「海里」に乗車 東北地方・新旧乗り比べ鉄旅
桜前線が北上し日本列島に春がやってきた。先の土曜日は東北地方の初春を楽しもうと新潟-酒田間の快速列車「海里」に乗車、翌日曜日は秋田-弘前間を往復する貸し切り列車「ツガル ツナガル」号に乗って鉄道の旅を満喫した。「海里」は2019年に製作されたJR東日本の新鋭観光用ハイブリッド型気動車で、各週末ごとに新潟-酒田間で運転されている。かたや「ツガル ツナガル」は、12系客車(1977年製)が使われるのが目玉となる団体専用臨時列車でこの週末だけの限定運転である。今回はさらに弘前で「ツガル ツナガル」が折り返す3時間弱の合間を使って、弘南鉄道で第2の人生を過ごす東急の旧7000系ステンレスカー(1964年製)にも乗ることができたので、まさに新旧車両の乗り比べ鉄道の旅となった。
まずはJR東日本のハイブリッド気動車HBE300系を使用した「新潟・庄内の食と景観を楽しむ列車」である、「海里」号の乗車だ。「海里」は新潟-酒田間168キロ間で運転され、1・2号車は全車指定席車両(指定料金840円)、3号車が売店・イベントスペース車、4号車が食事やドリンクがセットになった旅行商品用の車両からなる4両編成の豪華快速列車である。午前の運転は新潟発の酒田行きで、この区間を3時間16分で走り、4号車では新潟の料亭などの日本料理が出される。酒田から新潟へ戻る午後の列車は3時間35分の車中で、庄内の名物イタリアン料理店の味が楽しめる趣向になっている。4号車の料金は片道一人16,400円と値段は少々張るものの、我々は新潟までの新幹線は大人の休日倶楽部ジパングの3割引き、帰りの秋田発のフライトはマイレージ利用とあって、新潟から酒田まで4号車乗車を奮発することにした。
初めて乗車するハイブリッド気動車は、停車中はエンジンのアイドル音があまり聞こえぬ静かな車両だった。このHBE300系は床下に置かれた直列6気筒のディーゼルエンジンを直接駆動力には使用せず、発電機を回転させる電力用として使用し、発電機からの電力と搭載された蓄電池の電力でモーターを動かす駆動方式である。船舶などではすでにお馴染みのディーゼル・エレクトリック推進であるが、これまでトルクコンバーターを介した液体式気動車の発するエンジン音や振動に永年慣れた身としては、ハイブリッドと云え、どうも気動車に乗っているような気がせず、車内に入ってくる走行音がちょっと物足りないと感じるほどだ。「海里」の走る白新線と奥羽本線はローカル線と異なり軌道も十分に強化されているうえ、HBE300系は台車も空気ばねを使用しており、これまで乗った「べるもんた」や「SAKU美SAKU楽」などキハ40系をタネ車にした観光列車より乗り心地は快適である。
この日、4号車で出された日本食は、新潟の老舗料亭「鍋茶屋」の懐石料理弁当であった。料理にはアルコール類を含む新潟特産の1ドリンクがフリーでついてくるのだが、ただ午前10時過ぎに新潟駅を発車するとすぐ食事が始まるため、朝っぱらから酔っぱらうのもちょっと気がひける。このため前泊してのり込んだ新潟で、この日早朝からジョギングに出かけ、汗を流してビールに備えることにした。うまい酒を飲むのも、苦労がいるのである。やがて列車は日本海が迫る海岸べりを走り、奇岩、絶壁が連続する景勝地「笹川流れ」最寄り駅の桑川駅で30分以上停車。ここではホームから海岸まで下りることができ、朝のビールと追加(有料)で飲んだ日本酒の地酒で火照った頬を冷ますことができた。考えてみればと大阪始発の「トワイライトエクスプレス」でも上野発の「あけぼの」でも、かつての寝台特急列車はこの辺りを夜中に通過したので、日本海のこのような絶景をじっくり見るのは初めてのことになる。こうして新潟の食と酒、それに沿線の風景を堪能しつつ、桜の開花前線とともに「海里」は北上し、古くから商都である酒田に到着した。
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