三菱ダイヤモンドサッカーとドラムマジョレット
左端:金子勝彦アナウンサー 真中:この日のゲスト 三浦知良選手 右:サッカー協会専務理事 岡野俊一郎氏
NHK BSで「テレビが映したスポーツ70年(テレビとともに ブームが生まれた)」という番組があり、力道山のプロレス試合など往時のスポーツイベントの模様が放送されていた。子供の頃、プロレスの中継を見ると弟が興奮して家の中で寝技を仕掛けてきて、それに応戦するうちに本当の喧嘩になってしまった等と昔を思い出しながら昭和30年~40年代の記録を見ていると、サッカーの試合の画像と共に懐かしい声が流れてきた。「三菱ダイヤモンドサッカー」の金子勝彦アナウンサーである。その声を聞けば、番組のテーマミュージック”ドラムマジョレット”のマーチをバックに「 サッカーを愛する皆さん、ご機嫌いかがですか 」との語りで始まる「三菱ダイヤモンドサッカー」の場面が即座に脳裏に蘇ってきた。
「三菱ダイヤモンドサッカー」は1968年(昭和43年)から1988年(昭和63年)まで東京12チャンネル(現テレビ東京)で放送された30分の海外サッカーを紹介する専門番組だった。1968年のメキシコオリンピックに於いて釜本や杉山の活躍で日本代表が銅メダルを獲得し、サッカーが注目され始めたものの、テレビで見るスポーツといえばまだ野球か相撲オンリーの時代である。ほとんどの日本人が海外のサッカーなど遠い国の出来事だと考えていた当時、イギリスのプレミアリーグやドイツのブンデスリーガなどヨーロッパのサッカー試合のハイライト場面をダイジェストし、初めて定期的に茶の間に届けたのが「三菱ダイヤモンドサッカー」で、私は開始当初からこの番組のファンであった。
以前にも記したが、高校の担任が東京教育大(現・筑波大)サッカー部出身、県教員クラブで国体予選などに参加していた現役の選手で、この先生はことあるごとにサッカーの面白さを我々生徒たちに教えてくれた。そのうえ当時の私は何ごとも斜に構えて見るほうで、「大鵬・柏戸」や「王・長嶋」ばかりのスポーツ中継を鼻白む思いで横目に眺めつつ、本物はアメリカの大リーグや、ヨーロッパのサッカーだとうそぶく中二病(=他人とは違う俺カッコイイ病)ぶり。そんな生意気ざかりだったので「三菱ダイヤモンドサッカー」が伝えるイギリスの”アーセナル”や”マンチェスターユナイテッド”など、サッカー通しか知らない知識を周囲にひけらかすのが、ちょっとした自尊心を満たしたものだった。時代が下り1970年代半ばは、番組の放送時間は月曜日の夜10時から。会社から戻り遅い夕食を摂りながら「今週もまだ先が長いなぁ」とぼやきつつ、金子アナとコンビの岡野俊一郎氏の解説を欠かさず聞いた時代が懐かしい。思い起こせば月曜日なので飲み会や接待があまりなかったから、家で食事する機会も多かったのだろう。
「テレビが映したスポーツ70年」では現在の金子アナウンサーの様子も映し出されていた。さすがに90歳近くなった金子アナの顔は更けて見えるものの、かつてゴール前の場面で発したオハコの「決定的!!」というセリフと、老境になった今の声がさして変わっていないのに驚く。懐かしくなって番組のテーマ曲「ドラムマジョレット(Drum Majorette)」をYouTubeで聴いていたら、横から覗き込んだ妻が「あれ?横にMatch of the Dayって書いてある。でも私が知っている曲と違うけど」とネットを調べ始めた。それによると「Match of the Day」は今もBBCで続く長寿サッカー番組で、彼女がロンドンで高校時代を過ごした1980年初頭にはすでに新しいテーマ曲に替わっていたのだが、イギリスで番組が始まった1960年代は確かに「ドラムマジョレット」が使われていたようだ。「三菱ダイヤモンドサッカー」はBBCの「Match of the Day」を手本に始まったと云われており、本場の「ドラムマジョレット」を日本でもテーマ曲として使ったというのが歴史の真相なのだろう。古い映像を見ていたつもりだったが、今になって「そうだったのか」と新たに発見することもあるものだ。
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