定された目的地まで鉄道のほか、グルメや景勝地を映像で巡る趣向である。番組はずぶずぶ鉄ちゃんのゲストと、それほど鉄分の濃くないもう一人のゲスト、それに女子鉄の久野アナウンサーが絡んで時刻表ベースに、料理や宿などの紹介が適宜織り込まれている。スタジオも、鉄道好きならいかにも考えそうな、列車や駅の銘板に囲まれた凝ったつくりである。


この番組は最新の車両や珍しい車窓風景も画面に多く登場するが、かつて都会で働いていた通勤車両が地方私鉄でまだ活躍している場面など、ロートルに敬意を表すかの鉄道愛あふれる場面が多いのがほほえましい。特に番組中で笑ってしまうのが礼二と毎回変わる鉄道好きゲストがしばしば掛け合いで行う、鉄道場面に関する声帯模写である。車内放送や駅の構内放送のものまねに始まり、電車や気動車の走行音や風切り音など、鉄道ファンなら「ここ!ここ!」と耳を傾けるポイントの擬音芸は秀逸で聴きごたえある。また友近や鉄でない方のゲストが、気動車を「電車」と言うと、さりげなく「電車でなく列車!」と礼二がツッコむのもお約束どおりで、鉄道ファンが安心して楽しめる内容となっている。旅番組というとグルメや豪華な旅館、温泉や寺社仏閣などに焦点が置かれがちだが、鉄道や時刻表を中心に旅を楽しむという切り口が新鮮で、毎回見終わると番組と同じ鉄旅をしたくなってくる。

 

2020年1月30日 (木)

「草花たちの静かな誓い」宮本輝

20200130

数年前に新刊で出版された宮本輝の「草花たちの静かな誓い」が、集英社から文庫本となって出たので早速読んでみた。私には2年前の「田園発 港行自転車」(2018年2月2日ブログ)以来の宮本輝である。物語は主人公である日本の青年が、アメリカに住む亡き叔母の莫大な遺産を整理するなかで、死んだことになっていた叔母の一人娘、すなわち彼のいとこに関する秘められた謎を解いていく筋書である。今回は珍しくカリフォルニアが舞台となり、かつ推理小説仕立てとなっているのが特徴だ。なぜアメリカなのかは、物語がすすんでいく中で解き明かされ、題名の「草花たち」も作中で違和感なく役割が与えられて宮本輝らしい嫌みのない小説になっている。謎解きといっても「息も継がせぬ場面の連続」ではなく、いつもながら「時間の流れ」を大切にした筋書で、いかにもと思わせるストーリーだ。


それにしてもこの小説の舞台設定とアメリカ生活に関する記述は、我々が彼の地を訪れた際に「なるほど!」「そうだよね!」と感ずるようなことが網羅されていて話の展開に厚みを加えている。叔母の家がロサンジェルスの高級住宅地パロス・ベルデスであるならば、作中に登場する弁護士や日系のガーデナー、プエルトリコ人の家政婦、旧ソ連系の探偵などがいかにも多く存在していそうだし、そういう彼らの会話から移民の国「アメリカ」の実態が垣間見えるように巧みに書かれている。アメリカで久しぶりに運転する際の右側通行に慣れるまでの緊張感や、このブログでも書いたように「日本人はコストコと呼ぶが、アメリカ人のほとんどはコスコと発音するのだ」などの記述も読んでいてニヤっとさせられる。プロットをつくるにあたり、作者は現地を訪れ人々の生活を注意深く観察したことがうかがえる。


謎解きの中で明かされるのは、幸せの絶頂から突如として不条理の世界へ陥ったが、強い「愛」の力で運命に抗おうとする叔母の生きざまと、それを支える人たちの勇気である。人間の業(ごう)の深さと、それに対する愛の強さをモチーフにするいつもの宮本輝ワールドが、ここでまた披露される。もっとも純粋なミステリーではないから、読者は小説半ばで筋の展開がだいたい読めるのだが、南カリフォルニアの情景や美しい植物、それに善意に満ちた周囲の人間模様が、凛とした生きた亡き叔母の行動を浮き立たせ最後まで読者を飽きさせることはない。物語の最後はプー太郎だった主人公が叔母の遺産をもとにアメリカで本気で事業を起こすという設定で、これも世代間の贈り物が若者の再生や希望に繋がるという作者の意図を示唆しているようで清々しい読後だった。

 

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