リバーサルオーケストラ
日本テレビで水曜日の夜10時から放送されている連続ドラマ「リバーサルオーケストラ」を毎週楽しみに見ている。地方のプロオーケストラを話の中心に据えた珍しいドラマである。クラシック音楽の演奏家という人たちは、才能に加え子供の頃から大変な努力を重ね、専門の大学で研鑽を積むはずだが、そんな彼らでもプロのオーケストラの団員になるのは実に狭き門だと聞いてる。私の友人の娘さんも幼い頃からピアノの才能を認められ、音大付属高校から音大に進み、有力な先生に師事して、大変な時間と費用を使ったものの、結局プロのクラシック演奏家にはなれなかった。音楽家とは実に厳しい世界で生きているものだと思うが、演奏会の時だけでなく町で大きなチェロのケースなどを背負った演奏家を見ると、彼ら彼女らはどういう気持ちで日々音楽に向き合っているのだろうかと興味を掻き立てられる。という事で全10話とされる「リバーサルオーケストラ」を見始めた。
「リバーサルオーケストラ」は、主人公でトラウマを抱えた元天才少女バイオリニストの谷岡初音(門脇 麦)と、田舎のポンコツオーケストラ立て直しのためにドイツから呼び戻された期待の若手指揮者、常葉朝陽(田中 圭)を中心に話が進む。特別に美人というわけではないけれど、とても感じの良い女の子という風情の初音と、照れ屋で独善的、クールで頑固だが本当はやさしいマエストロの朝陽の2人によって、仲良し集団の緩いオーケストラがどうプロ集団に変わっていくか。ビオラ主席の濱田マリやオーボエ主席の平田満など演技達者な脇役によって紡がれるサブストーリーが加わりながら、団員が徐々に覚醒し脱皮することが見る者に伝わる筋書きである。オーケストラを潰したい勢力の権謀術策もあって話は一難去ってまた一難、かつて音楽で蒙った心の傷を初音がどう克服するのか、さらにお約束の恋愛話も絡めて毎回飽きることがない。ちょうど2019年に話題になったTBS日曜ドラマ「ノーサイド・ゲーム」のラグビーボールをクラシック音楽に置き換えたような展開だと言ったらよいだろう。
ドラマの幕間で流れる音楽はクラシック音楽の名曲が番組に合うようにアレンジされて耳に心地よい。感心するのは出演する役者たちの楽器を演奏する演技の上手なことだ。弦楽器を扱う際の弓の使い方や弦の押え方、管楽器演奏の時の頬の表情や息の吹き方は、役者の後ろで演奏する神奈川フィルの本チャン演奏者とさして変わらないように見え、本当に役者たちが音を出しているかと錯覚するほどである。田中圭演じるマエストロの指揮ぶりも評判が良いようだ。クラシック音楽やオーケストラがテーマになっているのにも拘わらず内容が親しみやすくこなれているのは、脚本や演出、構成がこの道に造詣の深いスタッフによってなされているからだろう。本物のクラシック音楽演奏家たちが「リバーサルオーケストラ」を見れば、「これあるある」とか「これはないなー」と会話が盛り上がるに違いない。さあドラマも終盤、初音と朝陽はどうなる?オーケストラは存続するか?この後が楽しみだ。いつも番組を見終わると音楽心が刺激され、真夜中に電子ピアノに向かってみたり、ドラマの中でオケが演奏した曲のCDをかけて夜更かしになってしまうが、それもあと僅かか。
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