第95回都市対抗野球大会 伏木海陸運送 vs 三菱重工East
取引先の要請で、久しぶりに東京ドームに第95回都市対抗野球野球大会の応援に行ってきた。応援するのは北信越代表、富山県高岡市の伏木海陸運送で、この会社は港湾荷役を中心とする地場の総合物流会社である。東京など大都市ではあまり知られていないが、港湾荷役や地方の大手物流業者は地元で大変な勢力を持つ有力企業であることが多く、このチームも3年ぶりだがこれまで6回の出場を誇る社会人野球の名門である。この日対する相手は強豪の横浜市代表の三菱重工 Eastで、平日の昼下がりにも関わらずドーム球場には、会社の関係者や取引先、それに地元からの応援団など大勢の観客が集まった。
都市対抗野球と云えば、思い出すのは1970年代から80年代にかけて我が国の鉄鋼業が最盛期の時代のことである。当時は南は八幡や大分から北は室蘭まで多くの大手製鉄会社の野球チームが予選を勝ち抜き、まだドームになる前の旧後楽園球場に勢揃いしていた。私は新入社員の最初の配属先が製鉄原料船の部だったため、この時期になると動員をかけられ、部長以下皆で仕事を調整しあって球場に駆け付けたものだった。今でも社会人野球を見ていると『♪ 新日鉄、新日鉄、新ニッーテーツ、ニッポンスティール、GO,GO,GO !!♪』だとか 『# 日鉄、日鉄、新ニッーテーツ、鉄の団結!!♭』などとあの頃繰り返した応援歌のフレーズが頭に蘇る。
当時ナイトゲームとなる第3試合や第4試合以外は、試合が終われば会社に戻らねばならなかったが、オフィスにいるより野球を見ていほうが何倍も楽である。出欠確認の如く「 ちゃんと応援に来てますよ」と相手の担当者を見つけて声をかければ目的を達したようなもので、炎天下の後楽園球場でビールを飲みつつ、延長戦にでもなってくれれば会社に戻るのはさらにゆっくりでよいとほくそえみながら観戦をしたことを思い出す。応援したチームによってはちょっとした土産品が配られることもあり、特に80年代、全農から要請された秋田県経済連チームの応援では、一合入り米パックや食料品が入ったバッグを貰ったものだ。
都市対抗と云えば応援合戦も見もので、ローカル色を前面に押し出した応援団を見ているだけで楽しい。伏木海陸の試合でも駆け付けた高岡市長の挨拶や市歌斉唱、それにハッピを来た踊り手による地元の踊りなどがベンチ上で披露され、ドームでの夏祭りの雰囲気である。野球が共同体の繋がりを一つにする手段になるのは我が国独自の文化だ。試合は三菱重工 Eastの補強選手(都市対抗では予選が同じ地区の他チームから3名補強できる)である東芝の下山選手が2本のソロホームランを打ち、善戦したものの伏木海陸は2対0で敗れてしまった。下山と云えば2年前の慶應大学野球部の主将で、慶応高校~大学の下級生の頃は注目されていたが、主将になった4年時には重圧によるのか今一歩精彩がなかった記憶がある。そんな彼が一回り成長して大活躍する場面を目の当たりにし、嬉しいような気持ちと、「おいおい、ホームランは今日じゃなく早慶戦でやってくれれば良かったのに」と複雑な気持ちがしたが、大学野球選手のその後を見るのもまた社会人野球観戦の楽しみである。
最近のコメント