にっぽん丸 「横浜/奄美/那覇クルーズ」3泊+「飛んでクルーズ沖縄Aコース~与那国島・西表島~」3泊 連続乗船 (2)
那覇港で案内されたのは、何ともうらぶれた「新港ふ頭客船待合所」
最初に乗船した「横浜/奄美・那覇クルーズ 4日間」は、沖縄をベースに4航海連続して行われる「飛んでクルーズ沖縄」に向けて、本船を沖縄海域へポジションニングにするためのクルーズである。このクルーズは横浜を出港して翌日は終日航海、3日目の朝に奄美大島の名瀬に入港、夕方名瀬を出て、4日目の朝に那覇に到着する日程であった。乗船客は定員の半分の約200名ほどで、食事も一回制とゆったりとした船内風景、週末にかかる日程とあって家族連れの乗船客もちらほらで、船内では子供の元気な声も聞こえてきた。目立ったのは、ある会社の社員旅行で50名ほどの団体が乗船していたこと。何の業種か聞かなかったが、管理職らしきシニアから若手社員、女性社員が多数乗船しており、日本のクルーズ船とは思えぬ活気が船内に満ちていた。10年以上前のことになるが、オーストラリアでP&Oクルーズの"PACIFIC DAWN"(7万トン)に乗船した際、ちょうど豪州の夏休みシーズンで多くの学生や若者が乗船しており、ただ2人の日本人だった我々は若やいで華やかな雰囲気に圧倒された覚えがある。そこまでは及ばないものの「ぱしび」の気さくなクルーが加わったうえ、働き盛りの団体も乗船して、日本船の中ではもっとも静かと云われた「にっぽん丸」にも、新しいクルーズ時代がやってくるかと思わせる雰囲気であった。
那覇港に着いて最初のクルーズが終了。賑やかな団体客も下船した。その日は、次のクルーズへ連続乗船する乗り継ぎ客は、船内に留まっていてもよい事になっていた。しかし最初のクルーズの乗船客が下船した午前9時から次(与那国島・西表島クルーズ)の乗船受付が始まる午後3時頃までは、リドや大浴場のサービスがない上に、なんと昼食も出ないということが告げられた。2007年に「にっぽん丸」の小樽発着「初秋のサハリンクルーズ」と「小樽/横浜クルーズ」に連続乗船した際は、追加料金なしに小樽の寿司屋に船が招待してくれたのに、この差は一体どうしたことだろう。そういえばかつて「飛鳥Ⅱ」で2つのクルーズを連続乗船した際に、船内には乗り継ぎ客が我々一組だけと云うことがあった。その時も飛鳥Ⅱでは昼食にメインの「フォーシーズンダイニング」を開けて待ってくれており、食事に行ったら「 ああ!残っていたのは○○さまでしたか、さあ、どうぞ 」とクルーが歓待してくれたものだ。船上で出会った「にっぽん丸」によく乗る船友によると、「 連続乗船してもこの船はいつも食事が出ない 」とのこと。しかし那覇港で「にっぽん丸」が着いた「第2クルーズバース」は徒歩で下船が出来ず、バスで連れて行かれた「新港ふ頭船客待合所」は、港湾地区のまん中にある上に、今時どんな辺鄙な田舎の連絡船乗り場にもないだろうと思われるうらぶれた建物だった。その待合所からもっとも近いコンビニまではトラックが通る産業道路を600米以上歩く必要があるし、まともな昼食を摂るためには3キロから4キロ離れた市街中心地までタクシーで行くしかない。どうせ本船ではこの日も賄いメシをクルーに出すのだから、着岸した場所を考えるならば、セルフサービスでよいからカレーライスくらいは船内で乗り継ぎ客に用意しろと要求したい。
さて、連続乗船の乗り継ぎ30余名に、ここ那覇からの乗客を加え、300名ほどの船客で次の3泊「飛んでクルーズ 沖縄 ~与那国島・西表島~」が始まり、食事は2回制となった。翌日朝9時に「にっぽん丸」は那覇から500キロの洋上に浮かぶ本邦最西端の与那国島沖に到着。海上500キロといえば264海里、この距離を実質14時間ほどで走破する必要があるため、「にっぽん丸」は時速は18ノット以上で航走したことになる。本船ならではの快足だと云えよう。与那国島は北回帰線近くに位置し人口は1700人、東西間の長さ11キロ、南北4キロ、周囲27キロの木の葉状の亜熱帯性気候の島である。ここには大きな港がないため、島の北部の祖納港沖に錨泊した「にっぽん丸」から本船のテンダーボートで上陸し、貸し切りバスで島を回る半日のオプショナルツアー「日本最先端与那国島観光」に参加することにした。与那国島は海岸に沿って幾つかの集落があり、200米ほどの山が連なっているため道路は起伏に富むが、全域が広く緑に覆われており、ところどころで野生の与那国馬が草をついばむ光景が見られる。島の西端、西崎灯台からは空気が澄んでいれば111キロ離れた台湾を遠望できるそうで、悪化する一方の東アジア情勢のため、この島には2016年から陸上自衛隊が展開し、250人ほどの自衛隊員が駐屯している。バスの車窓からは有事に備えてPAC3ミサイルが発射台から空に向かって屹立する姿が垣間見え、一朝有事の際には、ここが日本防衛の最前線になることが実感できた。のんびりした島の風情とは裏腹に、空をにらむミサイルを見ると、ロシア、北朝鮮、シナというならず者三兄弟国家に対峙しなければならない我が国の立ち位置の難しさを改めて考えさせられる。
翌朝、与那国島より沖縄本島寄り約75キロに位置する西表島の船浮港沖に「にっぽん丸」は停泊し、乗客は再びテンダーボートを使って島に上陸することになった。西表島は面積290平方キロ、人口2400人余り、八重山諸島の中心地である石垣島よりフェリーで僅か35分に位置する島にも関わらず、全島が山がちでかつてはマラリアが蔓延したために産業が育たず、手つかずの自然が今も残っている。この島だけに生息するイリオモテヤマネコは特に有名だが、このネコは島には百頭あまりしか生息していないため、島の人でも一生のうち一度見ることができるかできないかなのだそうだ。ここでは「星砂の浜と大見謝(おおみじゃ)ロードパーク観光」と名付けられた、星砂の海岸とマングローブ林を見物する本船の半日オプショナルツアーに参加することができた。ツアー途中に車窓からサトウキビ畑や、収穫を目前にした二期作の田んぼ( かつては三期作だったとのこと )を見ていると、もし自分が東京でなく離島に生れたら、どんな人生を送っていただろうかとの思いがふと浮かぶ。ここから東京までは2000キロ、これはアメリカならLAからダラス、ヨ―ロッパならロンドンからキーウまで到達する距離である。日本は広い。そしてその広い領土に点在する大小数々の島々を訪れるには、クルーズ船が一番便利であることを改めて認識させてくれる船旅だった。与那国島でも西表島でも「にっぽん丸」の二宮船長は、テンダーボートに乗り移る乗客の安全をブリッジ横のウイングから常時確認していたが、その姿からは、我々の安全のためにクルー全員が最大細心の注意を払っていることが伝わり、思わず「キャプテン、安全航海をありがとう」と心の中で一人呟くのだった。(了)
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