フェルメールと17世紀オランダ絵画展
上野にある東京都美術館で開かれている「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」に行って来た。ドイツ・ドレスデン国立古典絵画館のコレクションが来日しており、有名(らしい)なフェルメールの「窓辺で手紙を読む女」が今回の目玉である。これまでも何度か記してきたとおり、美術にはさっぱりの私も、最近は「少しは教養のある風に見えるジジイ」になりたい一心で、なるべく妻の絵画展鑑賞に付き合うことにしている。このような展覧会はクラシック音楽の演奏会と同じように、眉をひそめたくなるようなおかしな輩がまずいないし、最近は日時予約指定制の予約入場につき押すな押すなの大混雑がなく、落ち着いた空間でゆったりと時を過ごせるので気持ちが良い。
と言ってもキリスト教の素養がまったくない私には、西洋の暗い色調の宗教画などはどうも馴染めないのだが、この展覧会ではイエスキリストの磔刑画などはあまりなさそう、と妻が言ったのも今回は上野に足を運んだ理由である。館内の展示作品は光線を印象的に使った肖像画や、市井の人々を描いた精密画が多かったが、これは当時オランダで商業が発展し市民社会が形成されていたことと深い関係があるに違いない。17世紀にはまだ写真はおろか印象派の絵や抽象画も生まれていないので、パトロンであった貴族や豪商が絵画に期待するものは現在とはまったく違ったはずだ等と、美術史は門外漢の私でも色々想像してしまう。
さて肝心の「窓辺で手紙を読む女」は、窓から差し込む光で手紙を読む女性像で、フェルメールが自身のスタイルを確立した初期の傑作なのだそうだ。この絵には1979年のX線調査で女性の背後の壁面にキューピッドが描かれた画中画が塗りつぶされていることがわかったのだが、その後の調査でこれはフェルメールの死後に彼の意思とは関係なく何者かによって為されたことが確実になったとのこと。今回見ることができたものは、大規模な修復プロジェクトが2021年9月に完了して往時の鮮やかな色調や、キューピッド画が現れたオリジナル版であり、その展示はドレスデンでのお披露目に次いで世界初公開なのだそうだ。画中画が何故塗りつぶされたのか、なにやらこれだけで一冊の推理小説かドキュメンタリー映画が出来そうである。
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