初ダンスパーティ・初トライアル
週に一回、妻と通っているダンス教室で行われるダンスパーティに昨日初めて出席した。クルーズ船でちょっと楽しく踊れたらいいよね、と考えて数年前から夫婦で通っているダンス教室の個人レッスンなのだが、ある程度ステップや基礎を覚えると、(どのダンス教室もそうだろうが)教室主催のパーティに誘われるようになる。このダンスパーティのプログラムの中には、フロアで数組だけで踊るトライアルや一組だけで場を独占するデモンストレーションと呼ばれる生徒たちのダンス披露の時間があり、これに参加すると事前の1~2か月は先生の振り付け指導や特訓を受けることになる。ダンスパーティを開くこと自体はもちろんのこと、トライアルやデモンストレ―ションの為の追加練習もダンス教室の重要な収入源である。これまでも何回かパーティ参加を誘われてきたが、ダンスはクルーズの楽しみの一つと位置付けてきた私たちには、夫婦二人で楽しそうに踊れれば充分で、いわゆる「社交ダンス」を人に見せる気はなかったため、ダンスパーティの参加は断わるのが常であった。
とは云うものの安くはない個人レッスンの授業料をどうせ払うのなら、もう一歩ステップアップもしたくなるのが人情というもの。殊に新年のダンスパーティは、ホテルなどを借りずに会場はいつもの教室というので、参加料もリーズナブルである。70歳代になって自由に使える時間も多くなった今、誰かから誘われた習い事や趣味に少しでも興味を覚えたらまずは参加してみることだ、と常日ごろ思い、登山やスキーなどを再開したことは記してきたとおりである。ダンスもせっかくここまで続けてきたのだから、パーティに初めて出てみるか、聞けばトライアルの時間は僅か1分半程度と言うし、それならワルツのトライアルにも初参加してみるかと急遽思い立ったのが昨年11月のことである。ダンスパーティと云えば大学の新入生時代に、どこかの同好会に所属していた友人からパー券を無理やり押し付けれられ、ダンスもできないのに参加して大いに恥を掻いたことがある。もう二度とこんなものに出るかと会場を後にして以来 半世紀(以上)ぶりの参加となるが、人は変われば変わるものだ。
ところが妻は秋口から始まった仕事に時間を取られており、集中的にレッスンを受ける必要があるトライアル参加には否定的。私一人が普段教わっている女性の先生と組んで出ることになって、年末から年始にかけて先生の特訓を受けてきた。細かい振り付けや姿勢の矯正などの指導を受け、踊りの方はだんだんサマになって来たように感じたが、パーティの期日が近づいてくると、どうして「トライアルに出ます!」などと宣言してしまったのかと後悔の念が強くなる一方だ。習ったルーティーン通りステップをうまく踏めるか、大勢が見守る中でもし大失敗をしたらどうしよう、頭が真っ白になって動けなくなってしまうかもしれない等と次々と良からぬ想像をしてしまう。「いや、失敗したって他人はそんなに注目してないさ」「たかが遊びに過ぎないよ」などと自分に言い聞かすものの、初めての事には不安はつきもの。妻が気の毒そうに同情しているのを横目に、これまでまったくやったことのない自宅での一人シャドウダンスを繰り返した正月明けであった。パーティ前日は入学試験の時のような、何となく眠りも浅く落ち着かぬ夜を過ごして、昼過ぎにこわごわと妻と二人でダンス会場に赴いた。
会場に足を踏み入れて圧倒されたのが、ド派手なドレスに身をつつみ、ステージ映えする濃いメークを「バチッ!」と音がするくらいに決めた中高年のおば様たちの視線。圧倒的に女性が多いために、男性と言えば教室の先生3人と、ヘルプにきた他のダンス教室の先生プラス某大学ダンス部の学生のほかは、いかにも「真面目にダンス習ってます」的ないで立ちの男性(うち2人はカップルだった)が数名という布陣である。この中で3時間を過ごし、その上に人前でトライアルを踊るのかと思うとますます気が重くなってきた。会場には「アルコールの用意もあります」とあるのに、ダンスに備えて女性陣はもちろんのこと、ダンスオヤジたちも一切酒に手を付けない。しかしせっかく参加料を払ってやって来たパーティである。皆に合わせる必要もなく我々夫婦だけがのっけからコップにビールを満たし、スパークリングワインの栓を抜くが、パーティ初参入にも関わらず二人して酒を楽しんでいると、気のせいかもしれないが場違いな冷たい眼差しが感じられなくもない。
クルーズ船ではディナー後、しっかりとアルコール摂取した状態で踊るのが常なので、ここは場内の雰囲気にめげずゴーイングマイウェイを決め込むことにする。少々のアルコールでステップが覚束なくなるようなヤワな酔っぱらい方はしないくらいの自負はある。次々と流れる音楽をバックにダンスタイムやクイズ大会などで適度にアルコールが廻り時を過ごすうち、いよいよワルツのトライアルの時間となった。同じヒートには私と先生の他、女性生徒と男性の先生が2組の合計3組が出場するが、ここまで来たらジタバタしてもしょうがない。まな板の上の鯉の心境でフロアに出る。音楽が鳴り踊り始めると曲のテンポもつかめているし、体も適度に動いていて何とかなっているようだ。近寄ったり決めポーズで飛んでくる「○○さん!」との声援や拍手も良く聞こえる。と思ったら好事魔多し、曲も後半に入り何とか最後まで行けそうだとやや安心したところで、リバースピボットのあとにライトシャッセをすることを完全に失念してしまった。「しまった!」と一瞬思いつつも、ここを何とかごまかして最後の決めに入ったのだが、後から妻に聞くと「まったくわからなかった」というから失敗からのリカバリーはうまくいったということか。初パーティ、初トライアルなのに「とても落ち着いてた」とパートナーの先生も妻も誉めてくれたのは、これまでのクルーズ船のダンスで散々失敗をして恥を掻いて来たからに他ならない。いやぁ、つくづく失敗は成功のもとだと思うのである。
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