神田神保町の老舗ビヤホール「ランチョン」
一日が長くなり夏のような陽射しが差し込む季節がやって来た。気温が上がればますますビールがウマい、などと言われているが、特段の事情がない限り春夏秋冬、一年365日、夫婦二人で毎日ビールを飲んでいる。そもそも我々の結婚もビールが取り持つ縁だったと云える。高校時代の友人が銀行で妻の上司であり、昔からビールを飲んでいる私に「僕の部下にビール好きな女性がいるから今度一緒に呑まないか」と紹介してくれたのが出会いである。と云うわけで日課のジョギングで汗を流した後は、夕方二人して缶ビールをプシュと開けるのがルーティーンになっている。ビールをうまく飲むために、無理矢理ジョギングを続けているのではないかと錯覚する時もよくある。
そんな妻が神田神保町にあるビヤホール・洋食の老舗「ランチョン」に行きたいと言ってきた。たまたまネットで見つけて、ここは「美味しいに違いない」嗅覚が働いたそうだ。かつて外食店で飲むビールは瓶詰め大瓶が主流で、「生ビール」は夏のビアガーデン以外そうどこでも飲めるものではなかった。ビール好きとしては年中うまい「生」を提供してくれるレストランのことが一応頭に入っていて、銀座なら古くからサッポロ生ビールを出す七丁目「ライオンビアホール」、京橋ではキリンビール系の明治屋「モルチェ」などがそうである。当時から神保町に明治42年創業の「ビアホール ランチョン」という老舗ビアレストランがあることは知っていたものの、神保町といえば本屋やレコード屋、スポーツ用品店など趣味の街というイメージがかなり強い場所だ。ここに来ることはあってもビールのことまでは考えが及ばず店の前を素通りばかりだったが、今回、妻が思い立ったのを幸い、頭の片隅にあった「ランチョン」に行ってみることにした。「ランチョン」がアサヒビール系というのも目先が変わって良さそうだ。
平日の夕方、妻と二人で古本屋街をひやかし、5時半過ぎに入った「ランチョン」は、100余席あるというのにすでに7割くらいの人でテーブルが賑わっていた。まだ時間が早いためサラリーマン風より、街歩きをしてきた中高年の姿や、夫婦連れのようなカップルが店内で目立つ。まずは480ccのビアグラスで出される生ビールを各々二人して頼むと、ブランドはアサヒビールの「マルエフ」とのことで、これは最近家で常飲する缶ビールの銘柄であった。「マルエフ」は味がしっかりしている割にアルコール分が4.5%とやや薄目なので、量を飲んでも肝臓に少しやさしい(気がする)ビールである。当日の昼に走ってカラカラにした喉にお待ちかね、目の前に運ばれてきた「マルエフ」は、ビアグラスの下から8割弱ほどが琥珀色の液体、上から2割強がきめ細かい泡と芸術的にセパレートされていた。店のホームページによるとしっかり泡立てるのがうまいビールを提供するコツとのことで、ここではグラスに注ぐのは店主専属の仕事なのだそうだ。
あっという間に空になった後の2杯目は、私が黒ビールとのハーフ&ハーフ生、妻がピルスナーウルケルである。本当に500CC近く入っているかと思えるほどスムースな飲み口は、ビールの温度管理やグラスの取り扱いに関するこだわりの結果だそうだ。店内は女性の店員数名が客の様子をさり気なくうかがっており、注文の合図をするとすぐに来てくれるのが気持ちよい。ビールが旨いと食も進むとあって、アスパラガスにベークドポテトをつまみ、次は白ワインのボトルを1本注文することにした。美味い酒にキビキビした店員で、ついついこちらも気分良くなりワイングラスをあけるピッチも早くなるようだ。アルコールでますます食欲が亢進したのか、分厚いポークソテーに当店定番の大判のメンチカツを一つずつ、それに〆のオムライスまで楽しんでやっとお腹が満たされた。入口を見れば店外には順番を待つ人の列が出来ており、あらためて評判の店だと分かる。店の雰囲気にも酔っていつもより調子よく飲んでしまったようで、陽気も良いのでほろ酔い気分でふらふらと数キロを家まで歩いて帰ってしまった。ただビールの利尿効果はテキメン、途中の水道橋付近で我慢が出来ず、二人揃ってトイレにあやうく駆け込んだのはご愛敬である。
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