飛鳥Ⅱ 3航海乗船記 (3) 大洲観光と貸切観光列車 『伊予灘ものがたり』
3連続乗船の2航海目、その第4日目に飛鳥Ⅱは四国・愛媛の松山港に入港である。松山では 「 『伊予の小京都』大洲観光と貸切観光列車『伊予灘ものがたり』(軽食付)」の寄港地観光ツアーに参加した。かねてよりJR四国の観光列車 「伊予灘ものがたり」に乗り、海の彼方に沈む夕陽を見る駅、下灘駅を訪れたいと思っていたから、飛鳥Ⅱからこのツアーが出るとはもっけの幸いだ。その上、かつての城下町のおもむきを色濃く残し、最近は旅行会社のパンフレットなどでも紹介される大洲の町の見学まであるので、迷わずこのツアー参加を決めたものである。以前「"さんふらわあ きりしま”昼の瀬戸内感動クルーズ」で宮崎県の飫肥城を訪ねたように、個人ではなかなか訪れる機会のない隠れた名所に連れて行ってくれるのが、船による寄港地発のツアーの楽しみである。下船して貨切バスで一時間、その大洲の町を案内してくれた地元ガイドさんは、なんと本職が現役の市会議員であった。彼の口から語られる地元愛に溢れる解説で、町の名所や歴史だけでなく、財政や防災の話なども触れることができ、地方行政の一端を垣間見るような印象深い見学であった。
大洲観光を済ませ、いよいよ予讃線の八幡浜駅から松山駅行 16時14分発の観光列車「伊予灘物語」に乗車である。この列車はふつうは週末のみの限定運転なのだが、この日は日曜日にも関わらず、飛鳥Ⅱ貸し切り専用列車となって一般への切符販売は行われていなかった。ツアーの参加者は約50名で、JR四国の営業社員が飛鳥Ⅱを降りる時から貸し切りバスに同乗し、クルーズと列車のコラボに力を入れている現況を説明してくれた。「(JR九州のようには金のかけられないJR四国としては)水戸岡鋭治さんの内装という訳にはいかないが、社員が知恵を出し合って作った列車です」とはバス車内でのJR営業マン氏の話である。八幡浜駅に入線した「伊予灘ものがたり」専用列車は、キハ185形を改造した3両編成車両で、外観は夕陽に映えるような黄色に赤色系塗装が施されている。内装も観光列車として十分に改装・整備されており、個人的にはこれでもかとの木目調で凝った水戸岡デザインより好感が持てるものだった。
もともと「伊予灘ものがたり」は、この種の観光列車に多いキハ47形の改造車が充てられていたが、2022年より特急用の車両だったキハ185形に置き換えられている。枕バネがコイルだったキハ47に代わり空気バネになって乗り心地が改善された上、電源が大幅に強化されて使いやすくなったことをJR営業マン氏は説明する。八幡浜を出発して間もなく車内で出されたサンドイッチやスイーツなどのアフターヌーンティーを楽しむうち、ほどなく列車は予讃線の海岸廻りの線路に踏み入れる。予讃線の大洲駅-向原駅間は短絡ルートである内陸の内子線を優等列車はじめ多くの列車が利用するため、私としても海辺を走る本線列車へ乗るのは初めての経験だ。例によって各駅では地元の熱心なお出迎えが続くなか、ハイライトの下灘駅ではホームに出てゆっくりと夕陽を眺める時間がとられる。下灘駅では雲が多かったが、伊予灘に差し込む夕陽を楽しんで2時間余り、「伊予灘ものがたり」は、正にこの日に高架化されて賑う新しい松山駅のホームに滑り込んだ。クルーズ船に乗船すると、普段はなかなか実行できない旅が実に容易に味わえて良いものである。(続く)
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