飛鳥Ⅱ 秋の3航海乗船記 (2) 爽秋の神戸着発、瀬戸内 九州・松山クルーズ
3航海連続乗船の今回のクルーズ旅行は晴天続きで、秋というのに台風も来ず、海も凪いで絶好の航海日和に恵まれた。最初の2泊、「秋の横浜・神戸クルーズ」の旅行会社による企画旅行に参加する大勢の乗客は、神戸に到着した日の朝に下船した。その日の夕方の出港までは何をしても良いのだが、船内に残る40名ほどの乗り継ぎ客には、昼食としてダイニングでローストビーフ丼が用意された。このどんぶりは、これまでの人生の中で経験したうち最も量の多いローストビーフがテンコ盛に載せられたもので、テーブルを前に妻と共にしばしその豪華さに感激していた。思い返せば2023年6月に「にっぽん丸」に連続乗船した際に那覇港に於いて、乗り継ぎ客には朝9時から午後3時まで、食事はおろかコーヒー一杯のサービスもしないと云われてひどく閉口したことがあったが、「飛鳥Ⅱ」ではこれとはまったく対照的なサービスである。「にっぽん丸」には組合との協約やら就業規則の縛りなどいろいろ問題はあるのだろうが、同じ日本船でも「飛鳥Ⅱ」のサービスはやはり秀逸だと評価したい。食いものの恨みは怖ろしいのである。リンク:にっぽん丸「横浜/奄美/那覇クルーズ」3泊+「飛んでクルーズ沖縄Aコース~与那国島・西表島~」3泊 連続乗船 (2023年6月25日)
昼食を摂り、神戸では市バスと阪急電車を利用しケーブルカーとロープウエイで60年ぶりに摩耶山に。この日も神戸の町は30度を超える暑さだったが、秋の気配漂う山上から遥か眼下の「飛鳥Ⅱ」を展望し、イベントもなくゆったりと時間が過ごせる乗り継ぎの良さを味わうことができた。神戸港からは主に西日本からの客を乗せて、飛鳥Ⅱは6泊の「爽秋の神戸着発、瀬戸内 九州・松山クルーズ」に向かう。2航海目も700名以上乗船の満船状態で、コロナ後の旅行需要の盛り上がりを感じさせる賑やかな船内の雰囲気となった。乗り継ぎと云えば、夕食のメニューは原則として前の航海と同じパターンのものが繰り替えされるため、乗り継ぎ客には「トランジットメニュー」と称しアペタイザーなどの一部が変更になった特別メニューが供される。食事はこれで良いのだが、定番ビンゴゲームも、航海ごとに10日間で3回開催されることになる。妻は2人で行かなければビンゴのボードも2枚もらえないと、毎回「もう飽きた」といやがる私を急き立てるのでこれもとうとう3回皆勤となってしまった。自分用のボードは妻に渡して読書しながら一応黙って座っているうち、末等の方のチョコレートが一回当たり、彼女は「ね、参加しなければ何もない、参加すれば少なくともチャンスがあるものよ」と嬉しそうである。
2航海目の「爽秋の神戸着発、瀬戸内 九州・松山クルーズ」は鹿児島、佐伯、松山と3港に寄港し、最終日は「飛鳥Ⅱ」お得意、三原瀬戸経由で瀬戸内海の多島美をゆっくりと味わって神戸に帰る6泊の旅程である。まず神戸から四国沖をまる一日走る航海日をはさんで、最初の寄港地・鹿児島では、自分たちで、桜島フエリーに乗って桜島港を訪れることにした。ここ桜島はまだまだ青年期の活火山とあって、元気に噴煙を上げ爆発を繰り返す山の様子をビジターセンターで勉強することができる。博物館などこういう施設にツアーで来ると、集合時間が早すぎてゆっくりと解説や映写を見ることができない場合が多いが、桜島は鹿児島の中心からフェリーで10分とあって気軽に自分たちで訪れることができるのが便利だ。その後はフェリーで鹿児島へ戻り、薩摩藩藩主・島津氏の別邸だった仙巌園を見物した。ここは庭園も立派だが、何と言っても目を見張るのは幕末から明治にかけてこの地に、鉄をつくる反射炉や紡績工場、水力発電などの設備を島津氏が興したことだ。折しも東京では自民党党首選とあって、幕末の志士や当時の指導者にくらべ、今の政治家や実業家の志の低さにしばし暗澹とさせられる気分になってきた。
翌日の佐伯港はクルーズ船の初入港とのことで、町を挙げての大歓迎が印象的であった。佐伯にはかつて仕事で何回か来たことがあったので、今回は 「 フェリーで渡って大入島サイクリング」 というちょっと変わった趣向の寄港地ツアーに参加することに。事前の案内によるとこのエクスカーションは「 健脚向け 」とはあるが、飛鳥Ⅱの 「健脚 」は普通なら「一般」か 「らくらく」の部類なので、そのつもりで参加するとこれがどうしてどうしてハード。佐伯湾内にある大入島という島内の道路10キロ余りを電動自転車で回るツアーで、元気なガイドを先頭に時速15キロ~20キロで突っ走る本物の「健脚」コースであった。私や妻はエクササイズも兼ねて電動アシストは使わなかったため、結構な運動になったのである。途中、地元食堂でのアジフライや「 漬け」(この辺りでは「りゅうきゅう」と呼ぶらしい)の昼定食、島のおばちゃん指導の草木染の体験もあり、6時間にも亘るローカル色満点、かつ極めてリーズナブルな料金設定の楽しいツアーであった。名所・旧跡を巡るいわゆる観光とは大違いだが、地元の勧めもあって飛鳥Ⅱとしては初めてこの種の体力型体験イベントを催行したとのことで 時代に合わせて少しづつクルーズの中身も変わっていることを実感するエクスカーションであった。(続く)
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