カブリオレの屋根を開ける候
昨日の都内の気温は最高で約25℃、湿度が50~60%とあって、やっと過ごしやすい気候になってきた。今日も25℃ほどの予想とのこと。7月初めから3ヶ月に亘る猛暑も去り、ほっと一息である。この気温や湿度は東京で云えばちょうど5月終わりから6月初め頃のそれとほぼ同温・同湿になるが、同じ気候なら、私は初夏の頃よりこの季節の方が好きである。なにより毎日の日課であるジョギング(最近はウォーキングの日もある)に出る時、「これからますます気温が高くなっていく」と先を見て憂鬱になるより、「毎日寒さに向かう」と考える方が遥かに心理的負担が軽い。秋の気配が濃くなるに連れ、夏と同じ力で走っていてもスピードは自然と速くなるし、汗をかく量が減って呼吸が楽になるからである。妻はだんだん明るくなる春~初夏にかけての気候が好きらしいが、私は町の木々が徐々に色づいて落ち葉が散る風情の方により趣きを感じるのだ。
という季節になり、我がカブリオレのルーフも3カ月ぶりにオープンで走れるようになってきた。いまや車齢16年のおばあちゃんグルマとなったが、このところBMW自慢のシルキー6(直列6気筒)エンジンの吹け上りがとても気持ちよい。決してとばしたりはしないのだが、都内の道路でも時速20キロから60キロくらいまでの加速は、ツインターボの効果もあってアクセルコントロールが楽しい。ところで、これに乗っていると新たな出会いがあるものだ。今朝はマンションのガレージでルーフを開け出発しようとスイッチをオンしたところ、すぐ脇のクルマに乗り込もうとしていた小学校低学年の男の子が、「あ、屋根があく」と興味深くこちらを見ているではないか。じっと凝視される手前、ニコニコと彼に笑顔を向ければ、若いお父さん、お母さんがクルマから降りて手を振って挨拶してくれる。こうなると彼らとは今後エレベーターで会っても話を交わすことになるだろう。住人同士、普段あまりコミュケーションをとる機会がないマンションでも、このようにクルマを媒介として顔見知りができることもある。
その後、ルーフを開けて一人皇居近くを流していると、すぐ後ろから新しいBMWセダン(320)がピタリとついてくるのに気が付いた。なにか文句でもあるのかと注意していると、赤信号で停止した私の真横の車線にそのBMWがピタリと停まり、同じような年齢のドライバーが窓を開けて話しかけてきた。どうやら「クルマの調子はどうですか?」と彼はしゃべっているらしい。「以前、同じクルマに乗っていたんだけど、ルーフの故障などしませんでした?」と語りかけてくるので、「一回調子が悪くなって部品を代えたらエラク高くて参りましたよ」と答えると、「私も同じで、それは保険で直しました」などと交差点での会話が弾む。彼は「今乗っているこのクルマはディーラーの代車で、BMWアルピナの納車待ちなんですよ」と、どうやらきわめて高価な新車を待つワクワク感をカブリオレ仲間に話したくてたまらないようだ。「それは素敵ですね。早く納車されると良いですね」と共感しつつ、「最近のBMWのキドニーグリルは大きくなりすぎですよね」などと短い信号待ちの時間でも話は弾む。そうこうするうちに信号が変わって発進したが、その後はお茶の水付近まで2キロほど並走し、最後はお互いに手を振りつつ道を右と左に分かれた。都心の道路で見ず知らず同士でも、こんな出会いがあるのもカブリオレならではである。別れ際、彼が放った「オープンエアドライブ、楽しんで下さいね!」の挨拶が心地良かった。
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