飛鳥Ⅱ のんびり秋旅クルーズ(続1/2)金毘羅参り
「飛鳥Ⅱ のんびり秋旅クルーズ」も新宮や四日市には何度か行ったことがあるため、船で3泊した後に最初の寄港地・高松で途中下船することとした。前日の夕方に飛鳥Ⅱは高松港に到着しているので、下船日の朝は早起きして港周辺をジョギング、一旦船に戻りシャワーを浴び朝食を摂って10時過ぎに船を離れた。これまでワールドクルーズなどで区間乗船の人たちを見送ったことは何回もあったが、見送られる側になるのは初めての経験で、いざ下りるとなるとひどく船が名残惜しくなってきた。乗り合わせた船友たちは今晩もフォーシーズンダイニングでディナーを楽しむのかと思うと、「やっぱり最後の横浜まで乗る事にします。差額はカードで支払います」と申告するかとの考えが一瞬頭をよぎる。ただすでに「大人の休日倶楽部ジパング」で帰りの割引乗車券を購入し、途中の姫路駅前のホテルも予約済みとあって気をとりなおし当初の予定を遂行することに。
この日は高松から初乗車の琴電に乗って金毘羅さんにお参りし、その後は瀬戸大橋経由で姫路まで行く予定である。琴平までの高松琴平電気鉄道は、乗車する琴平線(33キロ)と志度線や長岡線の3線からなる、軌間1435ミリ、全線1500ボルトの地方民鉄だが、ここを走る電車は元京急や京王帝都、名古屋地下鉄の車両が多く、「走る電車の博物館」と全国にその名前を知られている。さっそく下船した足で始発の高松築港駅で琴平行きを待つことしばし、コトコトと入線して来た2両編成の電車は1200形の1207編成で、塗装こそ黄色に塗り替えられているが、その面構えは昭和45年から製造された元京急の700形であった。さっそくかぶりつきに陣取り終点の琴平までの前面展望と運転システムを楽しむことにすると、先ほどまでの船旅の余韻がすっかり頭から消え去り、テツの血が湧いてくるから我ながら現金なものである。
東京都心の鉄道ではめっきり聞かなくなった抵抗制御の機械音、ブレーキシューの制動音、派手なレール継ぎ目のジョイント音や揺れ具合は、いかにも地方の電車といった風情である。瓦駅での分岐や高松市内の立体連続高架区間を過ぎ、電車は都市郊外の住宅地区や近郊農業地帯、ほどなく森や林を抜けたと思えば鉄橋を超え、ため池が点在する讃岐平野を走り抜ける。運転席のスピードメーターには、60キロ付近にマーカーがあり、どうやらその辺りが最高速度の一応の目安らしいが、かつて100キロ以上で京浜地区を疾駆していた真っ赤な京急の700形が、のんびりと田園風景を走る風景もなかなか味があってよいものだ。この日は日曜日の朝にも拘わらず下りの乗客が多いことに驚くも、これは高松から20キロほどの綾川駅に隣接する大規模ショッピングモールの買い物客であった。地方民鉄の例に漏れず琴電も赤字経営らしいが、沿線に大規模な商業施設を誘致すれば、自動車から鉄道を利用する乗客を取り込めるのだろう。地方の鉄道に乗る度に感じる土地に応じた営業努力には頭が下がる。
高松から一時間あまりで、終点の琴電琴平駅に到着。荷物を近くのJR琴平駅に預けてここから金毘羅参りである。「♬ 廻れば四国は讃州那賀の群 象頭山金毘羅大権現 ♪」と謳われたとおり、琴電の電車から見ると、進行正面に象の頭のような山が横たわって見える。金毘羅さんと云えば航海安全の神社で名高いが、讃岐富士(飯野山)や屋島と同様に、特徴的なその山の姿は、かつて沿岸航法の時代に船乗りの良い目標になっていたに違いない。大昔は海岸がもっと象頭山に迫っていたとも云われ、ここに航海安全の神様が鎮座するのもうべなるかなである。海運会社に勤めていた頃には、四国の造船所で進水式が行われた折などに金毘羅さんに度々詣でたことがあるが、あれからはや20年が過ぎているし、妻は初めての参拝である。天気も秋晴れ、本宮までの約2キロ、785段の階段はさして苦にならず一気に上ってしまい、そのまま調子に乗って、1.3キロ先、階段をさらに600段上がって標高420米の奥宮にも参拝した。奥宮では高松で後にした飛鳥Ⅱの残りのクルーズの航海安全とともに、私がまだ細々と続けている海運関係の仕事の商売繁盛を祈願し、次の目的地である姫路に向かった。
« 飛鳥Ⅱ のんびり秋旅クルーズ | トップページ | 飛鳥Ⅱ のんびり秋旅クルーズ(続2/2)姫路城 »
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 黒部峡谷鉄道 トロッコ電車(2023.05.29)
- 東北鉄道旅 (補遺編)(2023.04.12)
- 氷見ブリと「べるもんた」(2)(2023.02.20)
- 氷見ブリと「べるもんた」(1)(2023.02.16)
- 「津軽鉄道・ストーブ列車」と津軽海峡を望む天然温泉「ホテル竜飛」その2(2023.01.05)
バルクキャリアー様
高松港にて後ろ髪を引かれる思いで飛鳥Ⅱを途中下船したのち、「走る電車の博物館で知られる琴電のがぶりつきに陣取ると船旅の余韻が消え去り、テツの血が湧いた」との記載は誠に微笑ましくその情景が浮かびました。
軌道幅、編成形に始り機械音、制動音、ジョイント音、揺れ具合の説明、果ては地方電鉄の営業努力まで考察されるあたりはまさに筋金入りのテツオ、いやそれを通り越して「鉄道博士」感服であります(笑)
そしてその後の金毘羅参り、しかも奥社の厳魂神社まで参拝されたとは親近感を覚えました。と言いますのも私も今年は正月の初詣願掛け、6月のお礼参りと2回奥社まで参拝しているからです。また、本宮までの785段はさして苦にならず一気に上がったとは流石ですね、日頃の鍛錬の賜物でしょうか。奥社までの1368段は自分自身の足で行くしか手段が無く上りも下りも相当ハードですが、本宮からの厳かな雰囲気の森林を抜け奥社から眺める讃岐富士の風景は格別で「やり切った感」を味わえるので今後もチャレンジしようと思っておりました。
今回の記事を拝読して自分も70歳になっても奥社まで登り切ろうと決意を新たにしました。その為には日頃のエクササイズが重要なので日課の水泳にも力が入るとしたものです。
ということで本日も夕方からひと泳ぎして飲み会に臨もうと思います。2年前はエクササイズ開始のきっかけ、そして今回はそのモチベーションの維持をこのブログから享受したということであります。感謝!
投稿: M・Y | 2022年11月16日 (水) 15時06分
M・Yさま
鉄道は車両や乗車、写真撮影だけでなく、運転システム、地理、歴史、土木、経営などさまざまな観点から素人考察ができて知的好奇心をそそられます。琴電では小さい子供たちが車内でふざけているのを車掌さんが叱っているのを見て、最近の大都会の電車では見られないノスタルジーを感じました。電車風俗史でしょうか。
金毘羅さんのお神酒をM・Yさまから頂きました。奥社までの徒歩(登山?)はやや手ごたえがありましたが、達成感充分でした。
変わらず水泳を継続されているとのこと。そのバイタリティーで日本の経済がもっともっと元気になるように活躍されることを陰ながら念じております。
投稿: バルクキャリアー | 2022年11月16日 (水) 21時37分