飛鳥Ⅱ 秋の3航海乗船記 (番外編)
因島大橋をくぐって航海は続く
「飛鳥Ⅱ」の少し長めのクルーズに乗ると、いつも乗船している本船お馴染みの乗客の方々を見かける。彼らのなかには「旅行社には1週間以上のクルーズは全部押さえておいてと頼んでいるよ。キャンセルならいつでもできるから」という猛者もいれば、常時スイートを利用して「飛鳥Ⅱ」にとっては上得意のシニアもいる。しかしふと気が付くと、これら常連さんの中には最近見なくなった顔もある。「そう云えば、あの方は最近どうしているか知ってる?」と物知りの船友に尋ねると、「Aさんは病気で船に乗るどころではないようだ」、「ダンスの上手だったBさんも身体が不自由になって大変らしい」とか「Cさんはガンの手術をしたばかり」などとの話である。いつもキレイに化粧し一人で乗船していた女性が、この1年の間に亡くなったと聞くと、元気だったその笑顔を思い出し、もう彼女と船上では会えぬのかと不思議な気持ちになる。
こういう話を聞くにつけ、長期のクルーズに乗船するということは、まず健康に問題ないことが必須条件であることを改めて実感する。さらに身近に介護が必要な人がいないとか、自分の会社が倒産しそうなどという社会的問題がないことも必要だ。2011年に初めて世界一周クルーズに出た際には、ソマリア沖の海賊問題で航路が変わった上に、出発3週間前に東日本大震災があった。この時は「飛鳥Ⅱ」は通常の約款を変えて、出発直前でも乗客のキャンセルに対して無条件で全額料金を返却したが、天変地異や大きな事件がおきないことも長期クルーズ実現には欠かせない要件である。また新たな感染症の蔓延がない事やウクライナ、中東の戦乱が世界的規模に拡大しないことが、言うまでもなくクルーズの安全な催行のために求められる。シナの台湾進攻が近いと最近よく云われるが、目先でそのような事態が起これば日本近海でのクルーズ事業は多大な影響を受けることになるだろう。
などと考えると仮に金銭的に余裕があったとしても、退職したシニア世代が、長期に亘るクルーズ船の旅に出るというのはなかなかハードルが高いことになる。あらためてわが身を振り返れば、きわめて幸いにも今は大きな障害はなさそうだ。今回の10泊中には偶然にもグリーンフラッシュを見ることが出来たし、上げ膳、据え膳、露天風呂の毎日という波枕で、下船してみると又すぐに海の上が恋しくなってきた。我々には第二の我が家のように感じる飛鳥Ⅱも老齢船となっていつまで現役でいるのか分からないし、来年就航する飛鳥Ⅲは乗客一人一泊当たりの単価が1.5倍以上になるとのこと。飛鳥Ⅲは主に富裕層とインバウンド客を対象にしているそうなので、そうなると飛鳥Ⅲで長期クルーズに出ることは難しくなりそうだ。あれこれ考えると、思い切って2025年の「飛鳥Ⅱ」世界一周クルーズに行ってしまうかとの気持ちが益々強くなった。人生は楽しめるうちに楽しんでおかないと、これから先も何が起こるかわからないと理由づけを自分にして。
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