明治神宮外苑の再開発
東京ではいま2036年の完工を目指して明治神宮外苑の再開発計画が進行中である。この中で注視されているのが外苑の樹木の伐採計画で、当初示されていた多くの樹木を切る計画が反対の声によって見直されるとの記事が8月17日の読売新聞に掲載されていた。明治神宮外苑と云えば明治神宮野球場や秩父宮ラグビー場がすぐ頭に思い浮かぶ。私は子供の頃から60年以上に亘り東京六大学野球のリーグ戦応援に、春・秋のシーズンは神宮球場に足を運んできた。その回数は優に300回を超えるはずだ。また秩父宮ラグビー場は毎冬に関東大学対抗戦などの観戦に訪れる場所である。隣接する国立競技場のトラックも学生時代から随分と利用させてもらったし、絵画館を周る歩道も時々ジョギングに訪れる。明治神宮外苑とその一帯は私にとっては我が家の庭のような場所であり、老朽化したスポーツ施設の建て替え工事を含む再開発計画には大きな関心を抱いている。
ちょうど三田評論の2022年6月号に元慶應義塾大学教授で都市景観や造園緑化が専門の石川幹子氏が「近代日本の名作・神宮外苑の危機」とする稿を寄せていた。それによると明治神宮外苑は日比谷公園の約8倍の広さを誇り、綿密な計画で一世紀の歳月をかけ創り出された近代日本を代表する(緑地の)「名作」だという。明治神宮は内苑(原宿のいわゆる明治神宮)とスポーツ施設の集まる外苑に分かれており、内苑は「森厳荘重」を旨とすべく国費で、外苑は「公衆の優遊」を目的として献費で造成されたとのこと。外苑は、全国各地から54種3190本の樹木が献木されて大正15年に完成、ただちに日本最初の風致地区に指定され、現在は宗教法人の明治神宮が保有する一大苑地になっている。石川氏は、造成に当たっては明治神宮翼賛会がその永続的運営を明治神宮を信頼し奉献したものゆえ、単なる私有地と異なり再開発は社会的共通資本として扱うべしとの主張を展開する。
緑の中に絵画館や各種スポーツ施設が点在する神宮外苑で、特に見事に色づく銀杏並木はスポーツに関心がない都民も多数訪れる初冬の名所となっている。しかるに当初の再開発案は、神宮球場やラグビー場の建て替えのほか、2棟の高層ビルなどを新たに建築し、樹齢100年超え含む971本の樹木を伐採するという「社会的共通資産」の観点からすると首を傾げるものであった。当然のように反対計画が盛り上がったが、読売新聞の記事では、事業者の三井不動産などによって計画が見直され、高層ビルは建てられるものの樹木の伐採本数を556と大幅に減らし、多くの大木が残る案になったそうだ。名物の銀杏並木も、新しい神宮球場の壁面から離して影響がなるべく及ばないように配慮されるとの報道である。球場と共に建て替えられる秩父宮ラグビー場は、1万5千人を収容する屋根付きの全天候型になり、2027年末に供用が開始されるとの新たな発表もあった。しばらくは工事で不便になるだろうが、樹木の緑も保存されるそうで新しく生まれ変わる神宮外苑地区に期待したい。
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