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2022年10月

2022年10月25日 (火)

「音楽日和」 JAF会員のための音楽会

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「音楽日和」~JAF会員のための音楽会~で新日本フィルの演奏と前橋汀子さんのバイオリンを聞きに、昨夕はサントリーホールへ行って来た。最近はクラシック演奏会のチケット値段も上がったが、JAF個人会員向けのこの音楽会はS席:4,000円、 A席:3,000円、 B席:2,000円と破格のうえ、曲目もベートーヴェンのコリオラン序曲、メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲にベートーヴェンの交響曲第7番とポピュラーなものばかり。こんなお得な演奏会があることをJAFの機関誌で知り、初めて申し込んだものである。考えてみればこれまでJAFには毎年数千円の会費を約40年間も払ってきたが、幸いなことに路上では一度も彼らのレッカー車のお世話になったことはない。せいぜい機関誌についてくるファミレスの割引券をたまに使うか、各地の博物館などの会員割引を利用するだけだったので、今回はJAFの会員特典を初めてエンジョイできたことになる。ちなみに新日本フィルの定期演奏会は通常S席が8000円ほどなので、コンサート料金の半分くらいをJAFが補助している勘定になるのだろう。


この「音楽日和」~JAF会員のための音楽会~は2009年度から始まり、東京のほか大阪や名古屋、札幌、福岡など日本各地で地元オーケストラの出演で開催されているそうだ。今回はコロナ禍で2年ほど休止した後の全国で初めての再開コンサートとのことである。私達もここ数年クラシックの演奏会には足を運んでいないし、サントリーホールは久しぶりとあって、最近は滅多にしないネクタイを隆としめ、妻と二人してデート気分で会場に赴くことにした。場内の座席は満員盛況だったが、申し込んだS席のうち抽選で当たったのが2階の前方で、なかなか良い場所である。定刻となり照明が暗転、ざわざわとした観客席がシーンと静まり指揮者が登壇すれば、演奏者と観客による真剣勝負が始まるかの緊張感が一瞬場内に漂い、クラシック音楽を聴くという気分が高まってくる。指揮者の梅田俊明氏のタクトが振り下ろされ、まずはいかにもベートーヴェンという作風のコリオラン序曲の演奏が始まった。


我が家のビクターのウッドコーンスピーカーの音も良いと思っていたが、久々にオーケストラの演奏を耳にすると、やはり「ナマ」は機械の音色とはまったく違うことに改めて気づかされる。圧倒的なダイナミックレンジ、艶やかかつふくよかな弦楽器の音色、管楽器のブリリアントな響き、特にティンパニーの連打が残響の良いサントリーホールの特性にマッチし「本物はやっぱり良いな」との思いが込み上げる。この夜はコリオラン序曲でまず引き込まれ、前橋汀子さんによる円熟の技でメンデルスゾーンのコンチェルトを楽しみ、最後に「舞踏の聖化」とワグナーが評したベートーヴェンの7番シンフォニーで盛り上がると云う、いかにも一般ファン向けらしいプログラムでコンサートを堪能することができた。リズミカルかつ華やかな第7番の後には、アンコールとして、このコンサートの定番(であるらしい)エルガーの「威風堂々第一番」をフルオーケストラ編成で聞けたのも一興であった。「いやあー、やっぱりクラシック音楽は良いねえ、年に一度くらいは来なければ」と妻と二人話しながら、ベートーヴェンとメンデルズゾーンにちなみ、近くのドイツビアレストランでコンサートの余韻を楽しみ秋の夜長を過ごした。

開演を待つサントリーホール
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2022年10月24日 (月)

日本経済に好機到来

最近はテレビをほとんど見なくなったが、新聞のテレビ欄を見ると「止まらぬ円安どこまで重い家計負担に政府は」(テレビ朝日 Jチャンネル)と最近の物価上昇についてワイドショーなどでは危機感を煽っているようだ。ちょっと待って欲しい。長期低迷する我が国の経済を上向かせるのは、長らく続いたデフレスパイラルから脱却し、まずは3%程度のインフレにすることが必要、とすこし前まで(いわゆる)識者やメディアは総がかりで叫んでいたのではなかったのか。ここにきてウクライナ戦乱による資源の高騰に加え日米の金利差によって生じた円安により、日本でもやっと消費者物価指数(CPI)が3%上昇したことが発表されると、今度は「これは悪い円安」やら「悪い価格上昇だ」と彼らは言い出した。


最近は、企業などサービス供給側も原料価格の高騰を製品に転嫁することについて抵抗感が少なくなったそうで、これまで続いてきたデフレマインドがやっと払拭されるようになったことは大変喜ばしいことではないのか。あとは企業に延々と積み重なった500兆円に昇る内部留保を、いかにして従業員の給与アップや新規投資の資金として循環させるかに心を砕くのが喫緊の政策課題になるはずだ。だとすれば従業員の給与や待遇改善のみならず、関連企業や下請け企業に対していま厚く処した企業には、税の優遇措置などを講じて、社会全体にカネが行き渡る政策を立案、実施することが求められているのではないか。


円の為替相場が一時152円に迫り、これは32年ぶりだと大騒ぎだが、その32年前の1990年の各種指標をみれば、「実質経済成長率4.9%、失業率2.1%、インフレ率3.1%とまったく文句のつけようのない立派な経済」と高橋洋一・元内閣官房参与は言う。円安は輸出企業を潤すが、概して輸出企業はエクセレント・カンパニーが多いから、税収やGDPのアップにも直ちに寄与するため円安はむしろ好ましいと彼は主張する。顧みればバブル経済に入ろうとする1980年から1985年にかけて為替は220円から250円で推移し、1990年時点でも145円で、現在の150円というのは歴史的にはごく普通の水準である。いまの金融緩和策や日本の状況を考えれば、この程度の物価上昇や円安で何を大騒ぎしているのかと不思議でならない。一方で生活必需品以外の価格、例えば車の価格は大幅に上がったし、コンサートやスポーツイベントなどの催し物はじめ様々なサービスや工事の値段などはすでに大きく上昇している。漸く待望のインフレ基調にシフトを開始した日本経済と、ラッキーにも機を一にした円安の局面である。目先の日用品や食料品の値上げを否定的に報道するばかりでなく、シナからの経済的離脱が容易になるなど日本には好機が訪れたと捉える報道がもっとあっても良いのではないか。

2022年10月19日 (水)

Suicaのペンギン 「大人のお子さまランチ」

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鉄道150周年記念発売 Suicaのペンギン大人のお子さまランチ

「好きな食べ物はなに?」と聞かれると、いい年になっても今だに「カレー、ハンバーグ、卵焼き、オムライス、ウインナ」と子供の頃の味を挙げてしまう。最近は大食堂と言わずしゃれたレストラン風の名前になっている所が多いが、デパートの食堂街などにあるショーケースに「お子様ランチ」のサンプルがあると、つい食べたいと思って立ち止まりたくなる。もっともお子様ランチだけではもの足りないし、そもそも「大人のご注文はご遠慮下さい」との表示があったりして実際に頼んだことはないのだが、お馴染みのアイテムがこじんまりと一つにまとまったお子様ランチは魅力的である。


鉄道150周年を記念した様々なイベントや商品を検索するうち、150周年記念で発売された「Suicaのペンギン大人のお子さまランチ」という駅弁を発見した。『 Suicaのペンギンが描かれたオリジナルの弁当箱に、大人も楽しめるお子さまランチの料理を盛付けました。鉄道旅のお供にも、持ち帰りでおうち旅気分にも!容器がリユースできるスペシャルなお弁当です 』とのことだ。可愛い容器に入ったお子様ランチは値段が1600円とかなり高いが、オリジナルの弁当箱は食べ終わった後に何度でも使えるのが便利そうだ。翌日妻はジョギングがてら張り切って新宿駅構内にある「駅弁屋頂」に寄ってこれを買おうとしたが、昼過ぎに行ったにもかかわらずとっくに「売り切れ」だったとのことで、人気に驚きながらすごすごと帰って来た。


という事でネットから2個注文し、受け取りは駅構内の「駅弁屋」だけなので、数日後わざわざ新宿に用事を作ってこれをピックアップした。見れば日本橋大増という仕出屋さん製で、夕飯時に蓋を開ければ中はハンバーグにスパゲティナポリタン、ポテトフライやエビフライにウインナー、野菜コロッケなど定番のお弁当アイテムが入っている。楊枝には小旗がついているのが「お子様ランチ」らしくて良い。もっとも味は酒の肴にちょうど良い濃いめとあって、見た目に反してお子様ランチを模した大人の食べ物であった。「大人のお子様ランチ」とは言い得て妙、実にうまいネーミングである。さすがに夕飯はこれだけでは足りないので、ついでに買ってきた「国技館やきとり」と「チキンライス弁当」を食べて旅行気分を味わってみた。

国技館焼き鳥 チキンライス弁当
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2022年10月17日 (月)

TOKYO LEGACY HALF(東京レガシーハーフマラソン)2022 DNS記

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2時間設定のG組だった妻が撮ったスタート地点の模様

「もう一つの東京マラソン始まる」と銘打たれた第1回のハーフマラソンTOKYO LEGACY HALF 2022が昨日開催され妻が完走した。大会は「2020(オリンピック)東京大会のレガシーの創造と継承に加え」「走る楽しさで未来を変えていく」(東京マラソン財団理事長あいさつ文)との趣旨で、東京都や陸連などが主催する今年から始まった車いすとランナーによるハーフマラソンである。国内外から一流招待選手のほかに14000名の市民ランナーが都心を走るということで、都内の道路各所には1か月くらい前から交通規制を知らせる掲示が出ており、このレースが初めて開催されることををすでに知っている都民も多かった。新しくなった国立競技場を発着地として都心を走るコースなので人気も上々のようだったが、参加費が一人2万円というのが気になるポイントであった。当選したらその時に考えようと妻と二人でレースに参加申し込みをしたところ、二人とも当選通知が来てしまい、高いなと思いながらも記念すべき第一回大会だしと合計4万円の参加費を支払って参加することにした。


とはいうものの、私自身はこの1ケ月ほど左のひざ痛に悩まされており、痛い場所をかばって走っていたら腰まで痛みが出る始末である。ようやくこの一週間ほど膝の痛みも和らいできたので、大会に出走しようか大いに迷うところであった。もう一つ心配なのが21キロを果たして完走できるかという点だ。4年前の膀胱がん手術のあとも毎日8キロから10キロのジョギングはしているものの、15キロ以上走る練習はまったくしていない。そのうえ2年前の前立腺がん手術以来、下着に装着するようになった尿漏れパッドの存在も不安である。日常生活や10キロ程度のジョギングなら市販で最少の10CC吸収というパッドで済むのだが、その2倍以上の距離と時間を走るとなるとこれで大丈夫であろうか。勢いで高い参加費を払ってしまったが、レースが迫るにつれて色々考え出すと気がかりなことが次々浮かび段々と憂鬱な気分になってきた。


どうしようかと迷いつつも大会前々日に行われたランナー登録とナンバーカードの受領に、受付会場である新装の霞ヶ丘・国立競技場に一応行ってみることにした。永年慣れ親しんだ国立競技場のスタンドやトラックはオリンピックですっかり近代的になり、新しい時代を感じさせてくれたが、最近のマラソン大会の手続きもかつてとは大違いである。以前は往復ハガキで申し込み、当選すれば通知のハガキを持ってレース当日会場に行き、ナンバーカードを貰うのがほとんどだったが、今やスマホで電子チケットを提示するばかりか、スマホに登録した顔写真との照合も受けないといけない。スマホを持っていない高齢ランナーはお呼びでないと言わんばかりのやり方である。例によって申し込みや情報登録などの手続き一切を妻に任せているお気楽ランナーの私は(妻が私分は私の)スマホに登録したこれらを提示するために、会場では妻の後ろにピタっとくっつき、「おい、どこを押せばその画面になるんだ?」と一々彼女に尋ねなければならないから面倒だ。レース当日もスタートする競技場の入場にスマホを見せる必要があるから、これが無ければスタート地点にたどりつけないのである。これではまるでスマホに使われている大会かと文句の一つも言いたくなり、益々走りたくなくなったが、若いランナーたちは何とも思わないのだろう。


いろいろと心配はあるものの、まあ取り合えず膝をかばってチンタラと走り始めて具合が悪くなったら無理せずリタイアして電車で帰ってくれば良いかと思ったら、私のスタート位置はかなり前の方のB組であった。ネットで申し込む際に、妻が「(私の)予想タイムは1時間30分にしとくからね」と家のパソコンの前で呟くのを「ウン、それにしといて」とナマ返事をしたような気もするが、考えてみればハーフマラソン1時間半は60歳の頃のタイムである。あれから10年、とても今の走力、それも「チンタラ走り」では、スタート直後からC組以下にゴボウ抜かされるに決まっており、B組ではずっとシンガリを走ることになりそうだ。これまで各地のマラソン大会で、AやらBなどスタート順が早い選手を追い抜く際には、実力以上の完走タイムを自己申告してこんな位置で走っているとは何ともみっともない、と心の中で馬鹿にしていたが、今度はそれが自分の姿になるかと思うと急に心が萎えてきた。この時ばかりは日ごろ妻の話を半分くらいしか聞いていないことを大いに反省したが、これもあとの祭。それやこれやで、当日朝にスタートしないことを決心し、久しぶりにDNS (DID NOT START)の気分を味わった。参加料2万円が『出場記念』のTシャツの引き換えだけになったのは何とも悔しいが、「一応の目標タイムを切れた!」と帰って来た妻はますます意気軒高である。

2万円払って貰った記念のTシャツ1枚
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2022年10月 9日 (日)

東京六大学野球 2022年秋季リーグ戦 慶應義塾大学 対 法政大学 1回戦

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金曜日の氷雨も去り、昨日は秋のスポーツ日和とあって恒例の東京六大学野球、秋のリーグ戦、法政大学-慶應大学の1回戦観戦に神宮球場に赴いた。ここ2年半実施されてきたほとんど意味がない感染症対策が緩和され、ようやくこの秋のリーグ戦から外野席も一般開放、内野席は応援団、チアガールやブラスバンドとともに学生やファンが応援席で応援出来るようになった。しかし応援団やチア、バンドは同じ応援席と云っても中段通路から前(グランド側)、学生やファンは通路より上のスタンドとセパレートされている。そのうえ応援団以外は大声を出すなとの規制で、グランドと応援席が一体で盛り上げる六大学野球も、面白さとしてはかつての7割ほどという感じだ。入場するには相変わらず球場入口の検温に加え、感染者が出た場合の濃厚接触者追跡のためとかで、座る予定の場所(一塁側、三塁側、ネット裏などきわめて大雑把な場所)と名前・連絡先を用紙に記入することが求められるが、場内すべて自由席で試合中もみな勝手に移動しているから、用紙記入の実効性はほとんどないと云えよう。ここにいるのは東京を代表する最高学府の関係者たちなのだから、もう「感染症に注意してますゴッコ」の非科学的な措置を止め、場内のマスク着用も自由にしたらどうかと言いたい。


さて、これまで何十年もリーグ戦を見てきたことからすると、慶應大学 対 明治大学戦はもつれにもつれるが、反対に慶應 対 法政戦は勝つも負けるもすっきりした試合が多かったという印象がある。この試合も予想通り完全な投手戦となり、両軍ともしまった内容でゲームは坦々と進行した。慶應のドラフト候補、4年生ピッチャー増居君(彦根東)はこの4年間で最高かと思えるピッチングを展開すれば、法政の尾崎君(3年滋賀学園)も6回一死まで慶應打線を無安打に抑える力投を見せてくれる。むろん心の中では母校慶應を応援をするも、敵ながら尾崎君の素晴らしいピッチングも目を見張らせるものがあり、どちらも負けるなと言いたくなるような内容である。ようやく6回、尾崎君の微妙なコントロールミスにつけこんだ慶應打線が粘り、押し出しとスクイズバントで2点を挙げ、8回にはこれまたドラフト候補の慶應4番の萩尾君(文徳)が左翼席にダメ押し2点本塁打を放って、最後は5対0ですっきりと慶應の快勝に終わった。増居君はリーグ戦初完投、初完封で、タレント揃いの法政打線を2安打1四球に抑えた快投乱麻のピッチングであった。きっとネット裏に陣取るプロ野球のスカウト陣も増居君と萩尾君の評価を上げたことであろう。


慶法戦のもう一つの楽しみが法政大学の応援風景である。今や高校野球の応援スタンドでも有名になったチャンスパターン「チャンス法政」だが、元祖たる法政大学応援団のキレキレの演舞は高校生のそれとは一味も二味も違う。「チャンス法政」は法政大学の攻撃時に得点機が来ると歌われるもので、学ランと(かつてほど極端ではないが)ボンタンに身を包んだ応援部員による「チャンス法政」のパフォーマンスが始まると、相手側は「もういかん、打たれるのでは」という気になってしまう。昨日の試合では「チャンス法政」は聞きたし、このまま増居君の好投が続き、これをなるべく聞かないで済ませても欲しいとの背反した気持ちが沸き起こってきた。結果は「チャンス法政」の場面が6回に一回あっただけで、そのピンチも慶應がよく凌ぎ、まあメデタシというところだった。六大学各校の応援団(学校によっては応援部、応援指導部)は、最近はチア部門も華やか、女性の旗手やリーダーも時々おり、時代の変化をよく取り入れているようだ。しかし学ラン姿の応援団員のよく訓練された動作、指の先まで神経を張り巡らせたような演舞、そのアナクロニズム的所作を見るのも六大学野球観戦の醍醐味だと云える。応援席もマスク越しでなく、応援団と一緒に肩を組みながら、校歌や応援歌、チャンスパターンなどを大声で発することが出来るように早くなってほしいものだ。

「チャンス法政」演ずる法政大学応援団リーダーの芸術的ともいえる応援姿 中段より下は応援団だけ、学生や一般は通路より上とまだ分かれている
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2022年10月 2日 (日)

西日本鉄道旅(5)阪急電鉄 雅洛

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阪急京都線 雅洛

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雅洛の内装


豪華弁当を車中で楽しみ、すっかり満足して定刻18時17分終点岡山駅で「SAKU美SAKU楽」を下車した。あとは18時58分の「のぞみ54号」に乗って帰京するばかりと、岡山駅の新幹線改札口を抜けると何やらコンコースは騒然としている。いつもより若干トーンの高い放送を聞けば、台風15号の影響で静岡県内が豪雨となり、東海道新幹線は浜松から先の運転を取りやめているとのことだ。台風の接近はニュースで知っていたが、中国地方はこの日も薄曇りの行楽日和とあって、天気のことは頭の片隅からすっかり消えていたのでびっくりだ。ホームに上がれば30分前を走る「のぞみ52号」がまだ発車できずにいるし、我々が乗車する「のぞみ54号」の到着時間は未定との放送である。それでも上り列車は行けるところまでは運転をしているようで、大幅な遅れながらとりあえず順番に列車を相生や姫路へと進ませているらしい。


ジタバタしてもしょうがない。これから車中が長くなるであろうから、駅の売店で追加のビールや酎ハイに新聞などを買って待っていると、1時間ほど遅れてようやく博多からの「のぞみ54号」が到着、すぐさま出発することになった。途中の姫路駅では先行の「のぞみ52号」がホームで客扱いをしている際中に「のぞみ54号」が同駅の通過線に停車し、2本の「のぞみ」が途中駅でしばらく並んで止まるというとても珍しい場面も経験した。そうこうするうちに、この日は新大阪から先の東海道新幹線列車は運行を取りやめるとの車内放送が入ってきた。我々クラツーの添乗員の顔が急に引き締まり、あたふたと会社に連絡をとり始めたが、こちらは天下の山陽新幹線、どこか異国の地で交通手段がなくなったわけでもなし、何と言っても添乗員がいるのだからと、まさに大舟に乗った気分で先ほどのアルコールを吞み進める。


さすが天下のクラツーである。暫くして新大阪駅前のホテルAPAを人数分予約できたとの添乗員の報告が車内であった。それも2人で素泊まり7500円というから、駅や車中で一晩過ごすことを考えれば「天国」だ。旅行約款上、これは自費でお願いしますと恐縮する添乗員に「自然災害は仕方ないから」と感謝するばかりだ。添乗員付きの団体旅行は何と楽なことか。初めてのAPAホテルで一夜を過ごした翌朝は台風一過、大阪は気持ちの良い秋晴れであった。添乗員の尽力で15時57分発の「のぞみ234号」の予約が取れたので、それまではゆっくりと関西の休日を過ごすことが可能である。ならば、ここまでテツ分の濃い旅をしてきたのでどうせなら最後までテツを楽しみたいと思いたち、妻と2人でまずは関西民鉄の雄、阪急のターミナル梅田駅に行くことにした。9つの線路に次々とマルーン色の電車が発着する梅田駅の壮観な情景を眺めつつ、さて神戸線に乗ろうか宝塚線に乗ろうか、京都線に乗ろうか迷っていると、ラッキーなことに京都線ホームに話題の快速特急「雅洛」が入線して来るではないか。


「雅洛」は2019年3月から運行を開始した京都線の観光特急である。神戸線の7000系通勤車両の中扉をつぶして2扉車とし、内装や座席を純和風に改装、それも各車両で内装の意匠が違うというまことに凝った編成で、土休日に大阪・梅田と京都・河原町間を4往復している。驚くことにこの列車に乗車するのに普通運賃のみで特別料金や指定料は不要であり、我々のようにどこに向かうか決めていない旅行者も、ふらっとスイカ(関西ではイコカ)やパスモ(ピタパ)で乗車できる。梅田駅で乗車してからも物珍しく車内をあちこち見学するうち、「雅洛」はあっという間に京都・河原町に到着。京都滞在時間はわずか17分、阪急河原町駅から四条通りを東に歩き、とって返して京阪電車の祇園四条駅からエレガントサルーン8000系特急に乗って帰阪した。新幹線乗車までは大阪名物「串カツ」で食事し、台風の結果として2人で7500円プラス私鉄運賃で思わぬ関西の休日を過ごせたことになる。家に帰ってみれば3泊4日で12本の列車(含・自宅から東京駅までの地下鉄)に乗車した「鉄道の旅」プラス鉄道博物館となり、翌日も列車酔いか、まだ体が揺れている感じがしてならなかった。(了)

京阪電鉄 エレガントサルーン8000系
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2022年10月 1日 (土)

西日本鉄道旅(4)SAKU美SAKU楽

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行路略図:赤色が乗車路線、朱色が貸切りバス

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強者どもが夢のあと、かつての交通の要衝も今は無人駅の備後落合駅

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「津山まなびの鉄道館」にある扇形機関庫

昼食は各自が予め予約してあった出雲そばなどの駅弁を途中の駅でピックアップし車中で楽しむうち、「奥出雲おろち」号は12時36分に備後落合駅についた。備後落合駅は広島駅から岡山県新見までのJR芸備線と、山陰地方からの木次線が落ち合う所ということでこの名前がつけられたとのこと。駅では永坂さんというかつてSLの機関士だった地元の方が、ボランティアとして沿線や往時の様子の説明していることを、先般7月27日の読売新聞の記事で知ったばかりだった。この日も予想通り彼が「奥出雲おろち」到着に合わせ駅舎に詰めていたので「C56で木次線の30‰で客車は何両牽引できたのですか」と聞くと「最大4両です。出雲坂根からのスイッチバックでは大変でした」と当時の苦労を教えてくれた。SL時代はC56や8600(ハチロク)の付け替えや整備のため、駅構内に車庫や転車台が置かれ、最盛期には200人もの国鉄職員が働いていたそうだが、今や寂しき無人駅である。がらんとした広い敷地に数本のレールが敷かれているありさまを見ていると「強者どもが夢のあと」という言葉が浮かんできた。


この後、備後落合から次に乗車する津山線の観光列車「SAKU美SAKU楽」の始発駅、津山まで鉄道で行くとすると、新見経由でJR芸備線とJR姫新線を乗り継いで行かねばならない。ところが新見方面行きの芸備線は朝・昼・夜の一日たった3本、新見から津山までの姫新線の列車は一日6本とあって、16時21分に発車する「SAKU美SAKU楽」にその日のうちに乗車することは到底不可能だ。約100キロ離れている両駅を乗り捨てでレンタカーで行くか、などと考えてもそもそも中国山地の山合いにある備後落合駅の周りにはレンタカーどころか商店さえ見当たらない。ところがこの旅行は我々のために備後落合駅前に貸し切り観光バスが待っており、中国自動車道路を通って津山駅に運んでくれるという設定になっている。団体旅行というと足腰の弱った老人や地理に不案内な中高年の旅だとイメージしがちだが、公共輸送が不便な場所で限られた時間内に効率よく旅をするのにはとても便利な手段だと云えよう。


バスに揺られて津山駅に到着したのは15時前。津山市は岡山県県北の人口10万人の町で、かつては津山藩10万石の城下町でもあった。バスの下車から列車に乗車するまで少し時間あったので、ツアー参加者のうち有志は駅から約800米、津山駅の旧機関区用地にある「津山まなびの鉄道館」見学を案内された。ここには旧国鉄時代の扇形機関庫が残されており多くの気動車が静態保存展示されているほか、鉄道模型のジオラマや岡山の鉄道歴史などを展示する建物、その他鉄道グッズの売店などがある。この扇形機関庫は現存する扇形機関庫では京都の梅小路についで国内2番目の規模だそうで、我々ツアー参加の中からも半数ほどがせっかくだからとこの博物館まで歩いて出かけて行った。鉄道だけでなく倉敷の町や出雲大社参拝など毎日少なくとも1万歩以上歩く結構ハードな行程であるにも拘わらず、僅かな時間を利用してけっこう遠い博物館に赴くとは、やはりテツ分の濃い一行なのだと改めて感心した。


旅は終盤、ここ津山駅から岡山駅までの59キロの津山線で、今年7月から運行を始めた新しい観光列車「SAKU美SAKU楽」に乗車する。「SAKU美SAKU楽」はキハ40系気動車を改造(キハ40 2049)した車両によって岡山・津山間を一日2往復走り、9月一杯は金・土・日は単行で、月曜日は定期列車に連結されて運転される。変わった列車名だが、JR西日本の「せとうちパレットプロジェクト」ホームページを見ると、「美しさ、楽しさを『作』る、笑顔・花が『咲く』、その地の美しさや楽しさを探し求める『索』」という3つの『SAKU』を取り入れ、淡いピンク色の車体カラーにマッチする愛着ある列車名としました」とのこと。我々は津山駅のセブン・イレブンでビールとワインを買い込み、車内で出されるイタリアンばら寿司Xローストビーフを楽しみつつ、夕闇が迫る旭川とその支流の誕生寺川の車窓風景を楽しんだ。車内アテンドの若い女性2人はJR西日本サービスの所属で、この日は「SAKU美SAKU楽」に乗車だが、普段は新幹線の車内販売も担当するとの事。ほろ酔い気分で「ありがとう、次は新幹線で合いましょう」などと声をかけながら、東京に戻る「のぞみ」に乗り替えるべく岡山駅で彼女らに別れを告げた。しかしこの鉄道の旅はここで終わらず、まだハプニングが待っていた。

SAKU美SAKU楽のキハ40 2029 (津山駅にて)
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イタリアン弁当
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