クラツー利尻島・礼文島の旅(その2)
礼文島は北海道から60キロ離れた日本海北部に浮かぶ本邦最北端の島である。東西が8キロ、南北26キロ、周囲72キロの南北に長い島で、人口は2300人とのこと。北海道からの直線距離は約45キロほどだが、フェリーが着く島中心地の香深と稚内の航路距離は約60キロある。60キロは海里に換算すれば約30マイルとなるので、時速20ノット弱で航走するフェリーを利用して稚内より1時間40分で到着する。隣の利尻島が火山の島で海上から急峻な山容が立ち上がるに対して、こちらは地殻変動で隆起した島とあって最も高い地点の礼文岳の標高は490米にすぎない。礼文島の地勢は緑に覆われたたおやかな緑の丘陵である。両島とも大陸や北海道と繋がったことがないのでヒグマや蛇がおらず、特に礼文島は風が強い上に夏は霧が多発し、森や林より笹や高山植物など背が低い草花が優勢なのだそうだ。
などとツアー添乗員や宗谷バスのガイドさんの説明で、島の様子がすぐわかるのが団体旅行の良いところだ。香深港のフェリー降り場からほど近い三井観光ホテル(あの三井財閥グループとは関係ないらしい)で温泉に浸かり、満天の星を見て旅の疲れを落とした翌日は、まず島の最北端にあるスカイ岬やスコトン岬に向かう。これら土地の名前が珍しいのはいうまでもなくアイヌが呼んでいた名称だからである。ここは柱状節理の崖に海岸が迫り、たまたま同じ名前のスコットランドのスカイ島、はたまた北アイルランドにある世界遺産のジャイアンツ・コーズウエイのような風景が目の前に広がっている。岩壁に砕け散る北国の海と湿気の少ない晩夏の気候が、なにやら本当に彼の地にいるような錯覚に陥らせてくれる場所であった。島の最北部にある金田ノ岬の漁協直営食堂で海鮮船盛り定食を楽しんだ後、我々のツアーはバスで南部にある桃岩展望台のトレッキングコースに向かった。
トレッキングコース入口にある駐車場でバスを降り立ち、整備された山道を登り始めると、周囲には盛りは過ぎたものの高山植物が咲き、いかにも草花が好きそうなツアー添乗員の説明に熱がこもってきた。彼は沖縄出身・在住で夏場だけ稚内でガイドをしているそうだ。このコースの高低差は約100米、天気も良く緑につつまれたなだらか斜面をゆったり歩いた距離は約2.5キロほど、一時間半の登り下りであった。海を挟んだ向こうには利尻富士が聳え立ち、足元には高山植物が咲くという気持ち良い散策だったが、高齢者や体が悪い人には、傾斜の緩いコースもあり至れり尽くせりの観光地だと云える。途中にある休憩所のトイレもきれいだったが、この旅を通じて、どこへ行っても「ウッ」と鼻をつまむような汚い公衆トイレはなかった。最近、旅に出ると感じるのは、総じて日本中どんな場所でも公衆施設や道路が整備され、民家はきれいになって社会資本が行き届いていることである。これでも日本はGDPが本当に伸びていないのか、そうだとすれば統計の取り方が間違っているのではないかと旅行に来る度に思う。(その2終わり)
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